ローザネーラの力
TSロリっていいよね
TSロリっていいよね
TSロリっていいよね
はい、どうも作者です。
バトル描写というか、詠唱かけて楽しかった(小並感)
ではでは、本編どうぞー。
「とてもたのしそうね、ますたー……」
そんな言葉とは裏腹に、ローザネーラが浮かべている表情は多分に呆れが含まれたものだった。
大鎌を振り回し、魔法を放ち、凶暴化した魔物の群れを寄せ付けず、ヘイトを一身に買って出ているヴェンデッタは、遠目で見ても分かるくらい喜色に塗れた笑顔を浮かべている。
『ますたーのへんなところがでちゃってるわね』と肩を竦めながら、ローザネーラは小さく息を吸った。
そして、目を強く見開き、主に贈られた杖を握りしめる。
「――――『湧き上がれ、湧き上がれ、生命の源よ。溢れる真紅で喉を潤す』」
詠唱、開始。
ローザネーラの足元に真紅の魔法陣が浮かび上がり、荒れ狂う魔力で彼女の髪がふわりと浮かび上がった。
魔力の奔流に晒されながら、ローザネーラはおもむろに己の親指を口元に運ぶと、指の腹を噛みきる。
紅で彩られた白い指をそっと伸ばし、魔法陣の上で掲げた。
血が一滴、真紅の雫となって魔法陣に落ちる。
「【氾濫増血】」
魔法が発動し、魔法陣から鮮やかな紅が湧き上がった。
それは、増幅されたローザネーラの血液だった。吸血鬼の魔力が込められた魔血が、ローザネーラに付き従う様に宙を舞う。
《血魔術》第一魔法――【氾濫増血】。
魔血を増幅する。ただそれだけの魔法。
吸血鬼の固有魔法である《血魔術》の大本である魔法であり――真紅の地獄の幕開けを告げる魔法。
人何人分になるか見当もつかない真紅の液体を周囲に展開したローザネーラは、魔物に囲まれた主に向かって声を張り上げた。
「ますたー! いけるわ! あいずをしたらとんで!」
「オラ、くたばれッ! ――分かった! ぶちかましてやれ、ローザネーラ!」
魔物に飛び掛かられながらもローザネーラの声をしっかりと聞いていたヴェンデッタは、襲い掛かってきた魔物を斬り捨てながら、力強く返事をする。
そんな主の行動にちょっと引いた顔をするローザネーラだが、すぐに表情を引き締めて、杖を握りしめる手に力を入れる。
魔力を高め、戦意を高め――詠唱、開始。
「『湧き立つ紅に沈む咎人。鮮やかな地獄に響く怨嗟と苦痛の声。嗚呼、甘美なるかな地獄の景色。鏡に映った汝の罪の数だけその身を穿ち貫かれよ』」
詠唱が進むごとに、ローザネーラの周囲に展開された魔血が蠢き、地面に広がっていく。
大地を浸食するように、世界を蝕むように、現世と地獄が反転するように。
魔物たちの足元に、真紅の死が忍び寄っていく。
「ますたー! とんで!」
ローザネーラの声に、ヴェンデッタは返事をせず行動に移した。
近づいてきていた数体の魔物を【ローテーション・サイス】で振り払い、出来た隙を突いて背中の翼を広げる。
そして、【飛行】を発動して空へと一気に上昇した。
魔物の視線が空のヴェンデッタに集まった瞬間、彼女はローザネーラを見ながら立てた親指で自分の首を掻っ切るジェスチャーをして見せた。
無言で示された『殺れ』の合図に、ローザネーラは魔法の発動を――最後の鍵言を高らかに謳い上げる。
「さぁ、しになさい――――【血池地獄】!」
魔物たちがようやく足元の異変に気付くが、時すでに遅し。
――――ザシュッ!
「ッ!? ガァアアアアアアアアアアアアア!!?」
一頭の魔物の足元から、鋭い先端を持つ真紅の杭が現れ、腹部を深々と貫いた。
それを合図に、次々と生み出される杭が魔物に突き刺さっていく。
《血魔術》第二魔法――【血池地獄】。
敵の足元に展開した血の池から、真紅の杭を生み出し、範囲内の敵を攻撃する魔法。
展開された血の池には敵の敏捷を奪う効果があり、一度捕らわれてしまえば貫かれることを回避するのは難しい。
響く断末魔に、魔物は逃げ出そうとするが、血の池に足を絡め取られてそれは叶わない。
真紅の池から飛び出る無数の棘が、森のように乱立し、魔物たちの命を奪い去ってしまう。
やがて、三桁を優に超える杭が生み出された後には……動いている魔物は、一頭も存在しなかった。
・えっっっぐ
・軽くホラーなんですがww
・範囲と威力ヤバくない?
・一応、最初に使った魔法ありきみたいだし、妥当なのか?
・上空って逃げ場もあるから、まぁ……
・マスターがマスターなら、召喚獣も召喚獣か
「うーん、いいけしきね! いっぱいちがながれて、あふれて。すてきだわ!」
そんな地獄のような光景を生み出したローザネーラは、とてもご機嫌な様子で胸を張る。
もたらした結果に似付かわしくない華のような笑顔。
鼻唄を歌い出しそうな様子で身体を揺らし、つま先で地面を軽く叩く。
ローザネーラは完全に、勝利に酔いしれていた。
「これをみれば、ますたーもすこしはワタシのすごさがわかるんじゃないかしら? しんそにして【こうけつ】たるワタシをあまくみすぎなのよ、ますたーは」
弾むような声で主への不満を口にしながら、ローザネーラは視線を上空に向け――
「はえ?」
――――大鎌を構えながら、高速でこちらに突っ込んでくるヴェンデッタの姿を瞳に納めた。
思わず口から洩れる間抜けた声。
目を見開き、きょとんと首を傾げ――すぐに、ヴェンデッタの進路上に、自分の身体があることに気付く。
ローザネーラの脳裏に、流星のように落下してくるヴェンデッタが自分の首を刈る光景が、ありありと浮かんだ。
「は? え!? ますたー!? なんで、えぇ!? ぶ、ぶつかるぅ!?」
わたわたと両手を振り回し、何とかヴェンデッタを止めようとするローザネーラ。
だが、風でたなびくフードの奥に見えるヴェンデッタの鋭い視線は一切変わらず、また飛行速度も一切落ちることがない。
「ひゃ、ひゃああっ!? な、なまいきなことをいったのはあやまるわよ! だから、とまってぇ! しんじゃう! しんじゃうからぁ!?」
そんな言葉もヴェンデッタの耳には届いていないのか、止まるどころかますます加速する。
彼我の距離はみるみる縮まっていき、衝突までの時間が飛ぶように流れていき――。
「ひゃっ、ひゃぁあああああああああああああああ!!?」
「――――【ザッパー】!」
ローザネーラが悲鳴を上げながらしゃがみ込むと同時に、彼女の傍を通り過ぎたヴェンデッタが大鎌を振るう。
斬撃、一閃。
落下の速度を乗せた横薙ぎの一撃は、ローザネーラの背後に迫っていた人獣型の魔物の首を飛ばした。
「グッ、ガァ……!?」
「ハッ、やらせるかよ――俺の相棒に手ェ出してんじゃねぇぞ」
大鎌を振り切った体勢で、ヴェンデッタが吐き捨てるように呟く。
今まさに、ローザネーラへと鋭い爪を振り下ろさんとしていた魔物は、瞼が裂けそうなくらい目を見開いた頭部を地面に転がし、赤い粒子となって消えていった。
《経験値が規定値に達しました。プレイヤー:ヴェンデッタの種族レベルが上がりました》
《経験値が規定値に達しました。プレイヤー:ヴェンデッタの職業レベルが上がりました》
《種族レベルが一定に達しました。進化が可能です》
《職業レベルが一定に達しました。上位職への転職が可能です》
《三次職業が解放されました》
《スキル《大鎌》のレベルが上がりました》
《スキル《ポールウェポン》のレベルが上がりました》
《スキル《召喚術》のレベルが上がりました》
《スキル《闇術》のレベルが上がりました》
《スキル《時空術》のレベルが上がりました》
《スキル《火術》のレベルが上がりました》
《スキル《雷術》のレベルが上がりました》
《スキル《ファストステップ》のレベルが上がりました》
《スキル《受け流し》のレベルが上がりました》
《スキル《回避》のレベルが上がりました》
《スキル《首狩り》のレベルが上がりました》
《スキル《連撃》のレベルが上がりました》
《スキル《生命活性》のレベルが上がりました》
《スキル《魔力活性》のレベルが上がりました》
《スキル《敏捷活性》のレベルが上がりました》
《スキル《魔纏装》を習得しました》
《スキル《挑発》を習得しました》
《プレイヤー:ヴェンデッタはアイテム『触媒札【レッドハードウルフ】を入手しました》
《プレイヤー:ヴェンデッタはアイテム『触媒札【コボルト・ソーサラー】を入手しました》
「あ……ふえぇ……?」
響き渡る、勝利を告げるアナウンス。
それを聞きつつ、自分が襲われ掛けていたことにようやく気付いたローザネーラは、ぺたんと崩れ落ちるように座り込んだ。
割座でぼーっと呆けているローザネーラの頭に、ぽんっと何かが置かれる。
「ひゃあっ! って、ますたー……?」
「おう、間一髪だったな、ローザネーラ」
ぴくん、と肩を震わせたローザネーラが振り向けば、大鎌を肩に担いだヴェンデッタが、フードの下で快活に笑って見せる。
目を細め、パチンとウインクまでして見せるヴェンデッタ。
ローザネーラはきっと視線を鋭くし、頭をブンブンと振って置かれた手を振り払った。
「お、おどろかさないでくれる!? ますたーがとちくるってワタシのくびをとりにきたのかもって、すっごくびっくりしたんだからねっ!?」
「そんなことするわけないだろうに……。まぁ、何も言わなかったのは悪かったよ。かなりギリギリだったから、言う余裕が無かったんだ。マジであと数メートルってところに魔物がいたからなぁ」
俺だってビックリしたんだぞ? とヴェンデッタが肩を竦めながら言えば、助けられたローザネーラは何も言えなくなる。
「うぅ~~~~~っ」
それでも、ふくれっ面になって涙のにじんだ瞳で睨んでくるローザネーラに、ヴェンデッタは苦笑を浮かべた。
「驚かせたのは悪かったって……。俺だって焦ってたんだぞ? 約束を破っちゃうかもって」
「……やくそく?」
不満顔のまま小首を傾げたローザネーラに、ヴェンデッタはクスリと笑って見せた。
振り払われた手をもう一度ローザネーラの頭に乗せ、ヴェンデッタはしゃがみ込んで小さな召喚獣と視線を合わせる。
「言っただろ? 俺がローザネーラを守るって」
囁かれるようなヴェンデッタの声に、ローザネーラは一気に頬を上気させた。
――――俺の相棒に手ェ出してんじゃねぇぞ。
刹那、脳裏に過るヴェンデッタの声。
怒りや苛立ちは吹っ飛び、羞恥で心が満たされる。
「……ッ! ふ、ふんっ! と、とうぜんよっ! いったことくらいまもってもらわないと、こまるもの! これからもちゃんとまもってくれないと、ゆるさないんだからねっ!」
「当然だろ? ローザネーラは傷つけさせないよ」
「~~~~~~~~~~っ!!」
さらりと告げられたヴェンデッタの言葉に、ローザネーラは首まで赤くなる。
そんなローザネーラの様子に首を傾げつつ、まぁいいかとヴェンデッタは彼女の頭を撫で続けるのだった。
・信じられるか? 魔物を殲滅した直後なんだぜ?
・血生臭さが甘さで上書きされた瞬間
・肝を冷やすのと尊みの落差で風邪を引きそう
・感情ぐっちゃぐちゃよ
・相変わらずヴェンデッタちゃんクッソイケメンで草
・メスガキなのにラブコメ主人公属性持ってるの草
ご拝読ありがとうございます。
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次回は進化! ヴェンデッタちゃんが強くなるよ!!
三次職何にするか決めてねぇわ。どうしよう。
ではでは、また次回ー。




