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第43話 アンデッドドラゴン

 翌日、俺たちは、荒れ果てた森の前に立っていた。


「これは…ひどいな。」


 前方に見えるトルバ山からここまで、腐食した森が続いている。まるで、コールタールの雨が降ったようだ。死の彫刻のような黒い木々を抜けながら、俺たちはトルバ山を目指した。


 ルッソや、ヒーちゃんも言葉少なで、緊張した面持ちだ。ワンダ軍曹と俺が先頭に立ち進んでいく。幸い、魔物に出会わないのだが、嵐の前の静けさのようで、逆に不安になる。


 トルバ山のふもとに着いた。ここまでは、森が腐っているくらいで特に何もなかった。しかし、この山を中心に森が腐食してるので、山に何かがあることは確かなのだ。

 俺は提案せざるをえなかった。

「何もないからもう帰りませんか。」


 全員が俺を見る。

「いやいや。それじゃ斥候の意味がないよ。」

「サーノ、アタマワルイ」


 ヒーちゃんは、日を経るごとに言葉が堪能になっている。俺に対するディスリ表現のみね!


「じゃ、どうするんだよ?ここから登山するのか?大変だぞ。ドラゴンみたいな化け物に出会ったら、疲労困憊で戦闘なんかできないだろ!」

 俺は精一杯わめいた。


「…それもそうだけど。」

「ふーむ、腐食の森の先進部に何かしら手がかりがあると思ったがな。登らざるをえないか…」

「えー。俺はいやですよ。」


 仏頂面になりながら、どうやってこのメンツを説得して帰還しようかと思案していた時である。



 グァァァーーーー!!


 山の上の方から得体の知れない咆哮が響いた。


 え?なになに?


「サーノ、お前の胸元…」

「え?」

 ワンダ軍曹に指摘されて、胸元を見てみると、ポケットに入れた笛から黒い光が漏れている。


 しまったーーーー!!


 なんでこんなヤバいものをパリーに渡しておかなかったんだ?

 俺のバカ、バカ、バカ!


「くそったれー!」

 俺は、力の限り遠くに笛を放り投げた。


「逃げるぞ!」

 ビンビンに化け物の気配を感じた俺たちは、一目散に元来た方へ、駆け出す。



 グァァァーーーー!!



 俺たちに突然大きな影が落ちてきた。

 上を見上げたらアウトだ。

 しかし、影が俺たちを追い越していく。そこで、


 グァァァーーーーーーーー!!!


 今までの何倍も近い音量の咆哮で、俺は、足がすくんでへたりこんでしまった。なんならちょっと失禁した。ルッソも、ヒーちゃんも、座り込んでいる。ワンダ軍曹だけが、声の主を睨んでいる。


 バザーッッッ!!


 大きな翼をはためかせ、俺たちの目の前に降り立つ。鼻がもげるような悪臭と、漂う黒い瘴気、そして、恐ろしい体格。


「アンデッドドラゴンだ…」

 ワンダ軍曹が絞りだすように言った。



 マジかよ、ちくしょう!

 いきなりラスボスが始まりの村を襲いかかってきた感じだ。

 全滅の予感しかない。


「ナゼ、笛ヲ持ッテイタノダ?」


 腹の底に響くような、恐ろしい声だ。

 このドラゴン、人語を話しやがる。

 

「貴様ハ、接触者デハ、ナイナ。」


 接触者だと?何のことだ。


「マァイイ。死ネ。」


 いきなり、アンデッドドラゴンは、とてつもない速さで、かぎ爪を横に払う。黒いやいばが俺たちに迫ってくる。

 ギリギリのところで、かわすも、ヒーちゃんは反応が遅れ、そのまま切断されそうになる。


「ヒーちゃん!」

 ルッソが飛び込み、ヒーちゃんを押し倒す。ルッソの背中を黒い刃が切り裂いていく。


「うっ!」

「ルッソー!」

 俺は叫びながら、アンデッドドラゴンを見やると、ヒーちゃんを見て、動きが止まっていた。


「イマナオスカラ!」

 ヒーちゃんが、ヒールの魔法をルッソにかけ、背中の傷が治っていく。


「…貴様ハ、感応者ダナ。ナゼ、生キテイル?」

 ヒーちゃんを見下ろしながら、アンデッドドラゴンが言う。


「さっきから、接触者だとか、感応者とか、どういうことだ?というか、何とか見逃してくれないか?この通りだ。」


 俺は土下座した。

 

「矮小ナル者二ハ、関係ノナイコトダ。」

「サーノ。接触者と感応者は、土着の民話に出てくるよ。」

 傷から回復した、ルッソが教えてくれる。


「接触者と感応者と器が揃って、神が復活するとされてるんだ。」

「ホウ、博学ダナ。」

 ルッソは、アンデッドドラゴンの攻撃に警戒しながら、二の句を次いだ。 

「この民話は、アンダンテを信奉する教会の教えとは相容れないから、異端とされてる。誰も言わない。でも、洞窟の壁画と民話は関係があるだろうと思ってたんだ。」


 えー、そうなの?


「矮小ナル者。ソウダ。吾輩ハ、神ナル存在ダ。」

「おっしゃる通りでございます。どうか、お見逃しください。お助けください。」

 

 俺は、額を地面にこすりつけた。


「神とは違うと思う。民話では、接触者も感応者も神の復活とともに死ぬんだ。つまり、感応者は生きてはいない。」


 なんだ…そういうことか。

 

 俺は立ち上がった。

「お前は、所詮、神もどきなんだよ!失せろ、この出来損ないが!」

「黙レ、小童!!」

「ヒー!」

 俺は、あまりの威圧に平伏した。


 ビョウエェェー!!

 

 いきなりアンデッドドラゴンが唸り声をあげたかと思うと、プッと口から黒い笛を吐き出した。


 えー、あの瞬間に笛をキャッチしてたの?どんだけ速いのよ、このドラゴン。


「コノ笛二、貴様ノ血ヲ流シ込メバ、吾輩ハ完全二復活スルノダ。」

 アンデッドドラゴンが、ヒーちゃんをターゲットにして、まさに食らいつこうとしたその瞬間、


 グェェェーー!!


 アンデッドドラゴンが横転する。


「獣王無尽拳壱式 無影拳!」

 格闘家の構えをしたワンダ軍曹が、黄色のオーラを体から放ちつつ現れた。



 あんた、知らん間にドラゴンの背後に回っとたんかい!

 すごいやんか!


「サーノ!このドラゴンを識別しろ!」


 あっ、そうだ。

 土下座に夢中になって、鑑別スキルの存在を忘れていたぜ。

 俺は、横倒しになったアンデッドドラゴンに鑑別スキルを叩き込む。

 お前の魔石(急所)を晒し出せ!

(鑑別スキル:ステータス)


― キャンセルされました ―


「え?」


 ギャルルルーー!!


 アンデッドドラゴンが尻尾を振り回すも、ワンダ軍曹はそれを器用に躱す。


「どうだ?」

「鑑別できません…」

「何だと!」


 ワンダ軍曹は目を見開いた。

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