表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
【WEB版】もふもふ後宮幼女は冷徹帝の溺愛から逃げられない ~転生公主の崖っぷち救済絵巻~  作者: たちばな立花
四章:冷徹帝の優しい提案

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

61/67

い→相棒

 今日の宴は延期だなと、誰もが口にしていた午後。しかし、奇跡は起こった。厚い雲に覆われていた空が、城の上部だけすっきりと晴れたのだ。


 これは吉兆であると誰もが口々に言う。現皇帝が天に愛されている証拠だと。


 如余は、ここ数年で一番の幸福を感じていた。”冷徹”と呼ばれ、民からも臣からも慕われていなかった黎明の支持率が少しばかり上昇したからだ。


 黎明は才ある皇帝である。しかし、不遇なる生まれが目立ってしまい、その才が霞んでしまうのだ。生まれてすぐ、早世すると言われ、父親からは見捨てられた。


 美しすぎる顔立ちは親しみやすさからはかけ離れており、臣は氷のようだと言う。


 そして、如余にはもう一つ吉報が届いていた。


「ようやく……。ようやく陛下にも春が……」


 如余は、よよよと泣く。濡れた襦裙を脱いだ黎明は顔色一つ変えずに体を拭った。つい立の反対側で愛紗も侍女によって濡れた襦裙を脱がされる。


「春などと大袈裟だ」

「いいえ、足りないくらいでしょう。この広い領土を治める陛下に妃が一人しかいらっしゃらなかったのですから」

「哀れな女を妃に迎えただけだ」


 ――舞のために妃にさせたなんて知ったら、如余は卒倒しそう。


 愛紗は侍女に泥だらけの身体を拭われながら、思った。あの時の黎明は、まるで執務の一環として処理しているように見えたのだ。


「まあ! 愛紗様、この怪我はどうされたのですか!?」

「あ」


 手や膝が擦りむけ、血がにじんでいる。人間の身体は脆い。そのことをすっかり忘れていた。


「ちょっと追いかけっこしていて転んだの。これくらい舐めとけば治るのよ」

「舐めても治りませんよ。跡が残っては大変です。すぐに侍医を呼んでまいります」


 侍女が慌てた様子で部屋を出ていく。取り残された愛紗は薄着のまま、近くの椅子によじ登った。皇帝の唯一の娘だけあって、蝶よ花よと育てられている自覚はある。怪我をすることはほとんどなく、侍女も驚いたのだろう。


 愛紗はプラプラと足を揺らす。つい立の向こう側では、宦官数名がかりで黎明の着替えを行っていた。


 ――泥だらけの手で衿とか袖とか掴んじゃったけど大丈夫かな。


 黎明が纏うものは全て高価そうだ。手のひらからも血が出ているし、全く汚していないとは考えにくい。


 ――ま、いっか。


 頭を抱えるのは洗衣局の人間で愛紗ではない。子どもが汚したものに目くじらを立てる者はいないだろう。いたとして、皇帝の娘に文句を言える人間がどの程度いるだろうか。


「っくしゅ」


 薄着だったせいか、愛紗は小さなくしゃみのあと身震いした。髪の毛が半乾きなせいかもしれない。二回目のくしゃみの予兆を感じて、愛紗は目を固く閉じた。


 大きなくしゃみと同時に、愛紗の頭を柔らかい布が包む。目の前には、着替えなかばの黎明がいる。濡れた髪を丁寧に拭く手はとてもやさしいものだった。


「陛下、お召替えが終わってからでもよろしいでしょう」

「子とは簡単に風邪を引く。愛紗に羽織るものを」

「かしこまりました」


 バタバタと人が部屋から出ていく。黎明は宴のための襦裙に着替えたのだろうか、いつも以上に華やかな装いだ。


 黎明は椅子に座る愛紗の前にひざまずいた。小さな両の手を優しく包む。


「愛紗は敏い子だ。私が鬼に狙われているとわかって、私を逃がそうとしてくれたのだろう?」


 頷けば、「もうやってはならぬ」と言われそうで、愛紗は何も言わなかった。それが愛紗のすべきことなのだから当然だ。駄目だと言われても、やめることはできない。


「あれは一人でどうにかできる相手ではない。鬼を見つけたら、私を頼りなさい」

「お父さまを?」

「ああ、私は頼りないか?」

「そんなことないの。でも、危ないでしょ?」


 鬼は間違いなく黎明を狙っている。


「では、愛紗が安心して私を呼べるよう、もっと強くならなくては」

「お父さまは十分強いです」


 これ以上強くなれば、愛紗の出る幕がなくなるではないか。ただでさえ仙術の制限を受けている身。しかも身体もまだまだ幼い子どもだ。


 愛紗が頬を膨らます。


「なに、二人で戦ったほうが良いだろう? 強い敵と戦う物語には必ず相棒がいる。私を愛紗の相棒にしてくれないか?」

「んー……」


 ――相棒か。あたしじゃ、あの魂殺剣は使えないし悪くない提案かも。


 今のところ、問題なく黎明と共に鬼を退治できている。問題が出てきたら、次の手を考えればいい。


「わかりました。お父さまを相棒にしてあげます」

「ありがとう」


 黎明は優しく微笑むと、愛紗のまだ濡れる頭を撫でた。


「相棒に秘密はなしだ。よいな?」

「あい」


 愛紗がしっかり頷くと、黎明は満足そうに頷く。


「はっ! 相棒のお父さまに話したいことがあるのよ!」

「なんだ?」

「あたしの話、全部信じてくれる?」

「私が愛紗を疑ったことがあるか? なんでも信じよう」


 愛紗は一つ、黎明に話さなせればならないことがあった。


「お父さまは信じられないかもしれないけど……」


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ