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【WEB版】もふもふ後宮幼女は冷徹帝の溺愛から逃げられない ~転生公主の崖っぷち救済絵巻~  作者: たちばな立花
第四話:正面対決!仙vs鬼 ときどきお父さま

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い→久しぶりの暗殺予告

 最後に黎明れいめいが殺されそうになってから十日が経った。愛紗あいしゃと黎明は毎日、同じ寝台で寝起きし、朝餉まで共にするようになっている。

 

 大きなあくびをした愛紗に、十然じゅうぜんは面白そうに笑った。

 

「どう見ても、姫さんが寵妃ちょうひだな」

「馬鹿言わないでよ。あたしはただの娘だもん」

「毎日一緒に寝て、飯まで食って戻ってくるんだ。これを寵妃と言わずしてなんと言う? だが、このままだと映貴妃えいきひに嫌われるんじゃないか?」

「あー……たぶん、映貴妃は喜んでいるから大丈夫」

 

 十然は意味がわからないと言ったように首をひねったが、愛紗は言葉を濁した。映貴妃が男であることは誰にも秘密なのだ。十然に言っても問題はないと思うが、約束は約束。

 

 猫族まおぞくは義理堅い一族である。

 

「最近鬼も現れないし、諦めて帰ったんじゃないか?」

「そうかなぁ。そんな簡単かな?」

 

 気持ちの緩みきった状態で、愛紗はいつものように運命録うんめいろくの入っている木箱を開けた。

 

『夜半、鬼により殺される』

 

「……あたし、運命録に『鬼』って文字を初めて見た」

「そうだなぁ。鬼に殺されるんだとさ」

「夜半……。今までは夜伽の際~だったけど、今回は夜半になったのよ」

「時間としては変わらないから、場所が違うんじゃないか? 今までは寝所を狙われたけど、今回は違う」

「そっか。でも今日もお父さまと普通に寝る約束をしているのよ」

 

 特別なことがない限り、夜半に黎明が他の場所を歩き回るとは限らない。

 

「寝所にいられない理由ができるんじゃないのか?」

「……火事とか?」

「賊が入るとか、な」

「じゃあ、今日は寝所にずっととどめておくのも危ないってことね」

「そういうこと。もしかしたら鬼も本気を出して来たのかもな?」

「本気……。これ以上面倒なのは嫌……」

 

 今までのことを思い出し、愛紗は頭を抱える。愛紗はこの試練を受けたことを少しばかり後悔した。鬼に狙われやすいと聞いてはいたが、ここまでとは思わなかったのだ。

 

 ときどきちょちょいと相手をすればあとは終わりだと信じていた。

 

 ここひと月あまりの愛紗は鬼に振り回されっぱなしである。

 

 

 

 

 太陽が大地に溶け、夕餉を食べ終えた愛紗は空を見上げた。

 

「月がお休みだ」

 

 人間界では月が満ち欠けする。月に一度、姿を消すのだ。くるくると回り、全方位確認したが、星がきらめくばかりだった。

 

「愛紗様、お迎えにあがりました」

 

 夜伽の迎えは尚心しょうしんの仕事。今日も尚心はにこやかな笑みを見せる。

 

「尚心、今日は月がない日ね」

「そうでございますね」

「星がいつもよりキラキラしている」

「そうでございますね」

「提灯もいつもより明るく感じる」

「そうでございますね」

 

 雛典宮すうてんきゅうから黎明の寝所までは遠い。今日の尚心はいつもよりも早歩きだ。月明かりのない夜は赤い提灯がよくはえる。

 

 いつも上ばかり見ていたが、赤い影が足下を彩っていることに気づいた。赤に映し出される愛紗の存在。まるで、世界に一人になったようだ。

 

「……尚心、鬼って本当にいると思う?」

「どうしてそのようなことを?」

「この前、お父さまにご本を読んでもらったの。『夜鬼伝やっきでん』っていうのよ」

「これまた難しい本をお読みなのでございますね」

「あい。もうあたし、大人なので」

 

 愛紗はピタリと足を止める。この辺りは無人の宮殿が建ち並ぶ場所だ。高い塀の向こうには誰もいない。

 

 尚心と愛紗の二人きりだ。

 

「お父さまに教えてもらったの。鬼はね、影ができないんだって」

「そうでございますか。ではすぐに見つけられますね」

「ねえ、尚心。あたし知りたいことがあるの」

「どのようなことでございましょうか?」

 

 尚心がゆっくりと振り返る。

 

「ね、さっきからなんで殺気を抑えないの?」

 


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