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午前零時のその場所で
こたつへ入りながら、
ふたりでぼんやりと歌合戦を眺める。
最近は、顔も知らない若手が増えた。
なんだか、時代からどんどん
取り残されているような寂しさがする。
会社には居場所があるけれど、
そこを一歩出た僕は、
住所不定という肩書きが相応しい。
そんなことを思いながら、
ふと目を向けた時計。
普段なら大して気にも留めないけれど、
この日だけは妙に意識してしまう。
長針と短針が交わる
午前零時のその場所で、
僕等は何を見るだろう。
いや。実際には何も変わらない。
また君と、
同じように日々を歩むだけ。
守りに入ってしまうこんな僕を、
君は退屈な人だと笑うかな?
昨日までとは違う、新しい場所へ。
その扉を開けるのは、自分自身の力だ。





