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第十一話 廊下で二人に挟まれる

 俺は二人に挟まれて廊下を進む。


 昼休みになったばかりの時間帯で、校舎内には生徒たちの姿が多い。


 その生徒たちが皆、俺たち三人に注目している。


 ある男子生徒たちはじっと何も言わずに凝視して。


 またある女子グループは俺たちを指さしながら何か秘密の会話をささやく様子で。


 昨日の朝、クラス内で恵梨香とエミリちゃんに接触したため噂が広がり、俺たち三人はいきなり時の人になったからだ。


 いや、恵梨香とエミリちゃんは以前から有名人なのだが、そこに俺が加わって悪目立ちするようになってしまったのだ。


 俺は両脇に恵梨香とエミリちゃんの二人を伴い、サンドイッチされる形で進む。


 両手に花。


 その花も学園の二大美花だ。


 通常なら年頃の男子としては夢にまで見るシチュエーション。


 だが少しも嬉しくないのはなぜだろう。


 なにか、虎とライオンがいる檻の中に閉じ込められたような感覚。


 ――と、


「ふふっ。光一郎」


 恵梨香が腕を絡めてきた。


 恵梨香の柔らかい胸が当たって、サラサラロングの黒髪からはシャンプーの甘い香りが漂ってくる。


「えへっ。光一郎君」


 エミリがニコニコ顔のまま対抗して反対側の腕を取った。


 エミリの胸は大きくはないが、その身をぎゅっと俺に押し付けてきて、女の子の弾力を感じる。


 これは……


 嬉しくなかったのだが、ちょっと、いや、かなり興奮する……かも……しれない。


 二人との生徒会での付き合いは一年にも及び、昨日からかなり過激な言動を交わしてはいるのだが、身体的な接触は多くはない。


 だから二人に絡みつかれて、その女の子の柔らかい弾力を感じさせられているのは、かなり、かなり俺の男の本能を刺激する。


 うわ。これは……マジ、ドキドキして興奮する。


 周囲の生徒たちも、恵梨香とエミリちゃんの挙動に波打つようだ。


 それもそうだろう。学園の三大美少女として、カースト上位のイケメンですらひれ伏していた二人が、俺に媚びを売っている様に縋り付いているのだ。


 男として頂点に立っているという征服感に酔いしれてもよい場面なのだ。


 だがしかし!


 俺は本来、穏やかな平穏を愛する一般生徒に過ぎない。


 そりゃあ思春期の男子だから女の子に興味がないわけではないし、いくら安寧を好むとは言っても若い欲求にはかなわない。


 そういう画像や動画を見て一人ですることはしていたりもするのだが、この状況はそれとはまた別次元の話。


 今は恵梨香とエミリちゃんに脅されて、彼氏彼女としてのお試し期間を過ごしている最中。


 決して恵まれた状況ではないのだという理解が俺の本能の邪魔をする。


 いや、望んでないと言ったが、俺は別に二人を嫌っているわけではない。


 いきなり恋人関係から一生のパートナーというのが飛躍しすぎているだけで、一緒に生徒会の活動を共にしてきた学園でも親しい女の子たち。感謝もある。


 かてて加えて周囲の目というか、二人を無下にしたとあっては、まず確実にこの学園で排除されるだろうという計算もしてしまう。残念ながら。


 今までの様な学園三大美少女の周りを飛び回っているハエ扱い、無視、ほったらかしではなくて、マジの虐め、迫害。


 流石にそれは勘弁してほしいという思いもあって、恵梨香とエミリちゃんを振り払わないし振り払えない。


 もちろん、二人と仲良くして出方を見るという戦略を俺が選んだのが第一の理由なのだが。


 俺を挟んで不穏な空気を醸し出している恵梨香とエミリちゃんを伴って、胸中でため息を吐きながら厚生棟のカフェテリアを目指すのであった。

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