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ダンジョン国家日本  作者: ネムノキ


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27 凶獣大戦3

 イタリアがチャドやニジェールの部族に警告を発していた頃。1960年8月10日、イギリス領東アフリカの内陸部、トゥルカナ湖からマラウイ湖にかけての地域(アフリカ大湖沼)とその周辺にて、強化されたライオンや象、バッファロー、チーター等が確認された。

 イギリスは、現地部族に「決して手を出さない」よう通達した。しかしその通達は時間不足もあって十分に行き渡らず、多数の部族が強化動物を攻撃。

 8月20〜25日にかけて、イギリス領東アフリカととばっちりのポルトガル領モザンビーク北部は内陸部から強化動物の攻撃を受け、全ての人間が殲滅されていった。

 もちろんベルギー領コンゴ側も強化動物による被害を受けていたのだが。そちらの地域は人間同士の紛争が酷すぎて外部との連絡が付かなければ灯火もあまりなかったので、察した人はいても事実確認は出来なかった。




 中華の強化動物騒動をアメリカ伝いに知ったブラジルは、ダンジョンどころか土地そのものの管理もまともに出来ていないアマゾンの熱帯雨林に調査隊を派遣。8月20日、ジャガー・猿・蛇などなどが、ダンジョンを出入りしていることを突き止めた。

 恐慌状態に陥った調査隊は、ダンジョン周辺の森へ放火。強化動物をその住処ごと焼き殺そうと企んだ。

 運が悪かった、それもとても悪かったことに、そのダンジョンは植物系モンスターが多数生息し。その植物系モンスターは熱を吸収して急成長・増殖する特性を持っており。その種子を、強化動物は持ち出していた(強化動物の糞に紛れていたと推測される)。


 アマゾン熱帯雨林の木々はあっという間に植物系モンスターに取って代わられた。

 強化動物よりも凶暴な植物系モンスターによって、ブラジル・パラグアイ・ウルグアイ・アルゼンチン・ガイアナ・オランダ領ギアナ・ギュイヤンヌ(フランス領ギアナ)の全土と、ボリビア東部・ペルー東部・コロンビア南部・ベネズエラ南部。つまり南米大陸ののほとんどが、植物系モンスター蔓延る危険地帯になってしまった。




 中華・フロリダ半島・ロッキー山脈・オーストラリア・ニュージーランド・アフリカ・南米で同時多発的に強化動物が引き起こした争乱を、後世では併せて『凶獣大戦』と呼ぶ。

 後知恵になるが、これらの中で最も危険だったのはアフリカで、最も安全だったのは南米次いでフロリダ中華だろう。

 しかし当時の人間は『ダンジョンモンスターが溢れた』という一点から、南米を危険視した。


 南米を危険視したのは、連合国・同盟・共栄圏全てで共通だったが。

 連合国は盟主の領土(ロッキー山脈)で争乱が起こっているため、そちらを優先せざるを得ず。

 同盟はアフリカにかかりきり。

 共栄圏はティモール海・アラフラ海・トレス海峡でオーストラリアに睨みを利かせつつの中華の後始末で忙しい。

 そんな状態だったが。日本・ソ連・イタリア・イギリス・アメリカが共同歩調を取って、モンスターそのものが構成している大森林へと偵察隊を送り込んだ。それほど南米の事態は危険視されていたのだ。


 偵察隊は、ダンジョンで鍛えられた日本・ソ連・イタリアの活躍が凄まじく。また宇宙開発競争の余波でコンピュータ技術も発展していたことから、各国が同じ結論に至るのは早かった。


「日本製の除草ポーションを使えば、南米大森林のモンスターは根絶出来る。その代わり地球全土を炭酸ガスによる汚染が襲うだろう」


 アマゾン熱帯雨林を越える大森林となった南米大陸を枯らすのは、炭素循環系から言って良くない。だから放置するしかないと、そう結論が出たのだ。




 強化動物の楽園と化したオーストラリアでは。生き残らされたアボリジニが、上陸した日本の偵察兵と接触。アボリジニを通訳に、強化動物との間で停戦交渉が始まった。

 人間と強化動物の価値観の違いと、途中で連合国と同盟も交渉のテーブルに乱入したことから停戦交渉は長引くも。1961年5月2日、人類はオーストラリアの強化動物と停戦。以後オーストラリアは強化動物の国として、ダンジョン管理に協力していくこととなった。




 オーストラリアでの停戦を受けて、アメリカとカナダはロッキー山脈の熊軍団と交渉を開始。

 先んじてカナダの外交官が熊軍団に英語を教えていたことから、交渉は順調に進み。1961年7月19日、ロッキー山脈の熊軍団は、アメリカ・カナダそれぞれのロッキー山脈に自治州を獲得しつつ、両国の国民となった。




 一方のアフリカでは、強化動物の闘争と部族間戦争が同時平行で起こっていたため。北から同盟が南下、南からイギリス・南アフリカそしてオーストラリアから解放された日本軍が北上。調略出来る勢力以外は人も動物も区別なく殲滅していく方針が取られた。

 人間は割と素直に降伏したものの。強化動物は中々降伏したり懐柔されたりせず、その多くが戦死することとなった。

 調略に時間が取られ低インフラに足が取られたため、アフリカでの戦争は長引き。1964年7月19日、アフリカ全土が平定され。ようやく凶獣大戦は終わった。

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― 新着の感想 ―
被害が広範囲かつ大規模ですね。蚊とかハエが強化されたらダンジョンで強化されていない旧来の人類は滅びるんじゃなかろうか
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