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足跡
パソコンの電源が落ちる。
夢から覚めるように、
即座に現実へ引き戻された。
ブラックアウトした画面へ
自分の顔が映り込み、
思わず深い溜め息が漏れる。
SNSの世界から
あの人が消えた。
季節が移り変わってゆくように、
何気ない余韻だけを
ほのかに残して。
電子の世界で繋がっていた僕等だ。
そこに感触や香りは存在しない。
けれど、あなたがここに
存在していたという足跡は
確かに刻まれている。
あなたが残した言葉の数々は
確かな温もりを伝えてくれる。
「そんな簡単なことじゃないんだ」
僕等を表す記号を消すだけの
単純な話じゃない。
ひとつの命が失われた時の
喪失感が確かにある。
「いつかまた……」
街で偶然すれ違うように
いつかまたどこかで。





