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七夕
『織姫と彦星のように、
彼といつまでも仲良くいられますように』
ショッピング・モールの催事場へ設けられた笹。
ご自由にどうぞという短冊を見付け、
彼女は願いを書き上げた。
はにかむ彼女は最高に可愛い。
その心を掴むことができたなら、
これ以上の喜びなんてない。
得意満面な僕。
その舌上を、
聞きかじったばかりの
受け売りの知識が渡った。
「短冊に書く願い事って、
それを叶えることを
織姫に誓うためのものなんだってさ。
つまり恋愛も、神頼みじゃダメなんだよ」
最高の笑顔は途端に消え失せた。
「なに、その揚げ足取り。感じ悪っ」
不機嫌になり、何も言わずに去った僕の織姫。
一年に一度どころか、
二度と会えない存在になってしまうなんて。





