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生き様は顔に
「人の生き様って、顔に出るらしいぜ」
「あぁ。なんか聞いたことあるわ」
同僚の素っ気ない返事を聞きながら、
右手に収まったホットコーヒーを一口含む。
「俺の顔にも、コーヒーみたいな
味わい深さが出てくれねぇかな」
「コンビニで百円だぞ。やっすい顔だな」
「うるせぇ。そういうことじゃねぇんだよ。
俺の顔は高級豆仕様だぞ。
ワンコインと一緒にすんな」
「三十円くらい高くなって、
カップが違うだけだけどな」
同僚は声を上げて笑うと、
空しさを吐き出すように溜め息をついた。
「安い給料に安い顔。良いとこなしだよな」
「大人ってさ、もっとかっこいいもんだと思ってたよ。
でもさ、まだ遅くないよな。
人生の終わりには、立派な顔でいたいんだ」





