皆月緋音という少女
TSロリっていいよね
TSロリっていいよね
TSロリっていいよね
どうも、作者です。
一か月ぶりの更新です。なんとか一か月に一話はかけてる……。
志が低いですが、このペース以下にならないよう頑張ります。
ではでは、どうぞ。
「んで? 不法侵入までして一体なんの話があるんだ?」
アカちゃんにぬいぐるみ状態でされるがまま、ちょっと声音を低くして聞いてみる。要するに怒ってますアピールである。
NOと言えないダメな日本人である俺の、せめてもの抵抗だ。
これで少しでも、アカちゃんが行動を改めてくれると良いんだけど……。
「……ん。それは勿論、C2のお話」
ふっ、まるで効いてねぇや。
それどころか、ごくごく自然に俺の頭を撫で始める始末。
かいぐりかいぐりと飼い犬にするように頭頂部をぐりぐりされたと思えば、アカちゃんの滑らかな手が、壊れ物を触るように黒色の髪をそっと梳く。
ついでに耳を撫でられたり、頬っぺたをかるく伸ばされたり。いや、好き勝手やり過ぎじゃない???
耳をいじられた時とか、くすぐったさで声が出ちゃってめちゃめちゃ恥ずかしかったんだけど???
うーん、この可愛がられ具合。アカちゃん、中身が年上の男性だと言うことを忘れているんじゃなかろうか?
いやね? アカちゃんってば可愛いし、そんな子に抱きしめられて悪い気はしないよ? 気持ちいいし。
……誤解されそうなので先に言っておくが、女の身体になってからは性欲が酷く減衰している。
そのせいで、アカちゃんの大艦巨砲主義者も納得のお胸に後頭部を埋めている今でも、『あったかーい』とか『いやされるー』としか思っていない。
決して女の身を利用して年下の女の子にセクハラを働くクソ野郎ではないのだ。イイネ?
まぁ、そんなワケで決して悪い気はしないのだが……こう、減るのだ。
俺の中のまだ残っている男の部分。
もう記憶とか精神性とか気の持ちようとかにしか残っていない、オスのエッセンス的なモノがガリガリと削れていくのを感じる。
だ、駄目だ……このままでは身も心も女の子にされてしまう……!
C2で男をかなぐり捨てた姿をしていようが、そこまで墜ちるわけにはいかない……!!
「……くすっ。恵ちゃん可愛い。なでなでされてぴくぴくしてる。きもちー……の?」
アカちゃんが、俺の耳元でゆっくりと呟いた。
至近距離で囁かれたせいで、吐息が耳に――――。
「ひゃあんっ」
…………。
…………え? まって。まってまってまって。
今の、俺の口から出たの?
誰がどう聞いても雌全開の、なんなら若干艶やかですらある媚びに媚びた嬌声が、俺の声?
うわ、うわ、うわぁああああ!
は、恥ずかしい! すっげぇ恥ずかしんだけど!!?
顔が熱い。きっと、いや、絶対に赤くなってる。
なんかもう、顔真っ赤に無様晒してるんだろうなーって、一周回って冷静になってしまうほど、恥ずかしかった。
し、しかも……。
「…………恵ちゃん?」
「……なんでせう」
「……今の声、恵ちゃんが?」
アカちゃんに思いっきり聞かれてるぅうう…………!!
もう、この先の展開が容易に想像できた。
「……………………えいっ」
がばり、とアカちゃんが俺の身体を強く抱きしめた。
アカちゃんの左手が俺の右肩を掴み、アカちゃんの右手は俺のお腹をふんわりと押さえている。
逃れる暇もない早業に、俺はされるがまま。
抵抗しようとしても、肩にアカちゃんの顎が載せられて、首筋を吐息が撫でた。
それだけで、身体からへなへなと力が抜けてしまう。くそ雑魚すぎんか……?
「……ねぇ、恵ちゃん」
「んっ……な、なに……?」
吐息交じりの問いかけに、くすぐったさを我慢しながら言葉を返す。
俺を抱くアカちゃんの腕に、なぜか力が籠った。
肉に指をめり込ませるように、強く、深く。
獲物を逃さないように爪を立てる肉食獣――そんなイメージが、脳裏を過ぎる。
「今、どんな顔してるのか……わたしに、見せて?」
「いやっ……駄目、だ」
顔を覗き込もうとしてくるアカちゃんから逃れるように、ふいっ、と顔を逸らす。
「……どうしても?」
ちょっとだけ低くなったアカちゃんの声が、脳を震わせる。
うん、って言え。そんな声なき声が聞こえてきそうな、強い響き。
だけど、駄目だ。
いま、どんな顔をしているのか。正確にはわからないけど。
誰かに見せていいような顔をしていないのだけは、はっきりとわかる。
この顔を見せてしまったら、ぎりぎりで保っている何かが――壊れてしまう。
だから、絶対にダメ。
熱くて、強くて、ほんの少しだけ怖いけど……これだけは、譲れないんだ。
声が消え、二人の呼気と二人の鼓動だけがやけに大きく聞こえた。
静寂は、多分一瞬で。けれど、嫌に長く続いたように思えたそれは。
「……そう、残念」
アカちゃんのそんな言葉で、あっさりと破られた。
俺を捕える腕が緩み、アカちゃんの顔が離れる。
聞こえていた吐息と鼓動の音が遠ざかり、俺は小さく安堵のため息を漏らした。
胸を撫でおろし、ちょっと視線を下げて――目が合う。
膝に置いたタブレットPC。電源の入っていないその黒い液晶に映る、誰かさんの。
真っ赤で、ふにゃふにゃで、とろんとして、うるんだ瞳をした『女の子』が、俺を見つめていた。
というか、俺だった。
…………~~~~~~~~~~~~~~~~~~~ッ!!!
なんっ……え? は? はぁ!?
見間違い……な、わけない……かぁ…………ははっ。
慌てて顔を引き締めようとする。でも、上手く行かない。
画面の中の誰かさんは一向に『女の子』をやめてくれなかった。
……うん、なんかもう……うん。
恥ずかしくて恥ずかしくて……死にそう。
はぁ……。
さっきまで男の部分がどうのとか言ってたやつの末路か……これが…………?
◆ ◆ ◆ ◆ ◆
わたしの膝の上でがっくりと肩を落としている少女を見る。
逆凪恵。わたしは、恵ちゃんって呼んでる。
さらさらした黒髪に、ぱっちりした瞳。
ぷにぷにのほっぺた。ラフな格好から伸びる白い手足。
何処からどう見ても、可愛い女の子にしか見えない。
でも、つい一か月前くらいまでは、男の人だった。
TS病とかいう冗談みたいな病に罹ってしまった『彼』は、『彼女』になってしまった。
まるで魔法か――質の悪い夢のように。
まぁ、わたし的にはわりかし福夢だったりするんだけど。
恵ちゃんは、可愛い。
男の時から、ちょっとあざといところがあったけど、女の子になってからは容赦が無くなっている。
色々と混乱することもあったけど、恵ちゃんの可愛さの前には割とどーでもいーかな、ってなる。
ほら、今だって。
抱き付かれてちょっと赤くなってるのが可愛い。
抵抗せずに膝に乗ってくれる無警戒なところが可愛い。
ちょっと怒って見せて、年上の威厳を保とうとしているのが可愛い。
撫でられて、無意識に目を細めちゃうところが可愛い。
耳を撫でたときの『んっ……』って押し殺したような声が可愛い。
耳が弱点で、囁かれただけでえっちな声を出しちゃうところが可愛い。
女の子の声を出した自分に恥ずかしがってるところが可愛い。
ちょっと強気に攻めるだけで、よわよわになっちゃうところが可愛い。
思いっきり抱きしめて、抵抗できないところが可愛い。
首筋が弱くて、ぞくぞくって反応しちゃうところが可愛い。
抵抗らしい抵抗もせず、されるがままになってるのが可愛い。
赤くなった顔を見られまいと、必死に反抗してるのが可愛い。
女の子の顔をしてることに気付いて、愕然としてるのも可愛い。
その顔を見られてないと思ってる迂闊さも可愛い。
わたしより小さくなった身体も、意識して低くしようとしている声も。
さらさらの髪も、くりくりした瞳も、ころころ変わる表情も。
無防備で、こちらを信用しきっているその危うさも。
今すぐにでもその白いうなじに噛みついて、わたしのモノだと証を付けたい。
柔らかくて華奢な肢体にむしゃぶりついて、はしたなく食べてしまいたい。
そんな思いが湧き出て止まらないくらい、恵ちゃんは可愛くて仕方がない。
今すぐにでも押し倒したいし食べてしまいたい……けど、我慢。
そんな事をして恵ちゃんに嫌われでもしたら、わたしはその場で腹を切る自信がある。
今は、まだ。でも、いつか。
むくむくと大きくなる欲望をため息とともに飲み干して、わたしは恵ちゃんに声を掛けた。
「……それで、C2の話」
「え? ……ああ、そういえばそうだったな」
恵ちゃん、ついさっきの話を覚えてなかったみたい。
それだけわたしに夢中になってくれたってことかな。ふんす。
「それで、話って?」
振り返って聞いてくる恵ちゃん。流石に表情は元に戻っている……ざんねん。
もう一度あの可愛い顔を見たくなるしょーどーを抑えて、本題を口にだす。
「……ん。恵ちゃん、明日、一緒に遊ぼ」
「遊ぶって……C2を一緒にプレイしようってことか?」
「そう……今日、恵ちゃんにいろいろ迷惑かけちゃったし、そのお詫びもしたい」
声音が自然としょんぼりする。
今日は恵ちゃんに迷惑をかけてしまった。
あのナントカっていう負け犬が悪いけど、わたしも暴走ぎみだった。
わたしが恵ちゃんをかっこよく助ける予定だったのに……あの縦ロール、許すまじ。
結局、ナントカは恵ちゃんが倒しちゃったし……わたし、いいところ無しである。
「……たしか恵ちゃん、装備が壊れてたはず」
「あ、うん……そのせいで、メイド服着る羽目になったから、よく覚えてるよ」
「大丈夫、似合ってたから」
「何も大丈夫ではないが???」
メイド恵ちゃん……いや、ヴェータちゃん。
すごく、すごく良かった。あれは、一種の芸術だった。
どうせなら、『おかえりなさいませ、お嬢様』とか言って欲しかった。
……今度、頼んでみようかな。
と、妄想の世界に旅立とうとする思考を押し留め、話を戻す。
「……お詫びに、装備をプレゼントする。上等なやつ」
「アカちゃんが? いや、悪いだろそんなの……」
「……なんで?」
遠慮している恵ちゃんに、こてんと首を傾げる。
そんなの、全然しなくていいのに。というか、むしろ貢がせて欲しい。
わたしが選んだ装備を恵ちゃんが着る……うん、想像しただけで滾る。向こう三か月は戦える。
でも、恵ちゃんは。
「……年下の女の子におごってもらうとか、流石に出来ないって」
そう、憮然とした表情で言った。
思わず、ぽかん、と。
あっけにとられた顔をしてしまう。
別に、恵ちゃんの発言に呆れたわけじゃない。
ただ、驚いて――悦んだだけ。
…………ああ。
やっぱり、恵ちゃんは『イイ』。
こんな姿になって、それでもまだ自分を保とうとしている。
現実に負けずに抗って、『俺は俺だ』と声高に叫んでいる。
かっこいいな、って思う。
――――でも。
不満を示す表情は、小さな子が拗ねているようにしか見えなくて。
自分を保とうとする姿は、『私は大人だ』と背伸びをする子供のよう。
すごくすごく、可愛かった。
もう、そんなに可愛いところばっか見せないでよ、恵ちゃん。
我慢するのも……大変なんだよ?
「……ふふっ、恵ちゃん。考えすぎ」
吹き出す欲望を小さく浮かべた笑みに隠し、恵ちゃんの頭を撫でる。
どんどん苦々しくなっていく恵ちゃんの顔に、ぷっ、と笑いを零しながら。
「……恵ちゃんには、普段からお世話になってるから、気にしないで。
それに、C2ではわたしのほうが先輩。後輩の恵ちゃんは、素直に奢られるがいい」
おどけるように言ったわたしに、恵ちゃんは表情を崩す。
しょうがないなぁ、って言ってそうな苦笑。
「……わかった。それじゃあ、お言葉に甘えさせてもらうな?」
柔らかな声で紡がれた言葉に、わたしの笑みも深くなる。
ふふっ……明日はきっと、楽しいだろうな。
ピロン♪
「あれ? なんだろう……そろったーのDM?」
ふと、通知音がして、恵ちゃんの持つタブレットPCが点く。
なにやらメッセージが送られてきたらしい。
「ちょっとごめん」と律儀に言ってタブレットを操作しだした恵ちゃん。
送られてきたメッセージを目で追って……なぜか、困ったような顔になった。
なんだろう。セクハラメッセージでも来たのだろうか? だとしたら、犯人には地獄を見てもらう準備をせねば……。
と、思考を黒く染めていると、恵ちゃんが困ったような顔のままわたしのほうを見ていた。
「……? どうしたの?」
「あ、ああ……。アカちゃん、明日一緒にC2やるって言っただろ?」
「ん。恵ちゃんの装備を見に行く。これは実質デート」
「いやデートではないだろ……じゃなくて」
律儀にツッコんでくれた恵ちゃんは、タブレットの画面をわたしに見せてきた。
えっと、なになに…………………………………………は?
「なんか、アリアンロッドさんからも全く同じ誘いが来てるんだが……どうしよう」
………………………………………………………………は???
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それでは、また次回。




