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会えなかった時間、という心の隙間
駅前の街灯の下、
僕を待つ君の唇からは
白い息がゆらめいて見えた。
約束の時間は
過ぎてしまったけれど、
君は待っていてくれた。
「ごめんな」
寒さに震える指先を見て、
不意に手を取った。
「あったかい……」
君の表情がゆっくりと溶け出す。
「待たせたね」
会えなかった時間、
という心の隙間。
そこに堆積していた雪さえ、
音もなく崩れ去る。
涙となって、君の頬を伝う。
「やっと……会えた」
俯きがちに落ちた声が胸に沁みる。
抱きしめたい衝動を必死で抑えた。
「このまま、
氷の像になっちゃうかと思った」
「それならそれで、部屋に飾るよ」
「ばか」
君の笑顔が、
残された雪をすっかり溶かす。
夜の冷たさより、
君の手のぬくもりの方が
ずっと強かった。





