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試されている
深夜のオフィスに、
パソコンのキーを打つ音が規則的に響いている。
時刻は間もなく零時。
今日も午前様だ。
プレゼンの資料を整えた俺は、
深く息を吐いて缶コーヒーを煽った。
勝ち組は自宅や居酒屋で酒を煽っているだろう。
ひょっとしたら、既に夢の中かもしれない。
「毎日毎日~、僕らはデスクの~、
上に縛られ~、嫌になっちゃうよ~」
無駄に上手い同僚の歌声が響く。
「その曲、今の若い奴らは知らないだろ」
「こんな日々がいつまで続くのかね?
あと何十年?」
「俺たちは前世で、
よっぽど悪いことをしたんだろうな。
その報いだろ」
「やめてくれよ。
こうは考えられないか?
俺たちは世界に試されている、って」
こいつを初めてかっこいいと思った。





