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第21話ー旅立ち・下

「それでは、僕は国連平和維持部隊の一員として、赴くことになる。連絡がつかなくなるけど、そう心配するな。前世みたいなことにならないように、努めるから」

 僕は、できる限り、彼女達に軽く言った。

 自分でも、そう簡単な事と思っているわけではないが、彼女達の気を少しでも軽くしないと。


「必ず生きて還って来て。前世のような嘆きを私に味あわせないで」

 澪が涙をこぼしながら言って、思わず僕にすがりついてきた。

 鈴や愛、ジャンヌも目に涙を湛えている。


「それでは、海兵隊士官への招集と、それと国連平和維持部隊の一員として、海外派遣されることを、君には受諾してもらおうか」

 あの会合の時の土方伯爵の提案に、僕は一時、呆然としたが、すぐに頭をフル回転させた。


 確かにそれがベストだろう。

 国連平和維持部隊の隊員の氏名等、個人情報をネットで公開するのは法律で禁止され、懲役刑を含む刑罰が科されている。

 なぜなら、国連平和維持部隊の隊員は、テロの標的に実際になるからだ(日本国内で巻き添えを含めるならば、それなりの死傷者がこれまでに出ている。それで、テロに屈するな、という声が日本国内で高まり、ますます国連の平和維持活動に、日本がのめり込んでいるのは、本当に皮肉な話だ。)。

 僕が、国連平和維持部隊の一員になれば、ネット上から僕の氏名等の個人情報は公開禁止になる。

 プロバイダー等は、僕の氏名等、個人情報を削除するしかない。

 このネット騒動を鎮静させる最善の手段に、僕にも思えてきた。


 それに、僕の関係者と言うことにすれば、彼女達4人の個人情報もネットから消されることになる。

 彼女達のネット情報をもみ消すのに、最善の手段になるだろう。


「分かりました。それを受諾します」

 前世で、戦死したために、彼女達に何もできなかったお返しと割り切ろう。

 僕は、そう覚悟を決めて、土方伯爵に返答した。


 彼女達は、衝撃の余り、暫く口が聞けなかった。

 また、僕が戦死するのでは、という恐怖に駆られたのだ。


 そして、あの会合が終わった後、僕は召集令状を受け取り、現役海兵隊士官に任官した。

 更に再訓練を受けている内に、彼女達のフランスでの留学先、更に日取りが決まった。

 それを受けて、僕は外出許可を取って、彼女達を空港に見送りに来たということになる。


「これを渡しておくわ」

 いよいよ、澪が決意を固めたようで、「武運長久」の御守りを、僕に渡した。

「あれが入っている」

 澪は、更に囁いた。

 あれね、本当に古風な御守りだ。


 続けて、鈴や愛も、同様に御守りを僕に渡した。

 鈴や愛の目を見る限り、澪と同様の願掛けをしてくれているようだ。

 まあ、ジャンヌには分からない事だろうが。


「はい」

 その後、ジャンヌが、しれっと御守りを出した。

「ちゃんと入れたから」


「ちょっと待ちなさい。何であなたが知っているの。それにカトリックのあなたがしていいの」

 それを見た澪が、半ば叫んだ。

 ほかの2人も驚いている。


「最近のネットは便利ね。ちょっと検索を掛けたら、すぐに出て来たわ。それに3人揃って、私を除け者にして。却って目立って、良くわかった」

 ジャンヌが鼻で笑った。

「いや、しかし、ジャンヌはカトリックだろう。本当にいいのか」

 僕も、さすがに疑問を呈した。


「確かに私はカトリックよ。でもね、それより前に人間なの。それに余りこだわるならば、前世の記憶がある時点で、私はカトリック失格よ」

「確かにな」

 ジャンヌの弁解に、僕は納得した。

 カトリックは、生まれ変わりを認めていない。

 それなのに、ジャンヌは前世の記憶がある。

 カトリックに反する存在だ。


「生きて還ってね」

 いよいよ旅立ちの時が迫ると、彼女達は口々に言った。

 僕は今度は生きて還る。 

 ちょっと話が前後しますが、次話以降の3話は、会合が終わった直後に、主人公達5人だけで会話するシーンになります。

 その後、エピローグです。


 なお、作中に出てくる、「あれ」ですが、ちょっと具体名は書きづらいので、こういう描写で勘弁してください。

 ネットでググれば、割合、簡単に見つかるとは思います。


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