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母
成人を迎えようとも
社会人になろうとも
結婚しようとも
親になろうとも
母は、いつまでも母だ。
握られていた手を解き、
自分の足で、自分の力で、
生きている気になっていた。
けれどそれは、きっとまやかし。
いつだって母は、
静かにそっと見守っていてくれた。
私はいつまでも経っても、
あなたの子ども。
分かっていたはずなのに、
当たり前のことなのに、
見えなくなっていた事実。
私が生まれる前からずっと、
父は私の父で、母は私の母。
幼い頃はそれが当然だと思っていた。
そうして自分も同じ立場になって、
初めて分かった事もある。
母となった私もまた、
惜しみない愛情を注ぎ、
我が子を見守り続けている。
命も、想いも、
こうして紡がれてゆくのだろう。
角掛みなみ様が展開されている「サカイメの書架」。
三月の応募作品です。





