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秋の夜長に、どうやら僕は
「あなたって、いつもそうだよね」
僕の腕の中、
月明かりに照らされた君は、
柔らかな笑みを浮かべている。
肩の揺れが伝わって、
僕の心の内までも震わせる。
ひどく不安定な気持ちにさせる。
「そうなのかな?」
「そうだよ。気付いてないの」
「全然気付いてなかった。君がそう言うなら間違いないだろうね」
「うむ。素直でよろしい」
兎のように白い肌を晒した君は、
跳ねる勢いで抱きついてきた。
「僕以上に、僕について詳しいなんてね」
「そうよ。私の目標は、いつかあなたの説明書を作ることなんだから」
君のことをもっと知りたいと思っているのに、
僕は僕のことすら気付けずにいる。
秋の長夜。
どうやら僕は、心の迷宮へ入り込んでしまったようだ。





