表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
丸耳エルフとねこドラゴン  作者: 晩夏ノ空
南方編

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

31/174

30.再会

「…どーしよ」


 保証人のサイン用の専用書類を貰い、冒険者ギルドを出た途端、イリスは途方に暮れた顔で呻いた。


《イリスの知り合いで、条件に合いそうな人って居ないの?》

「………居たらこんなに悩んでない」

《だろうね》


 ラズライトは小さく溜息をつく。


 予想はしていたが、宿に泊まらず野宿をしている時点で、街の人間との関係はほとんど無いだろう。

 となると、


《とりあえず、タッカーに頼んでみよう》

「タッカーさんに?」

《ああ見えて、この街で工房を開いて10年以上は経ってるはずだからね。たまに鉱石の仕入れ値とかで冒険者ギルドと喧嘩するって言ってたし、多分、直接取引もしてるんだと思う》

「ホント!?」


 イリスがぱあっと顔を輝かせる。


 しかし、タッカーが保証人を引き受けてくれたとしても、あと一人足りない。


《問題は、もう一人をどうするかだよね》

「ぬーん…」



 再び考える顔になったイリスは、視線を彷徨わせ──突然ぴたりと動きを止めた。


《?》


「あー!」


 叫び、数メートル先の人影を指差す。


「貸し──じゃなかった、カイト発見!」


「へっ!?」


 イリスの右人差し指の先、3人連れの冒険者が、驚いた顔でこちらを振り返った。


 一昨日、共に大口トカゲ(ビッグ・マウス)とツインヘッドの討伐を行った冒険者パーティ『上弦の月』のメンバーが、丁度こちらに向かって歩いて来ていた。


「ああ、お前たちか!」


 ラズライトたちを見るなり、剣士のカイトが表情を緩める。


「一昨日ぶり、カイト、ギア、ナディ」


 イリスが片手を挙げると、カイトたちもそれぞれ挨拶を返す。

 一昨日とは打って変わった明るい態度だ。


「お前たちもこの街に来ていたのだな」

「うん、昨日着いたとこ。みんなはあの後、すぐこっちに来たの?」

「ああ。一昨日の夜中に着いて、その後すぐに錬金薬を作ってもらった」

《じゃあ、仲間は》

「おかげさまで、峠は越えたわ。まだ体力が戻っていないけど、それさえ回復すれば復帰できるそうよ」


 後遺症もなさそうだわ、というナディの言葉に、ラズライトはほっと胸をなでおろす。


「良かったね」


 にこにこと笑みを浮かべるイリスに、カイトたちも笑って頷いた。


「──ところで、こんな所でどうしたんだ?」


 カイトが首を傾げた途端、イリスははっと表情を変えた。


「そう! 実は、相談したい事があって」


 真剣な顔に、カイトたちも表情を引き締める。


「なんだ?」

「何でも言ってちょうだい」

「俺たちで力になれる事なら、いくらでも手を貸そう」


「あのね、冒険者登録の保しょむぎゅっ」

《イリス、ストップ》


 道端で本題に入ろうとするイリスの口を、ラズライトは魔法で無理矢理閉じさせる。


 ここは冒険者ギルド前の大通りだ。

 夕刻で人も多く、保証人などというデリケートな問題を大声で話し合って良い場所ではない。


《ここで話すのもちょっとアレだから、どこか落ち着いて話せる場所に行きたいんだけど──》


 ラズライトがカイトたちに視線を投げる。

 意図を察して、彼らは視線を交わして頷き合った。


「じゃあ、知り合いの店で良いか? 今からちょうど行くところだったんだ」

《あれ、冒険者ギルドに用があるんじゃなかったの?》

「それは後でも構わない」


 先程はギルドに向かって歩いていたはずだが、ギアが首を横に振る。

 少し迷って、結局彼らの言葉に甘えることにした。


《じゃあ、お願い》

「分かったわ」

《ほらイリス、行くよ》


「む」


 はっきりしない返事が返って来て、何故だろうと見上げると、イリスは不自然な表情で口を噤んだまま、物言いたげにこちらを見ていた。



《あ》


 魔法で口を閉じさせたままだった。


 ぱっと魔法を解除すると、イリスは唇を尖らせる。


「何か私の扱いが雑になってきてる気がする」

《気のせい》

「気のせいじゃないやい」


 つい先日のイリスのように誤魔化そうとしたが、しっかり食いつかれてしまった。

 意外としつこい。


「代償として、思う存分モフらせてください」

《…良いけどさ》


 何故敬語なのかは突っ込まないことにする。


 そのままイリスに抱き上げられ、横抱きの体勢に収まると、ラズライトは顔を上げた。


《じゃあ、行こう》


 一連のやり取りを呆然と見ていたカイトが、ぼそりと呟く。


「……何か、本当に普通のケットシーみたいだな…」

《普通のケットシーはここまで人間の世話を焼かないと思うけど》

「一理あるな」

「でも…ねえ」


 『上弦の月』のメンバーが、何故か通じ合った顔で頷き合った。


「こんなにかわいくて優秀なケットシーが、普通なわけないよねー」


 イリスがラズライトの背中を撫でつつ、緩み切った表情でコメントする。

 カイトたちの発言を否定したいようだが、残念ながら否定する方向性が違う。


「まあ可愛いのは認める」

「そうね」

「そうだな」


 カイトたちがイリスの発言に乗ってしまった。


《ねえ、ちょっと、ここにマトモな人居ないの?》

「え、何言ってんのラズライト」


 ラズライトの呻きに、イリスが真顔で返した。



「まともだからこそ、ケットシーのラズライトはかわいいって結論になるんだよ?」



《…………どこから突っ込めばいいの、その発言………》




評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ