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第十八話 幼馴染×一目惚れ その2

「エミリはね、恵梨香ちゃんの生徒会選挙の立候補の時に初めて光一郎君を見たの」


 うんうん、と今度は恵梨香がエミリを促す。


「恵梨香ちゃんが高一の時、立候補したよね。その応援演説が光一郎君だった」


「そうね。光一郎は応援演説者としては頼りなかったんだけど、私が当選したあかつきには副会長に任命するつもりだったから躊躇はなかったわ」


 たしかに恵梨香の押しというか命令に敗れて応援演説をした。


 何をしゃべったかは全く覚えていない。


「その時の光一郎君がおろおろと、でも一生懸命応援演説しているのが可愛くて、キュンってきちゃって一目惚れ(は~と)」


 エミリがきゃんと跳ねて、うれしはずかしといった気持ちを表現する。


「そうなのね。エミリは一目惚れなのね」


「そうなの。なんか可愛い子犬みたいで、きゅんきゅんくるの。だから本当は運命のパートナーになりたいってゆーより、ちゅっちゅしたくて」


「エミリ、外見は可憐だけど、実は物凄く欲望に忠実よね」


「うん。だからエミリは最終手段は確保してるんだけど、光一郎君の二号さんとか愛人とか……もっと言うとセフレでも満足できると思う。光一郎君が誰かのパートナーに決まっちゃって、その人専用になるのが困るって感じ」


「そうなのね。エミリくらいならいくらでもイイ人選び放題だろうけど、ダメなの?」


「うーん。悪くない人なら一杯いるんだけど、ビビッてきたのは光一郎君だけかな?」


「むぅ」


 恵梨香が唸る。


「エミリも人並みには乙女だから、初めては王子様がいいなぁなんて思うわけ。そんでもって、王子様の愛人の一人になれたらいつでも愛してもらえるかなーなんて」


「光一郎、全然カッコよくないのに?」


「ええ~。光一郎君、すごくきゅんきゅんくるよ。エミリくらい我慢強くないと、襲っちゃってるかも?」


「べた惚れですな、エミリさん」


「そういう恵梨香ちゃんもね」


 二人して視線を交わして笑みを漏らす。


 そののち、恵梨香は少し黙って考える様子。


「私は我が強いから、光一郎を独占できないと嫌だわ。エミリになら貸し出しても……と思ったけど、やっぱりダメ!」


「ぶーぶー」


「光一郎は私専用。私の初めても光一郎で、光一郎の初めても私で。それからずっとずっと唯一無二のパートナーよ」


「エミリにも光一郎君、シェアさせてほしいです。光一郎君はどう?」


 聞いているだけだった俺にいきなり話を振られて、ぎょっとした。


 何と答えてよいのかわからない。


 正解はどれだ、と幾つかの選択肢をあわてて脳内で吟味し始める。


「エミリと恵梨香ちゃん。真っ新な女の子を二人とも独り占めできるんですよ~。男の子としては最高のご褒美じゃないですか~?」


 混乱に拍車がかかる俺を、エミリが無慈悲に責め立ててくる。


「光一郎君がエミリと恵梨香ちゃん、二人の旦那様になってくれるのなら、切り札とか最終手段とか使う必要がないです。どうですか? 正妻が恵梨香ちゃんで、愛人がエミリですー。両手に花ですよー」


 なんとなく助け舟を期待して恵梨香をちらと見やる。


 しかし助けなどではなく、ジロリとした、二股している俺を非難する強力な目線が返ってきた。


 エミリには答えられず、そのまままた三人で注視の主となる学園の門をくぐったのだった。

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