剥製にして並べてやろうか
TSロリっていいよね
TSロリっていいよね
TSロリっていいよね
はい、どうも作者です。
書籍化おめでとう感想、ありがとうございます!
これからも頑張って書いていきます。
ではでは、本編へどうぞー。
『餓鬼獣の赤荒野』はその名の通り、獣系の魔物が多く生息しているフィールドだ。
彼らは素早く、狡猾。虎視眈々とこちらの隙を狙い、獲物が油断した瞬間に牙を剥く。
ごつごつした岩の陰から、いつ敵が出てくるかわからない。
探索する時は、神経をすり減らしながら進むしかないのだ。
なので。
「使用すると周囲の魔物を引き寄せる『魔物寄せの香』を使えば、そんな面倒なことせずとも敵と戦えるってわけだ」
「なるほど、ますたーはあたまがおかしいのね」
「なんで!?」
・当たり前なんだよなぁ
・こら、そんなのしまっておきなさい!
・お手軽自殺アイテム使わないでくれる?
・このフィールド、結構数で攻めてくるタイプだから、撒き餌なんて使ったらマジで地獄だぞ?
・めっちゃいい笑顔でめっちゃ無茶いうやん
・ローザネーラちゃん、超いい笑顔で草なんよ
襲い掛かってきた狼の群れを撃退した俺たちは、改めてこのフィールドでの戦い方を決めようとした。
俺が事前に下調べをし、配信前に用意をした渾身の策だったんだけど、バッサリ切り捨てられてしまった。
コメントでもボロクソに言われてる……うーん、いい手段だと思ったんだけどなぁ。
「なんでよ。ひかえめにいってもものすごくたいへんなことになるにきまってるじゃない」
「大変って言っても、レベル的には適正の魔物がいっぱい出てくるくらいだろう? なら、いけるって。大丈夫大丈夫」
「こんきょのないじしんね……まぁ、ますたーならなんとかしちゃうきもするけど……」
・あり得ないって言いきれないのがなぁ
・戦闘力はガチだし
・大鎌なんているネタ武器使っといてあの強さは普通に頭おかしいんだよなぁ
・戦い方が上手いよね、ヴェンデッタちゃん
・なんだかんだでヴェンデッタちゃんを信頼しているローザネーラちゃん、尊い
・それな
「それにほら、沢山魔物を倒せば沢山レベルが上がるだろ? そうすれば、ローザネーラだって早く力を取り戻せるかなって」
元の力に早く戻りたいんだろ? と聞けば、返ってくるのは頷きだ。
しぶしぶ、といった感じだったが、それでも否定はしていない。
つまり賛成ってことだな。
いやぁ、せっかく用意した『魔物寄せの香』が無駄にならなくてよかった。
それに、エンカウントした魔物と戦って、また魔物を倒して……じゃ、絵面として面白くない。
配信者なんだし、ちゃんと見栄えとか見どころを考えないとね。
とはいえ、無謀な挑戦をしようってわけじゃない。勝ち目があるからこその提案なのだ。
「この前のレベルアップでローザネーラが使えるようになった魔法があるだろ? 杖を装備して強化された今のローザネーラが使えば、ここの魔物なんて敵じゃないよ」
「……あのまほうは、つかうのにじかんがかかるのだけれど」
「分かってる。それでも大丈夫だ」
ローザネーラに向かってニヤリと微笑み、これ見よがしに首切り君をちらつかせる。
「俺が、ローザネーラを守る。爪のひとかけら、牙の先一つとして、お前に届かせるつもりはないからな。ローザネーラは安心して魔法に集中してくれ」
「…………っ!」
・あらぁ~
・これは殺し文句ですわ
・空気が甘酸っぺ~
・ニヤニヤが止まらん
・メスガキからイケメンになるのズルい
・ローザネーラちゃん顔真っ赤
「……ふんっ、きずひとつでもつけたら、ゆるさないんだからね!」
「仰せのままに。それじゃ、行くぞ?」
赤い顔をしつつ、杖を握りしめるローザネーラに言葉を返しつつ、俺は『魔物寄せの香』を使用するのだった。
さぁ――激しく行こうじゃないか。
◆ ◆ ◆ ◆ ◆
「ハハッ! キリが無いなぁ!」
『餓鬼獣の赤荒野』に、楽しそうな声が響く。
それを発しているのは、漆黒のパーカージャケットの裾を翻し、フードから覗く赤い瞳を爛々と輝かせるヴェンデッタ。
口元に浮かぶは笑み。三日月に裂けたそこから、ちらりと犬歯が覗いている。
彼女は今、無数の魔物に囲まれていた。
『魔物寄せの香』。名前の通り、魔物との遭遇率を大幅に上げるアイテム。
大量の魔物を集めて一気にレベル上げをしたいプレイヤーが一度は試すが、大体はその一回で辞めてしまうという、C2界隈では不人気なアイテムだ。
このアイテムの効果で引き寄せられた魔物には、特殊なバフ《激高》と《凶化》が付与される。
どちらもステータスを底上げし、思考を凶暴化させる効果がある。
怯みや硬直をしなくなるため、単純に魔物が倒しにくくなってしまうのだ。
そのためレベル上げのために大量の魔物を倒したい、という目的で使うには向かず、『魔物寄せの香』を好んで使うのは、MPKを目論むPKプレイヤーか、苦難の中に自分を置きたがる変態――――。
――――そして、苦難への挑戦を取れ高に昇華できる配信者くらいである。
「「「「ギャルルルルルルルルルルルルルッ!!!」」」」
剥き出しの獣性を乗せた叫びと共に、四体の狼がヴェンデッタに飛び掛かる。
赤銅色の毛皮をした狼は、レッドハードウルフ。群れでの連携が恐ろしい荒野の狩人だ。
前後左右から、爪を振り上げ牙を唸らせるレッドハードウルフたちが飛び掛かってくるのを見て、ヴェンデッタは口元の笑みを深める。
「無駄だ――【斥力】!」
「「「「ギャンッ!!?」」」」
ヴェンデッタの柔肌に爪が立てられる――その直前、レッドハードウルフたちは、見えない壁に弾かれるように吹き飛んだ。
《時空術》第二魔法――【斥力】。
自分を中心に全方位へ斥力を発生させ、接近してきた相手を吹き飛ばしたり、攻撃を弾いたりすることが出来る魔法。
攻撃性能は皆無。魔法本体でダメージを与えることは出来ず、吹き飛ばし後に壁や地面に叩き付けられればダメージが入るかどうか、と言ったところ。
しかし、相手の行動を阻害し、自分に有利な状況を創り出すにはもってこいの魔法だ。
そう――今のように。
地面に叩きつけられ、訳も分からず目を白黒させていたレッドハードウルフたちに、ヴェンデッタの反撃が襲い掛かる。
前から攻めてきた個体の首を刎ね、左の個体に大鎌を投げつける。
起き上がろうとしている右の個体に魔法を放ちつつ、最後に残った後ろの個体は戻ってきた大鎌をキャッチし、振りかぶる。
「【ザッパー】!」
切れ味と斬撃の威力を高めるだけの単純な武技が、レッドハードウルフを左右に分けた。
赤い粒子となって消えていく魔物の残骸には目もくれず、ヴェンデッタは次なる獲物に目を光らせる。
レッドハードウルフ以外にも、犬頭のコボルト・ソルジャーやコボルト・ソーサラー、大型のイノシシであるワイルド・ボア。固い甲殻に身を包んだヨロイネズミ。
十や二十ではくだらない数の魔物たちは、一斉にヴェンデッタへと敵意まみれの視線を向ける。
針の筵のような視線の雨に、しかしヴェンデッタは上等とでも言うように笑って見せた。
大鎌をくるりと手の中で回し、背後に引くように構え、体勢を低くする。
それはまるで、獲物に飛び掛かる寸前の肉食獣のようで――――。
「こいよ。剥製にして並べてやろうか、獣ども」
「「「「「ギュアアアアアアアアアアアアアアアアアアアッ!!!!」」」」」
挑発的なヴェンデッタの言葉に、魔物たちは凶暴性を高めながら襲いかかった。
・なんであの数に囲まれて無事なんですか?
・マジでローザネーラちゃんの方に一匹も通してなくて草
・今の吹き飛ばし魔法、対人でも強そうだな
・今のセリフぞくぞく来た。耳元で囁かれたい
・ワイも首を刎ねてほしい
・レベルの高い変態来たな……
ご拝読ありがとうございます。
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この話からバトルが続くかな?
2~3話はバトルで、その後は新キャラ出るかもです!
ではでは、また次回!




