表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
丸耳エルフとねこドラゴン  作者: 晩夏ノ空
北方編

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

124/174

123.山岳都市ハルンフェルスへ

 数日後。


《イリス、ラズライト!》


 ラフェットに呼び出されて冒険者ギルドに出向いたイリスとラズライトは、明るい表情のシロに出迎えられた。


「シロ! 元気になったんだね」

《ええ、おかげさまで》


 足取りは軽く、目も輝いている。劇的な回復振りだ。


 イリスが嬉しそうに声を掛けると、シロもしっぽをピンと立てて胸を張る。

 シロに続いて出て来たアオも、にこにこと目を細めた。


《まさかここまで回復するなんて思わなかったよ。ありがとう、イリス、ラズライト》

《どういたしまして》

「ホントに良かった」


 笑い合っていると、奥からラフェットとレオンが顔を出した。


「ああ、来たのね」

「早かったな」


 持っていた書類をギルド職員に預けると、こちらに近付いて来る。


「今日出るんでしょう? もう行くの?」

「うん」


 荷物を全て持っているイリスの姿に、状況を察したらしい。


 既に宿は引き払って来た。

 元々この街は経由地なので、長く滞在する予定は無いのだ。


「行先はハルンフェルスだったか」

「うん、夏の間はハルンフェルスに滞在して、冬になる前に南のメランジに行く感じかな」

「相変わらず渡り鳥みたいな生活してるわね」


 ラフェットが苦笑する。


 確かに、季節に合わせて気候の良い場所に移動する様はまるで渡り鳥だ。


「ラフィ姉とレオ兄は、王都に帰るの?」

「ええ。事後処理にもう少し掛かるけど、それが終わったら王都のギルド本部に顔を出さないとね」

「その後は保護された魔物を生息地に帰す仕事だな」

《忙しいね》


 保護された魔物の中には、生息域自体が保護区域に指定されているような希少な魔物も居た。


 その魔物たちは生息域がはっきりしているので、健康状態を確認した後、問題が無ければそこへ帰すそうだ。


 生息域が広範囲にわたり、どこ出身なのか分からない場合は、国が運営する保護施設行きになるのだという。


「保護施設も一杯一杯なのよね…。今回の検挙で、大元が潰せてると良いんだけど」


 溜息をつくが、すぐに苦笑する。


「──ま、ブラウニーが戻ってトレントたちも落ち着きを取り戻してるでしょうし、北の世界樹の件が片付いただけでも良しとしましょうか」

「そうだな」


 頷き合うと、レオンがイリスに小さな革袋を差し出した。


「イリス、持って行け。お前の取り分だ」

「取り分って…」


 首を傾げつつイリスが受け取る。

 手に乗った瞬間、じゃらりと金属質な音がした。


「…え、金貨!?」


 袋を開けたイリスは、大きく目を見開いた。


 ラズライトがその肩に飛び乗って袋の中身を確認すると、確かに複数枚の金貨が見える。


《こんなに?》

「魔物の違法取引の検挙と、北の世界樹の件の解決協力。当然の報酬よ、受け取って」

「で、でも、こんなに貰ったらラフィ姉とレオ兄の取り分が」

「心配するな。俺たちの分の報酬は十分ある」


 困惑するイリスに、ラフェットとレオンが代わる代わる説明する。


 元々の『マイロのギルド長の内偵』という仕事の成果報酬は当然あるが、さらに不法業者の検挙と北の世界樹の異変の解決に関しては、国から褒賞金が出る案件なのだという。


「本来ならイリスとラズライトも王宮に同行してもらって、お貴族様から直々に褒賞金を貰わなきゃいけないんだけど──」


「ヤダー!」


 ラフェットが言った途端、イリスが叫んだ。


《イリスうるさい》

「だって嫌なものは嫌だし!」

「相変わらずね…」


 ラフェットが苦笑する。

 イリスの権力者嫌いは昔からのようだ。


「だから、褒賞金の見込み額込みでお前に報酬を渡すんだ。大人しく受け取っておけ」

「………ハイ……」


 兄弟子と姉弟子には全部織り込み済みだったらしい。

 イリスは肩を小さくして革袋をポーチに仕舞った。



「じゃあ、そろそろ行くね」

「ええ、気を付けてね」

《ラフェットとレオンもね》

「肝に銘じよう」

《イリス、ラズライト、ありがとう!》

《また会いましょ》

「うん、またね!」



 その後イリスとラズライトは冒険者ギルドを出て、登山道へ向かった。


 山岳都市ハルンフェルスは、ここからさらに山を登った先、山岳地帯の中腹にある。

 当然、山を登らなければならないのだが──そのルートは2つあった。


 一つは、登山馬車が行き交う新道。

 急カーブが多く距離も長いが、道は良く整備されていて徒歩でも登りやすい。

 避暑に訪れる一般の人々は、馬車を使うにしても歩くにしても、みなこの新道を使う。


 もう一つは、かなり昔に使われていた旧道。

 岩石が転がる険しい山道で、距離こそ新道より短いが、好んで通ろうとする者はあまり居ない。


 イリスが選んだのは、当然ながら旧道だった。


(…当然とか思っちゃうあたり、大分毒されてる気がする)


 気にしてはいけない。


 圧縮バッグの上で自分に言い聞かせる。


 そのままハルンフェルスに向かうのかと思いきや、イリスは途中で道を逸れ、藪の中に分け入った。


《イリス、どこ行くの?》


 間違えた訳では無いだろう。訊ねると、イリスは楽しそうに応じた。


「この先に沢があって、滝壺でカンラン石が採れるんだよ」

《ああ、依頼されてたやつか》

「そうそう。向こうに着いてからでも良いとか書いてあったけど、持って行かなかったら絶対不機嫌になるし」

《そんな性格なの?》

「自分じゃ、『世の錬金術師の中ではまだ常識的な方だ』とか言ってたけどね」


 本人の中で、錬金術師はどれだけ非常識な人種なんだろうか。

 『まだ』とか言ってしまっているあたり、色々とアレだが。


 気の抜けた会話をしながら、イリスはどんどん先に進む。


 今歩いているルートは、どう考えても一般には知られていない道だろう。


 と言うか、道と呼んで良いのだろうか。

 獣道ですらない場所を踏み分けて進んでいるのだが。


 ラズライトが困惑しているうちに、イリスはあっさり藪を抜けた。


 黒っぽい石が大量に転がる河原は、今まで見て来た風景とはかなり違う。


《ここ?》

「もうちょっと上流。ここからは沢を登るから、しっかり掴まっててね」


 イリスが圧縮バッグのベルトや靴の状態を確認するのを見て、ラズライトは圧縮バッグ上部の持ち手の下に滑り込む。


 すっかり定位置になったその場所で、ラズライトは上流を見上げた。



《…………え、本気?》



 視線の先、それほど水量の多くない沢は、垂直に切り立った崖の上に続いていた。




評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ