表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
丸耳エルフとねこドラゴン  作者: 晩夏ノ空
西方編

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

174/174

173.エピローグ 傍に


 その後ジュリアの業務だか愚痴だか分からない仕事に付き合い、『カラスの羽休め亭』に着く頃には完全に日が暮れていた。

 幸い、ヴィクトリアがジーンにイリスたちの到着を知らせてくれたので、宿の部屋も食事もばっちり準備済みだった。


 イリスとラズライトとネロの疲労困憊の姿を見て、『カラスの羽休め亭』のターニャとジェフは苦笑していたが。


 ターニャ自慢の煮込み料理とジェフのハーブティーを堪能し、お風呂も入らせてもらい、イリスは早々に部屋に戻る。


「…久しぶりのベッドだぁ…」


 ボフン、と顔面からシーツに飛び込み、羽毛布団を被った数秒後には寝息が聞こえ始めた。

 相変わらず寝つきが良い。


(…まあ、着いてすぐにアレじゃあね…)


 例のお屋敷の改装完了報告に、公衆浴場その他諸々の開業とこれまでの収支報告。

 タッカーからの指名依頼の内容確認とスケジューリング。

 その他、希少鉱物や希少薬草など、イリスにしか出来なさそうな依頼の説明。

 さらには、金鉱床の開発進捗報告──これは『私関係ないじゃん!?』と悲鳴を上げていたが。


 最後に、『他の街でも随分ご活躍だったようで』とおどろおどろしい顔で言われ、4等級から3等級へのランクアップが告げられた。


 …イリスは、このメランジ以外では殆ど冒険者ギルドに立ち寄っていない。


 しかし、ラフェットとレオンが『温泉街マイロでの違法魔物取引業者の摘発』や『エルフ誘拐事件の解決、人身売買組織構成員の捕縛』などをご丁寧に、かつ速やかにイリスの功績として報告してくれていたらしく、『イリスという冒険者がギルドに立ち寄ったら、速やかにランクアップ手続きを取るように』と本部から通達があったのだそうだ。


 ここ数日、ジュリアは『イリス』ってあのイリスさんよね、と胃がキリキリする毎日を送っていたらしい。


 流石に謝り倒すしかなかった。



(…今度から気を付けよう…)


 ネロもサイドテーブルの上の籠の中で穏やかな寝息を立てている。

 ラズライトは音を立てないようにベッドに飛び乗り、イリスの枕元で丸くなった。



「…うに」



 イリスがすぐに寝返りを打ち、こちらに近付いて来る。

 寝ているはずなのに、毎回毎回どうして察知するのだろうか。


 イリスは額をラズライトに押し付け、にへらー…と笑み崩れた。


 ゆるゆるだ。



 ──しかしここ数日で、分かったことが一つ。



「……」



 むにゃむにゃと、イリスが寝言を呟く。




「… () () ()、…」




 その中に、ラズライトの前世──かつて『あちらの世界』の()()()()()()()()()が、含まれていた。


 それを認識した時、ラズライトは驚くと同時に、心の底から納得した。



 ──初めて会った時、ひどく懐かしい匂いを感じたこと。


 出会ってそれほど経っていないのに、もう随分長いこと一緒に居るような気がしていること。


 儀式も無く、『縁』を繋げられたこと。



 もしもイリスが『あちらの世界』で自分を愛してくれた人間の魂を持っているなら、全て辻褄が合う。



 確証はない。


 ──確かめる必要もない。


 自分が分かっていれば──胸に秘めておけば、それで良い。



(イリスは、イリスだから)



 自分もかつてのネコとは違う。


 ドラゴンである自分は、きっと今生こそは、愛する者を見送る立場になれるだろう。



 ──それが、かつての自分の願いだったのだ。



(だから、イリス)



 イリスの額に自分の額を押し付けて、ラズライトは願う。





 ──ずっと、傍に居させてね。








 ──この世界は、ほんの少しだけ不公平に出来ている。



 『ネコ』を優先する世界。



 『ネコ』の願いを叶える世界。



 ただしそれは、必ずしもその『ネコ』が願った通りになるとは限らない。



 例えば、炎に巻かれ『もう焼かれたくない』と願って死んだネコは、『絶対に焼けることのない』サラマンダーや火精霊に転生し。



 例えば、『今度は大切な相手を見送る側になりたい』と願ったネコは、何千年と生きるドラゴンとなる。



 その行く先は気紛れで、曖昧で、極端で、願いが叶ったとしても幸せになれるとは限らない。




 ──それでも、ネコたちは生きて行く。






 『あちらの世界』の人間たちがネコに魅了されるのは、きっと──




 ひたむきに歩み続けるその生き方が、人間にはあまりにも眩しいからだ。









──というわけで、作者的には最長の連載となりました『丸耳エルフとねこドラゴン』、これにて終幕となります。


ネコを愛する皆さま、お楽しみいただけましたでしょうか。

ここまでお付き合いいただき、本当にありがとうございました。


作品の完結記念として、『その後エルフの里はどうなるのか』を、ちょっとばかり拙作『スーパー派遣令嬢は王宮を見限ったようです ~無能上司に『お前はもう不要だ』と言われたので、私は故郷に帰ります~』の方に掲載しております。


Q:何で別作品に? → A:あのお方が出て来るからです。ハイ。




↓以下、読まなくても良い呟きです。



この作品のプロローグでトラウマを刺激された方も居るのではないでしょうか。

ぶっちゃけ私もその一人です。ホントすみません…。

でも、書かずにはいられませんでした。


この作品は、私の大事な『あの子』への思いを昇華するために書き始めた作品でもあります。

後悔とか、懺悔とか、当時は色々、本当に色々ありました。

もう何年も経つのに、未だに自分で書いたプロローグをまともに見れないくらいです。


気持ちの整理の仕方は人それぞれ。私の場合は、こうして小説の中に描くことでした。


書いていくうちに、『あの子』を投影していたはずの主人公は、苦労性でパートナーに振り回され続ける、全く別の生き物に変貌していきましたが(笑)


きっと、それで良いんだろうな、と今は思っています。



物語はこれでいったん終了となりますが、丸耳エルフとねこドラゴンの旅は、まだまだ続きます。

その情景が浮かんだら、また続きを書きたいなと思っています。

その時は、お付き合いいただけますと幸いです。



最後に。


世界中のネコと、ネコを愛する皆さまに、たくさんの幸せがありますように!


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ