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あの頃の延長線

「最近のあいつらを見てると、あの頃の二人にますます似てきたなって思うよ」

「フフッ。そうね、二人を見ていると、つい、あの頃を思い出しちゃうよね」

心理資料室と書かれた部屋で、吹雪の担任でもある春宮忍とリオは棚に並ぶ書籍や書類の整理をしながら話す。

心理資料室の隣は学生相談室になっており、『本日閉室』の札がかかっている。

午後、すでに生徒たちは今日の予定を終えて自由に過ごしている時間。

学園におけるコーディネーターの役割も担っている忍は、自然とこの部屋への出入りが多くなる。

結果、かつての片思い相手でもあるリオとの関わりも自ずと増えるわけで、少なからず複雑な気持ちもあるわけで…。

「なんの因果かねぇ…」

苦笑気味につぶやく忍に、リオはクスクスと笑みをこぼす。

「陸斗とレオが、その内また飲みに行こうっていってたよ」

「あいつら、そんな時間あるのかよ。俺と違って、定時であがれることなんて滅多にないだろ」

親友達も自分も、『先生』と呼ばれる立場になり、こうして今なお関係性が続いているとは、この学園に生徒として通っていた頃には思いもしなかった。

「忍君だって、忙しいのは同じじゃない。…あ、学園では春宮先生だったね」

「二人の時は構わないだろ。ハルなんて堂々と『忍ちゃん』呼ばわりだからな」

「小さい時から遊んでもらってたから、あの二人にとっては『先生』よりも『父親の友人』って感覚が強いのね」

忍自身も親友の子どもたちの成長を身近で見守ることができたことは嬉しい事でもある。

けれど、それも今年が最後。

そう思うと、色々と感慨深いものがある。

自分たちも同じように青春時代を過ごしこの学園を巣立ち、今こうして大人になって感じる事。

「少し寂しいよね」

そういって優しく笑うリオに、忍は思わず作業していた手を止めてリオに視線を向ける。

そして、自分が学園の生徒として共に過ごしていた頃を思い出す。

「やっぱりすごいな」

忍はふと笑みをこぼした。

人の心の動きに敏感で、言葉にしきれない想いをそっとくみ取ってくれる。

それはあの頃と変わらず、むしろ磨きがかかった部分かもしれない。

人には得手不得手、向き不向きがある。

『俺が教師に向いているか。そんなことはわからない。そもそも俺が決める事でもない。でもリオは、きっと…』

「忍君?」

心配そうに見上げてくるリオに、忍はあの頃の思い出を重ねていた。

「いや、リオは変わらないな、と思ってさ」

「それ、ほめてる?」

「あ、当たり前だろ!」

慌てる忍と楽しそうに笑うリオ。

時間は等しく流れていく。

その中で変わるものと変わらないものがあるとすれば、忍にとってのリオへの気持ちはどちらなのか。

それは結論の出ないものかもしれない。

窓から見える外の景色には、今年も桜色が広がっていた。

子どもだったあの頃と、大人になった今。

窓から入る春風を感じながら、リオと忍は大切な人たちの未来に思いを馳せるのだった。


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