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第二十九話 作戦会議 光一郎と碧 その1

 ベッド端に腰かけている碧を置いて、俺は部屋を出てゆこうと扉に向かう。


「どこへゆくの?」


 碧がたしなめる様な言葉をかけてきた。


「一階のソファで寝るんだが」


「なぜ?」


「思春期の男女が同じ部屋は流石にまずいだろ、色々と」


「そうかしら? 恵梨香さんたちが夜、私たちのこと確認しに来るかもしれないわ。一緒にいないと疑われるかもしれないわね」


「……むぅ」


 俺は唸った。確かに恵梨香たちの前で軽いキスまでして嫌われようとした手前がある。碧から離れて一人で毛布にくるまっていたら、碧と俺の関係ってどうなの? と疑われても仕方がない。


「一緒の部屋で寝れば、恵梨香さんたちの疑念も膨らむというものよ」


「疑念……って……?」


「私たちが、キスより一歩先の、男と女のすることをしているんじゃないかという疑心暗鬼」


「それは……確かにそうなんだが……」


「そこまでされたら、女ならば卯月君を見限ると思うけど」


「そう……だな……」


「包丁もって突撃してくる可能性も無きにしも非ず、だけど」


「それは……マジ可能性があって怖いから口にしないでくれ!」


 ビビった俺に対して、碧が可笑しいという表情を浮かべた。


「危ないのは卯月君よりも私の方なのよ。女は、同じ女には容赦がないから」


「そうなのか!?」


 俺は「すまない」と碧に謝った。俺が直情的な恵梨香に刺されることは念頭にあった。しかし碧にその矛先が向かうという事態は想定していなかったのだ。


 碧と一緒にこのゲームを攻略しようと決意した。その碧に手助けをされて助かってもいる。でも、碧を危険に晒しているという意識は希薄だった。


 もっと言うと、碧の僅かな一言で、自分の事、自分の身の事しか考えていなかったと思い知らされる。


「申し訳ない」


 もう一度、今度は頭を下げて謝った。


 すると碧は、まったく気にしていないという清涼な様子でこうのたまわってきたのだ。


「なら、お詫びとして一緒のベッドで添い寝してもらわないと、ね」


「!!」


 俺は碧の下命に、内心、ビクリと震えた。


 一緒の布団で寝ることは想定していない。恵梨香はいないので演技の意味はない。俺は床に布団を敷いて寝るつもりでいたのし、碧も流石にそのつもりだろうと思っていた。


 わからない。


 この水瀬碧という女性が何を考えているのかが全くわからない。


 恵梨香やエミリちゃんの方が遥かにわかりやすいくらいなのだ。


「マジで同じベッドで寝るのか!」


「そう。私、小さいころから一人だと眠れないの」


「そう……なのか……」


「嘘よ。そんなわけないでしょう」


 悪女、あるいは小悪魔の様に、俺の心をかき乱す碧。


 俺も最後の抵抗を見せる。


「俺も人間だから、性欲はある。無茶はしないつもりだが……自分の理性はそれほど信じてない」


「キスまでしておいていまさら?」


「あれは、謀略……だろ?」


「しても……いいわよ」


「いいって……そんな簡単に……。よくないだろ」


「そうね。私が一方的に慰めてもらいたいだけのことだから、正しい男女関係じゃないわね」


 碧の言った言葉は理解できなかった。


「流されなかったとしても、ゆっくり眠れそうにないな……」


 つぶやきが部屋に流れ……


 そのまま電気を消して、二人して同じ布団に入ったのだった。

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