表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
【WEB版】もふもふ後宮幼女は冷徹帝の溺愛から逃げられない ~転生公主の崖っぷち救済絵巻~  作者: たちばな立花
第二話:黎明の寵妃の秘密

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

13/67

さん→一番あやしい人

お待たせしました〜!

体調を崩してしまい、投稿おくれました。

 先帝の妃はにこりと笑った。あまり噛まずに飲んでしまった桃饅頭ももまんじゅうの欠片が喉を押し上げる。


 ここにいる妃嬪ひひんは、こんな後宮の奥に追いやられようとも、まだ再起はあると密かに準備をしているのだ。


映貴妃えいきひは子に縁があまりないご様子だし、心配でしょう?」

「でも、お父さまは映貴妃を寵愛してますよ。今夜も……」


 黎明れいめいから今夜の夜伽よとぎは断られた。つまり、今日は映貴妃に会いたいということなのだろう。四日も独占すれば、映貴妃から文句が出たのかもしれない。


 背が高く、気の強そうな目をしていた。


「映貴妃は映将軍えいしょうぐんの娘だから優遇しているのかもしれないわね」

「映将軍?」

「戦で何度も武功ぶこうをあげているとてもすごい人よ。先の高州で起った内乱を治めた方だから、陛下も頭が上がらないのでしょう。でもね、おかしいのよ」

「何がですか?」

「映将軍は最後まで第一皇子を皇位に推していた一人なの。その将軍の娘を貴妃にしてもう三年。他には一人も妃はいないし。陛下を推していたうちの一人ならわかるのよ?」

「……うーん。あたし、よくわからない」


 こんなときは子どもらしく首を傾げておくに限る。彼女の言うことが本当なら、とてもややこしい関係だ。


 映貴妃の父親は、先帝の息子を皇帝にしたかった。けれど、黎明れいめいの後宮に娘を入れている。暗殺者は映貴妃で、将軍が送り込んだのかもしれない。


 鬼に狙われやすい黎明だからと言って、人間に一切狙われないとは限らないのだ。彼は皇帝だ。この乱世で恨みを買っていない皇帝など存在するだろうか。


 ――調べる必要がありそうだわ。


桃饅頭の最後の一欠片をお茶で流し込むと、愛紗あいしゃは立ち上がった。


「そろそろ帰ります」

「あら、もっとお話したかったわ」

「あたし、忙しいの。ごめんなさい」

「まあ……。それはお引きとめできないわね。では、わたくしが今度は愛紗あいしゃ様の宮へも遊びに行っていいかしら?」


 抜け目のない女性だ。愛紗をつかって黎明に近づこうとしているのだろう。


「お父さまはあたしのところには遊びに来ないですよ?」

「まあ! そんなつもりじゃないのよ。愛紗様もこの広い後宮で寂しいでしょう?」


 目が笑っていない。


「みんないるから寂しくないけど、桃饅頭のお礼くらいならします」

「あら、ありがとう。嬉しいわ」


 桃饅頭とは言ったが、本当は情報のお礼だ。愛紗は彼女の暮す宮をあとにした。宮の入り口では、十然じゅうぜんが不気味な笑みを浮かべて待っている。


 愛紗が腕を伸ばす前に、脇を両手でつかみ抱き上げる。もはや習慣になってしまったようだ。


 快適、快適。十然の腕は猫の抱き方こそ下手ではあるが、人間の子どもを抱き上げるのはさまになってきている。あと何年これがまかり通るかはわからないが、ぜひ鍛えて長く仕えてほしいと愛紗は願う。


「姫さん、その様子だといい情報が得られたようだな」

「あい。映貴妃は映将軍の間者かんじゃの可能性があるの」

「話が飛びまくっててよくわからないんだが、映将軍から説明してくれないか?」

「仕方ないな。映将軍っていうのはね――」


 愛紗は十然の腕の中で、先ほどの妃から聞いた話を説明する。


「つまり、映貴妃が非常にあやしいってことよ!」

「ふーん、なるほどね。相手が鬼ではない可能性か」

「もしくは、映将軍が鬼で、映貴妃を使っているとか」

「あー。それはあるかもな。だが、そんなあやしい奴と普通、同じ寝台でねるか? 陛下も馬鹿じゃないんだろ?」

「んー。それはわからないけど……。もし、映貴妃なら今夜、絶対殺る気だと思う」

運命録うんめいろくにも『夜伽の際~』って書かれていたしな。それで、姫さんはどうやって皇帝を助けるわけだ?」

「そこなのよ。今までは一緒にいたからどうにかなったんだけど……」


 今日はどんなに駄々をこねても、黎明は首を縦には振らなかった。


「そうだ! いい考えがあるわ! 夜伽がだめでも部屋には入れるじゃない!」


 愛紗はぐっと拳を握りしめる。実に良い案だ。そのとき、十然の顔が青ざめていたことを愛紗は知らない。





 日が顔を隠そうとしたころ、愛紗と十然は黎明の寝所の近くにいた。茂みに隠れた愛紗は、様子をうかがう。


「どう?」

「衛兵が二人……。いや、三人だな。本当に行く気か?」

「あい。堂々と一緒にいられない以上、こっそり隠れているしかないもの」

「止めないけどよ、気をつけろよ? 俺はこっから先は手伝えないからさ。けど、まだ夕刻だぞ? 夜伽は三刻くらい待たないと……って、まさか」

「そ、そのまさかよ」


 愛紗は茂みの中で手を交差させる。体内の霊力を練り上げていく。ふわりと舞う髪の毛。風が強くなった。


「今日の術は特別製なんだか、らっ!」


 愛紗の声とともに、光が寝所の屋根へと飛んでいく。屋根を突き抜け、消えていった。


「おい、今のは?」


 十然の質問に答える前に、愛紗の身体が子猫へと変わる。


「みゃあ!」

「んー……。わからん。明日成功したら教えてくれ。って、今から明日まで姫さんがいないことを俺がごまかすのか……」

「みゃ!」

「今のはわかる。『よろしく!』だろ? はぁ……ま、いいや。その姿なら衛兵も疑わないもんな。今や皇帝のお気に入りのお猫様だし」

「みゃあ~」


 猫になった愛紗は、十然に持たせていた荷物をカリカリと爪でひっかく。愛紗にとって、それが命綱だ。


「はいはい。背中に結ぶぞ?」


ずっしりと重いそれは、背中に交差してくくりつけられた。これで準備万端だ。


「みゃあ~!」

「いってらっしゃい。気をつけろよ」


 十然の見送りを背に、子猫の愛紗はまっすぐ寝所へと進む。猫を見ても衛兵は槍を向けたりはしなかった。それどころか、猫なで声で話しかけ、寝所の扉を開けてくれるのだ。この四日で築きあげた信頼。


 愛紗はその足で堂々と黎明の寝所へ忍び込んだ。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ