襲来、お隣さん
TSロリっていいよね
TSロリっていいよね
TSロリっていいよね
新年、あけましておめでとうございます。今年もよろしくお願いします。
あけおめことよろから始まりました、どうも作者です。
新年一発目の投稿。ほのぼの回をお届けいたします。
それでは、どうぞ。
C2をログアウトした俺は、フローリングの上で見事な『orz』を披露していた。
「ど、どうして……どうしてこんなことに……!」
嘆きの声を上げる俺の傍にはタブレットPCが一つの動画を再生中だった。
画面の中では、銀髪紅眼でメイド服姿の悪魔っ子が大鎌を振り回している。
というか、俺だった。
それに恐る恐る視線を向けつつ、
「なんで……! なんでこの短時間でこんな動画が出来てるんだよぉ……!!」
震え声でそう呟いた。
――――切り抜き動画。
配信動画の面白かった部分だけを切り取って、短い動画に纏めたモノの総称。
普通に配信を見るよりも手軽で、忙しくて配信を見ることが出来ない人にも配信の内容やその配信者の事を知ってもらえる。
新規視聴者を取り込むにはうってつけのコンテンツなのだ。
俺も、他の配信者の情報を調べるときは、大体切り抜き動画から入っている。
配信って一回が平気で一時間超えるし、全部見ようとすると体力と根気をそれなりに消費する。
その分、切り抜きなら十分かそこらで一番おいしいところだけを味わえる。やっぱりコスパって大事なんよ。
でも、『十分で分かる』ってタイトルなのに平然と二十分三十分尺がある動画は良く分からない。十分要素どこ……?
俺も配信者になったからには、『自分の切り抜き動画とかできないかなー。むしろ自作しちゃおうかなー』みたいなことを考えていた。
だが、俺の配信ライフ(一週間未満)は、なんだかすでに想像つかないモノになっている。
三回の配信を経て、チャンネル登録者は十万人を超えた。
そろったーのフォロワーもその半分に達しようとしている。
……どうしてこうなった?
人気が出る事は素直に嬉しい。もともとそれが目的だったし、このままいけば早いうちにロイヤリティを得ることが出来るようになるだろう。
だが、急激すぎる変化にちょっとついていけないところがあり。
『こんな動画』を見て、取り乱さずにいられるほど達観していないのだ。
そう。
――――『10分で分かる高機動空戦型のメイド悪魔ロリ』
という切り抜き動画をなぁ……!!
俺とブラウ君の決闘騒ぎの様子が纏められたそれは、素人目からしても非常にいい出来だった。編集は丁寧だし、字幕とかエフェクトも工夫されている。
俺自身の動画じゃなければ、素直に楽しめたんだけどなァ……。
「けどまぁ……実際ありがたいし、嬉しくもあるんだよなぁ」
よいしょ、と『orz』な体勢から起き上がり、タブレットPCを持ち上げる。
こうしてカメラくん視点で自分の戦いを見てみると、気付くことが色々あった。
大鎌を振る動作に無駄が多い、足運びが稚拙、空中での姿勢制御も上手く行っていない。
魔法の狙いは大雑把だし、効果的なタイミングで効果的なスキルを使えていない。
うーん、拙い。やっぱり動きを洗練化するために、訓練みたいなことをした方がいいだろう。
もしくは、C2に慣れている誰かに、手ほどきなんかをしてもらえないかな?
こういう反省点なんかを客観的に洗い出せるから、切り抜き動画はありがたい。
もっと単純に、切り抜き動画を作ってくれるくらいには俺の配信を楽しんでくれた、と思えば喜ばしい。
初めてのことだらけで上手くできている自信なんてこれぽっちもなくて。
それでも、見てくれている人たちを楽しませることが出来てるんだって。
「ははっ……うん、良かった」
思わず笑みが零れてしまう程度には、嬉しかった。
そして、笑みを浮かべたまま、なんとなしに画面をスクロールして……。
眼に入った『コメント』に、ぴしり、と固まった。
@ rorikon0591
高機動型ロリメイドとはたまげたなぁ……
@ c2daisuki
ひらひらのスカートであんな激しい動きしてるのに中身が見えないのはなん
で?
バグか何か? 運営に報告しなきゃ……
@ meidolove315
ミニスカメイドなんて邪道だと思ってたけど、これ見て考えが変わりました
@ loannguru3010
カメラくんもっと下! 下から潜り込むようなアングルで!!
@ doMMM881
6:42
嘲笑ドアップは需要が分かってる。このカメラくんとはいい酒が飲めそうだ
「ひぇ(怖気)」
あ、頭沸いてんのか……?
ずらーっと並ぶコメントに目を通せば、出るわ出るわセクハラ発言の嵐。
というかなんで俺はあの時、メイド服のまま戦ってしまったんだ俺ェ……!
いや、元の装備は壊れていたし、あれしかなかったのは確かだけど……でも……! でも……!!
「……やめよう。これ以上考えてると頭が痛くなる」
動画の再生を止め、タブレットPCの電源を落とす。
真っ黒になった画面に、可愛らしい幼女が映り込む。随分と目が死んでいるが、それでもなお損なわれない愛らしさが詰まっている。
未だに違和感がぬぐえない『自分の顔』。
元の容貌との類似点が髪と目の色くらいなので、一瞬『誰だコイツ』となる。
それが鏡を見るたび三分の一くらいの確率で起こるのだ。脳味噌バグっちまうよ。
とは言え、だ。
俺が配信者として想定外の成果を上げることが出来ている要因の大半が、この容姿なのは明白だ。
整った顔立ち、白い肌、サラサラの黒髪にぱっちりした瞳。そして小さな体躯。
「うん、いつ見ても俺のモノとは思えないほどに――――可愛い」
と、何も考えずに呟いた――次の瞬間。
ガチャリ。
「……ん。確かに。恵ちゃんは、可愛い……よ?」
唐突にリビングの扉が開き、そこから一人の少女がひょっこりと顔を覗かせる。
腰まで伸びた濡れ羽色の髪。少し眠たげな美貌。
今の俺よりも頭一つは大きな体躯に、大きく突き出た母性の象徴。
パーカーとショートパンツというシンプルな装いをした少女は、なんの遠慮もなしに部屋に足を踏み入れた。
そして、恥ずかしい発言を聞かれて固まっている俺に近づくと。
「……ぎゅー」
物凄く自然な動作で、俺を背中から抱きしめた。
布越しに感じる信じられないほど柔らかな感触にごく自然に身を預けようとして――いや、ちょっと待て。
「あ、アカちゃん!? なんで!?」
普通に鍵かけてあったはずなんだけど!? と叫ぶ俺に。
「……わたし、大家の娘」
ちゃりん、と手にしていた鍵を見せてきた。これは……合鍵?
ちらり、と視線を上に向ければ、少女――緋音ちゃんが、得意げな表情を浮かべている。
いや、ドヤ顔しているところ悪いけど、普通に不法侵入だが? 大家の娘だからって勝手に鍵開けて入ってきていい理由にはならないんだが?
それに、侵入出来た手段は分かったけど、どうして何も言わずに入ってきたのかも、今抱きしめられている理由も何も分からない。
けどまぁ……今更かぁ。
しょっちゅう俺の部屋に遊びに来るアカちゃんは、時々こういった悪戯を仕掛けてくる。
前に何故こんなことをするのかと聞いたところ、『……恵ちゃんは反応が可愛い、から』とのこと。歳下の女の子が何を考えているのかまったく分からない……。
ツッコミたい思いや言いたいことをぐっと我慢し、それらを全部溜息として吐き出しつつ、俺はアカちゃんに声を掛けた。
「それで、アカちゃんは何の用かな?」
「……ちょっと、お話。時間、いい?」
「うん、大丈夫。……それよりも、アカちゃん?」
「……何?」
「もしかしてだけど……この格好のまま話をするのか?」
まるでぬいぐるみのように抱っこされているこの状態は、流石に恥ずかしいんだけど……。
「……? 駄目……だった?」
と、見下ろしてくる瞳の……どこか悲しそうに揺れるそれを見ると、『ダメ』なんて言えなかった。
しょうがないな、と小さく溜息を漏らしつつ、俺はアカちゃんの言葉に耳を傾けた。
読んで下さり有難うございます。
感想、評価、ブックマなんかも非常に励みになっています。
今年はとりあえずイベント編をやりたいので、鋭意作成させていただきます。
更新頻度は相変わらずですが、まだまだ続きを書きますので、お付き合いいただければ幸いです。
読者の皆様の一年が素晴らしいモノでありますように。
ではでは。




