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ショートショート5月~

追い風

作者: たかさば
掲載日:2020/05/06

幸せは、後ろからつむじ風に乗ってやってくるらしい。


そんなことを子供のころに聞いてから、僕は風が好きになった。



風を感じたい、そう願う僕は、陸上部に入った。


風が僕を追い越し、僕が風を追い越す。



後ろから風が吹いたとき、僕はいつも、幸せが僕を追い抜いていったと感じていた。


風を追いかけ、幸せをつかむ。


後ろから風が吹くたび、僕はいつも、手を、前に伸ばした。


この手に、幸せを、つかむために。



向かい風は、僕の悪い運を、真っ向から吹き飛ばしてくれるものだと感じていた。


悪いものを、豪快に吹き飛ばしてくれる、風。


風は、いつも僕と共にあり、僕に力を与えてくれた。



陸上をやめて20年。


僕は、風をつかむことがなくなってしまった。


けれど、向かい風は、僕の悪い運を、しっかりと吹き飛ばしてくれている。


向かい風は、いつだって僕の、大切な、相棒。


追い風は、このところ、吹いていない。


幸せは、なかなか後ろから、追いかけてこない。


けれども僕は、幸せを感じている。


優しく吹く風は、追いかけてはこないけれども、確かにおだやかな幸せを纏わせてくれる。



息子が、陸上部に入るという。



「僕も、幸せをつかんでみたくなったから。」



昔聞かせた僕の話を、覚えていたようだ。


昔僕が好んで風に吹かれたように、息子も風に吹かれるのだろう。


追い風が、息子に吹きますように。


そう、願った。



後ろから、ぶわっと、追い風が、吹いた。


ああ、風が、幸せを届けてくれた。


風が、息子を、認めてくれたのかもしれない。



息子は、風を、たくさんつかむに、違いない。



僕は、久しぶりに吹いた追い風を、つかむことなく、見送った。




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― 新着の感想 ―
[良い点] 風をつかまずに見送ったの、解釈違うかもしれないけど息子に譲ってる感じがした。「次は君がつかむ番だよ」的な。エールを感じます!
[良い点] 「風」でここまで想像力を飛ばせるなんて。流石です。 [気になる点] これは、作者の記憶? 授業で走らされた記憶を思い出しながら書いたイメージしてます [一言] つかむことなく、見送った。←…
2020/05/06 21:40 退会済み
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