28 ダンジョン国家日本改めダンジョン国家地球
凶獣大戦も終わり。人類の危機には連合国・同盟・共栄圏の区別なく協力出来る体制を整えておこう、という運動が起こり始めた1965年3月10日。強化動物騒動で後回しになっていた人工衛星による月面探索が行われ。
複数のダンジョンの出入口らしきモノが、確認された。
「これは不味い!」
全人類は共通の危機感を抱き。全国家が所属し、人類の危機への対応を決める組織『地球連盟』が発足。ダンジョンらしきモノの正体を調べるため、それだけの技術を持つ日本が、とりあえず月面の有人調査を行うこととなった。
初の月面有人調査隊を率いるのは、特級冒険者『山中桜』。ダンジョン探索にかけては右に出る者のいない、日本最強の冒険者パーティが、月面とそのダンジョンの調査に当たった。
「うん、びっくりするほど低難易度だね!」
第1回目の月面有人調査で調べられた2つのダンジョンは、日本であれば初心者冒険者の鍛錬に使われるような危険性のものであった。
第2回、第3回……、と調査は行われ。全18回の調査により、月に確認された20のダンジョン全てそんな調子であることも判明。地球連盟はほっとひと息ついた。
そして思った。
「ダンジョン使えば、月面都市を建設するのはかなり楽になるのでは?」
月のダンジョン内部も、どういう訳か地球と同じ大気組成をしていた。飲める水があるダンジョンもあった。鉱物資源は、当然あった。
ならダンジョンを上手く使えば、月面都市も楽に建設出来るのでは?
発足したばかりの地球連盟は、月の領土分配のために動こうとして。
日本代表がキレた。
「月より前に海底ダンジョン何とかしろ!」
「今度は海で凶獣大戦が起こるだろ!?」
それはそう、と各国は納得。海上を埋めるように国境線が引かれ、日本からの技術供与により、海底ダンジョンの管理も始まった。
そうして1970年6月2日、ようやく地球全土のダンジョンが管理下に置かれ。各国は気付いた。
「ちょっと日本強過ぎない?」
身体能力的にも、技術的にも、日本は先を行き過ぎている。
経済も軍事も政治もダンジョンによって成り立つ、まさに『ダンジョン国家』と言えるほど、ダンジョンに日本がのめり込んできた成果と言えばそれまでなのだが。
このまま各国バラバラで月面開発が始まれば、勢いのまま、日本だけで火星・木星・更に遠くへと、1か国で開発しかねない。
ようやく気付いたかと、元共栄圏諸国は他国に苦笑い。
これは不味過ぎると、日本以外の各国は共同歩調を取った。
「名目上だけでも地球を統一政府にして、実質的には日本におんぶにだっこで宇宙開発初期を乗り切り、後から追い抜いてやろう!」
あまりにもあんまりな思惑を察した日本は当然嫌がった。1980年頃まで抵抗した。
しかし世界があまりにもしつこかったので、日本は考え方を変えた。
「地球統一政府発足後、上手いことプロパガンダを流して『〜国人』から『地球人』へと意識を変えさせよう!」
こうして1988年7月7日。地球人類初の月面都市『静かの海基地』第1期工事の完了と共に、地球から国境線がなくなり、地球はひとつの国家に統一された。
その後地球人は、火星や木星へと、更に遠い他の恒星系へと、銀河のあちらこちらへと広がり。
他の惑星でもダンジョン探索したり。
他の惑星起源の人に出会ったり。
ダンジョンにより強化されきった惑星サイズの動物と戦ったり。
なんやかんやしつつ、繁栄していくのであった。
最後は尻切れトンボ感ありますが、これにて完結です。
最後まで読んで頂き、本当にありがとうございます!




