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世界観制約で罵倒しかできない悪役令嬢なのに、なぜか婚約者が溺愛してくる  作者: 杓子ねこ


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21/22

21.やっぱり味方は多かった?

 事件後、週末だったこともあり、ロアン様とわたくしは王宮に泊まることになった。

 二度目の事情聴取と闇魔法の影響検査に加え、わたくしの魔力量や魔法適性の測定も行われた。けれど、やはりわたくしに魔力はなく、聖魔法も使えなくなっていた。

 

 あれはあのとき一回限りの奇跡で、セノリィを倒すためのものだった――そう思うことにしよう。

 

「そうでないといろいろと面倒くさいからねえ」

 

 あっけらかんと言い放つのはヒューバート殿下。

 

「聖女を断罪しきれずに王都に留めおいたせいで、大惨事が起きるところだった。貴族たちはしばらく聖女と呼ばれる者と関わりあいになりたくないだろうからね」

「それに、ヴェスカ嬢が聖女となれば、俺との時間が減ってしまいます」

 

 腕組みをして口をへの字にするロアン様に、ヒューバート殿下が苦笑する。

 

「ま、もうセノリィの脅威はない。安心してデートでもなんでもしてくれ。フェニックスも戻ってきたしな」

 

『フェニックス』の言葉に、わたくしは思わず胡乱な顔つきになってしまう。

 

 ヒューバート殿下が以前おっしゃっていた、セノリィに対して手がないわけではない、というのは、クーちゃんのことだったらしい。

 

 闇魔法に対抗するのは聖魔法。聖魔法が使える人間は聖女だけで、聖女が現れる時期は不確定だ。

 そこで遠い昔、王家は聖獣とも守護契約を結んだ。それがフェニックスということだそうだけれど……。

 

 人間でないだけに、必ず言うことを聞いてくれるというものでもなく、とくにクーちゃんは見た目どおり、代替わりをしたばかりのフェニックスのヒヨコ。

 しょっちゅう脱走しては騎士団の手を煩わせている、とヒューバート殿下は肩をすくめた。

 

「ロアン様がお忙しかったのや、ペットショップでの聞き込みは……」

「あの方をさがしていたんだ」

 

 ロアン様もこの話題だけはなんともいえない顔になっている。

 

「ヴェスカ嬢との時間を削ってさがしていたのに、まさかヴェスカ嬢のもとへ通っていたなんて……危ないところを助けていただいたから、なにも言えないが……」

 

 この件については、わたくしもなにも言わないでおこうと思う。

 

 最後の力を振り絞った闇魔法を蹴散らされ、セノリィの魔力は枯渇した。それが聖獣の力でもある。

 もはや聖魔法を使うこともできなくなり、擁護派だった貴族にも煙たがられて、セノリィは修道院へ送られるそうだ。

 セノリィに少しでも他人を思いやる気持ちがあればと考えてしまうけれど、それも言っても仕方のないこと。

 

 

 王宮を出る前に、ロアン様に誘われて、わたくしは騎士団へ立ちよることにした。

 騎士団の宿舎は演習場とともに、庭園の一画に併設されている。

 

 ロアン様に手をとられて宿舎へ入ると、わたくしはなぜか騎士団の皆さんから拍手と歓声で迎えられた。

 

 ……なんで?

 

 ロアン様と同じ制服を着込んだ皆様。

 その中から一歩進みでた一人が、わたくしに頭をさげてくださる。

 

「初めまして、フランゼスカ様。副隊長のハガードと申します」

「ハガード様……」

 

 そのお名前にはとても馴染みがあった。

 お昼時にロアン様がお話ししてくださっていた、王宮に勤めるご令嬢に一目惚れしたという上司だ。

 顔をあげたハガード様は、なぜか目を潤ませてわたくしを見つめている気がする。

 

「ありがとうございます、フランゼスカ様がロアンにご令嬢にどう接するべきかを教えてくださっていたそうで」

「え、いえ……?」

 

 罵倒しかできなかったせいで、そんなことはしておりませんが……?

 

「お恥ずかしいことですが俺もロアンの真似をして、花を贈ったり、髪飾りを贈ったり、ランチに誘ったりしたんです。徐々にお相手もうちとけてくれて、先日ついに婚約できまして……!」

「それは、まことにおめでとうございます。でもわたくしがロアン様にお教えしたわけではありませんから」

 

 花を花屋で買えとは言ったけれど、髪飾りをくださったりランチへの同席はロアン様ご本人のやさしさだ。そう説明するけれど、それでもハガード様の表情は変わらない。

 

「そうですか。しかし一番大切なことはフランゼスカ様に教えていただいたのだと言っていました」

「一番大切なこと?」

「いきなり現れて求婚してはいけないということです」

 

 それはそうでは? と思ったものの、この世界は貴族の世界だ。親同士の話し合いで結婚が決まる、なんてことはよくある。

 記憶をとり戻さなければわたくしだって、直接の求婚はしないにしろ、お父様に「ヒューバート殿下と結婚したい」とごねていたはず。

 

 ただ、王宮で働いているという時点でそのご令嬢は自立心の強い方だということがわかる。

 よく知りもしない騎士に一目惚れだと求婚されても、ロアン様に求婚されたときのわたくしと同じ反応になった可能性が高い。

 それにしても、騎士団には猪突猛進な性格の方が多いのかしら……。

 

「加えて、フェニックスが王宮へ戻ってきたのは、フランゼスカ様のお力添えもあったからだとうかがっております。おかげ様で我々は続く残業から解放されました」

「「「「ありがとうございました!!」」」」

 

 騎士団の皆様が敬礼をしてくださる。

 

「さらには、脱獄したセノリィの捕縛と、闇魔法の浄化まで……騎士団としては初動の遅れは恥じ入るばかりで。今後はフランゼスカ様を見習い、いっそうの鍛錬を重ねてまいります」

「「「「申し訳ございませんでした!!」」」」

 

 今度はいっせいに膝をつき、深々と頭をさげられて、

 

「ええと……お顔をあげてください。皆様のお役に立ててようございました」

 

 わたくしは引き気味の内心を悟られないよう、あいまいな笑顔を浮かべて応じたのだった。

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