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丸耳エルフとねこドラゴン  作者: 晩夏ノ空
北方編

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135/174

134.会議の会場


 ハルンフェルスで装備を整え、周辺で素材集めに勤しむ傍ら、こっそり飛行練習をすること数日。


 イリスとラズライトは、再びドラゴンの棲み処へとやって来た。


「やっほー! 来たよー!」


 イリスが軽い態度で手を振ると、すぐにスフェーンが駆け寄って来る。


《兄上、イリス!》

《ごめん、遅れた?》

《丁度良いくらいよ》


 サファイアが目を細める。

 その奥で空を見上げていたジェイドが、こちらを見た。


《…来たか》


 ついこの間とそんなに変わらない台詞なのに、念話の響きがとても柔らかい。


《準備はして来たようだな》

「うん。こういうゴーグルがあれば良いんだよね?」

《そうだ》


 今日のイリスは、いつもよりかなり重装備だ。


 外套は毎度お馴染みの物だが、グレンが耐寒性能を一段階上げてくれた。

 グローブは滑り止め付きの耐寒防風用。

 耳あての付いた毛皮の帽子と、曇り止め機能付きの大きなゴーグル。


 バッグはいつもの大きな圧縮バッグではなく、ショルダータイプの小型圧縮バッグ。

 ただしグレン特製で、圧縮性能と重量軽減機能は通常の倍以上。


 なおこれはレンタル品扱いで、外套の改造費を含め、素材で支払うことになっている。


 ドラゴンの集会所なんて珍しい場所に行くんだから、何か珍しい物拾って来い、とはグレンの言である。

 やけに協力的だと思ったら、そういうことだった。


《こちらだ》


 ジェイドの先導で、棲み処の西側に移動する。


 族長会議の会場は、ここから遥か西の山の中。地理的には隣国だ。

 イリスは密入国という事になるが、人里に降りる訳ではないので問題あるまい。


 しかし、ドラゴンは目立つ。

 いくら空を飛ぶとはいえ、人に見られたら大騒ぎになるのではと思っていたのだが──


《では、参りますぞ》


 仲間の中でも古参の1頭が魔力を展開し、複雑な魔法陣がラズライトたちの足元に広がる。

 それがゆっくり浮き上がり、全員の身体を通過して、上空で消えた。

 不思議そうに周囲を見渡していたイリスが、あっと声を上げる。


「影が無い!」


 見下ろすと、確かにラズライトたちの影が消えていた。

 会議に参加するドラゴンたちは全員影が無くなっている。


《我らドラゴンに伝わる秘術だ。姿が消えるわけではないが、これで上空を飛べばまず気付かれることは無い》

《すごい…》


 影が無いということは、上空を飛んでいても地上に影が落ちることは無いということだ。

 そうなると、地上の人間に気付かれるリスクは格段に下がる。


 仮に見られても、ラズライトたちの体色は青や緑だし、空の色に紛れて分からないだろう。


《お前ならいずれ出来るようになる。──さて》


 ジェイドは仲間たちを見渡し、一つ頷いた。


《留守は任せる。頼んだぞ》

《お任せください。お気を付けて、行ってらっしゃいませ》


 皆が一斉に(こうべ)を垂れる中、ジェイドがばさりと翼を広げ、ふわりと浮かび上がった。


 サファイアとスフェーンもそれに続き、ラズライトの背に飛び乗ったイリスが魔力を解き放つ。


浮かべ(レビテーション)!」


 複雑な魔法陣が足元に浮かび上がり、ラズライトに吸い込まれるように消える。


 身体が軽くなったのを確認し、風魔法で追い風を受けると、あっという間に上空のジェイドたちに追い付いた。


《問題無いようだな》

《うん、行けると思う》


 ラズライトが頷くと、ジェイドはその場でくるりと向きを変える。


《会場はここから西へ半日ほどだ。途中、人里から離れた山の山頂で休憩を取る。なるべく高度を保って飛ぶが、疲れてきたらすぐ言うように》

《はいっ!》

《分かった》

《──では、行くぞ》


 ぐんと加速するジェイドに続き、ラズライトも再び風魔法を使う。


 すぐ隣にスフェーンが、背後にサファイアがついた。


《ふふふっ》


 スフェーンは鼻歌を歌う勢いだ。にこにこと笑っている。


《兄上と一緒に飛ぶのが夢だったんです》


 くるりと一回転する。


 サファイアが苦笑した。


《最初からそんなにはしゃいでいると、すぐに疲れてしまうわよ》

「愛されてるねー、ラズライト」


 背後からからかい混じりの声。

 見えなくても分かる──絶対ニヤニヤ笑っている。


《イリス、ちゃんと集中しててよ。魔法が切れたら自分も落ちるんだからね》

「ハイハイ」


 ちらりと背を見ると、ゴーグルを着けたイリスが肩を竦めていた。


 しかし実際、イリスの浮遊魔法は非常に安定していて、持続時間も長い。

 ここ数日人目につかない山の反対側で色々試してみたのだが、1回掛ければ1時間くらいは持つのだ。

 イリスにとっては消費魔力も大したことはないらしく、一日中使ってても大丈夫だと思う、とか(のたま)っていた。


 もっとも、発動時はラズライトに触れていないと欠片も使えないのだが。



 ──そうして、途中休憩を挟みながら飛ぶこと半日。



 それほど大きなトラブルも無く、ラズライトたちは目的地に到着した。


《ここだ》

「ここって…山?」

《山…だね…?》


 ジェイドが示したのは、眼下に見える巨大な成層火山。

 標高もラズライトの実家がある霊峰と肩を並べるほど高いが、特筆すべきはその火口だ。


 山頂の中央に大きく口を開けた火口は深く、底が見えない。


《火口から中に入る。気を付けて進め》

「中に入る!?」


 イリスの声が弾んだ。


 普通、火口の中に入れるような山はあまり無い。

 鉱物マニアには垂涎のイベントなのだろう、多分。


《イリス、落ちないでよ》


 ジェイドの先導で下降しながら釘を刺すと、大丈夫だって、と何とも気楽な返事が届いた。


「落ちても誰かが助けてくれるでしょ?」

《だから、落ちないでってば》


 上空ならともかく、この火口の中はかなり狭い。

 ドラゴン1頭ずつならかなり余裕はあるが、2頭がすれ違う事は出来なさそうだ。


 こんな場所でイリスが落ちたら、どう考えても救助は難しい。


 そう言い聞かせると、イリスはようやく大人しくなった。


 が、時々『ふおお…』とかいう呻き声が聞こえるので、多分ものすごい勢いで周囲を見渡している。


 ほぼ半日ラズライトの背に乗り、魔法を掛け直しながら極寒の上層を飛んでいたというのに、疲れが見えない。どういう体力だろうか。


(…まあ今更だけどさ…)


 火口の内壁にぶつからないよう注意しながら下降すること暫し。


 不意に、広い空間に出た。





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