現状把握→どうすんのこれ?
TSロリっていいよね
TSロリっていいよね
TSロリっていいよね
どうもです。
二時間ほど遅刻……わぁあ、酷い。
明日……もう今日か。今日は遅れないように頑張ります……。
それでは、どうぞ。
とりあえず、首切り君にはインベントリに帰ってもらうことで、なんとかローザネーラを草むらの住人から誇り高き吸血鬼に戻すことが出来た。
「ふ、ふんっ! いっとくけど、ちょっとおどろいただけなんだからね! ぜんぜん、こわくなんてないんだからっ!」
と、言っている誇り高き真祖の吸血鬼は、しかし膝が面白いくらいに笑っていた。もうガックガクである。
しかし、困ったな……非常に不味いことになったぞ。
言わずもがな、俺のメインウェポンは大鎌だ。まだ使い始めてたった一日とは言え、ローザネーラという強敵を打ち破ったことで愛着も沸いている。
視聴者たちの反応も悪くないみたいだし、これからも大鎌を使い続けることは揺るがない。
しかし、大鎌を持った俺が居ると、ローザネーラがまったくもって戦力にならなくなる。
そうすると、俺の【召喚術士】としての存在意義が皆無になる。召喚獣が戦わない召喚術士とか、麺のないラーメンみたいなもんだ。カロリー高めのスープオンリーは勘弁願いたいぜ……。
じゃあ、大鎌を使うのをやめて、別の武器を使うのか? うーん、でもなぁ……。
せっかく手に入れた首切り君――『深紅血装【咎人斬首】』が使えなくなるのは、余りにも惜しい。
ちらりと確認しただけだが、この武器の性能は凄まじい。攻撃力や耐久値の高さもそうだが、何よりも秘められた特殊能力が目を引ん剝くほどに高性能なのだ。
これが手元にあるのに使わないなんて、宝の持ち腐れとかいうレベルじゃない。ビジュアルが禍々しいのだって、それはそれで目立つし、配信者としては美味しい。
戦力としても、ビジュアル面から考えても、首切り君を使わないのはあり得ない選択肢と言える。
……けどなぁ。
ちらり、と視線をローザネーラに向け、手をインベントリを操作するように動かした。無論、ただのフリだけど。
「ッ、な、なによ……?」
小さな吸血鬼様の御姫様は、俺の視線と動きにびくっ、と肩を震わせると、一歩後ずさってすちゃっと構えを取った。
ちっちゃな拳を顔の前に持ってきて、背筋を丸めた姿は非常に可愛らしい……じゃなくて。
うーん、すでに首狩り君をしまっているというのに、少し予兆を見せただけでこの怖がりよう。相当重症だぞ……。
こういう時はどうすればいいんだろう。……とりあえず、会話だな。会話。言葉が通じるなら、話し合いを通して何か突破口が見えてくるかもしれない。
「……ローザネーラ」
「べ、べつにこわがってなんて、ないわよ!?」
「いや、聞いてないから。……まぁ、原因は俺にあるとは言え、このままじゃ俺かお前がマトモに戦えなくなる。それは、分かるよな?」
「…………ワ、ワタシはだ、だいじょうぶよ? あ、あんたがおおか……ど、どんなぶきをもっていても、たたかえるわよっ。しんそのきゅうけつきを、ばかにしないで!」
「馬鹿にはしてないよ。お前が強いヤツだって言うのは、戦った俺が一番分かってる。お前が強くて、今の俺じゃ到底かないそうになかったから、俺はああいう手段を使ったんだし」
「……ふんっ、わかればいいのよ。わかれば」
……ふむ。
どうやら、ローザネーラは『真祖の吸血鬼』と『強さ』というモノに強く執着しているように思える。
――少し話は変わるが、この世界、『ケイオス・クロニクル』のNPCには、『過去』があるのだという。
どんな子供で、どんな生涯を過ごし、何を見て、何を思ってきたのか。
それが、一人一人に搭載されているのだという。一体どういう技術を使えばそんなことが出来るのやら……謎だ。
ただ役割を与えられた人形ではなく、彼、彼女たちはこの世界の住人なのだ――プレイヤーは、それを念頭に置いてこの世界で過ごすべし。攻略サイトには、そんな一文がでかでかと書かれていた。
俺の言葉に、興味なさげにしつつも少し口元を緩めているローザネーラを、改めて見つめる。
ならば、この小さな吸血鬼の少女にも、彼女だけの過去があるのだろう。
そして、彼女が大鎌――いや、『斬首』に恐怖を覚える理由も、そこにあるのだろう。
【煌血】と呼ばれ、あれほど恐ろしい気配をまき散らしていた吸血鬼が、ただの小娘に首を刈られた程度でトラウマになるってのは、何処か不自然な話だし。
願わくば、その過去を知って、トラウマを払拭してあげたい――辛い過去をずっと抱えることに、いいこと何て一つもないのだから。
まぁ、まずは信頼関係の構築からやらなきゃならないんだが……なつき度って、どうやったら上がるのかなぁ? 鈴とか持たせてみる?
いや、好感度調整って考えると、育成ゲーよりもギャルゲーか……やったことないから、どうすればいいか分かんねぇや。
手探りってのもそれはそれでゲームの醍醐味だし……と、考えている時だった。
それは、ローザネーラの背後で起きていた。
さっきまで彼女が住人と化していた草むら。そこが、ガサガサと揺れている。
風? いや、違う。そういう揺れ方じゃない。
なら、何が――って、そんなの、考えるまでもないだろっ!
「ローザネーラ! 後ろ!」
「ひゃうっ! な、なによぉ!」
くそっ、気付いてない……!
草むらの揺れはどんどん大きくなっている。ローザネーラはいきなり大声を出した俺に驚き、身を固めてしまい、咄嗟に動くことは難しそうだ。
なら――俺が、動く。
少し距離があるが……新しく覚えたスキルを使えば、行けるか?
効果を流し見た程度だけど……ええい、考えている時間が惜しい! とにかく、動くぞッ!
「じっとしてろよ、ローザネーラ! 《ファストステップ》!」
それは、踏み出した一歩の移動距離、移動速度を向上させるシンプルなスキル。緊急回避や、間合いを詰める際に使用するであろうそれを使い、ローザネーラの背後に一瞬で回り込む!
そして、素早くインベントリを操作し、首切り君を手元に呼び出す――――それと同時に、草むらから一つの影が姿を見せる。
「ぷぎゃぁあっ!!」
ホーン・ボアか! ええい、ムカつく鳴き声しやがってこのケモノめが!
額から生えた角でこちらを串刺しにしようとしてくる。はっ、悪いが遅すぎなんだ――よっ!
突っ込んでくホーン・ベアに、ロクに狙いも定めずに首切り君を叩きつけるッ!!
空中に刻まれる深紅の斬線。初期装備の大鎌とは比べ物にならない切れ味を誇る首切り君の斬撃は、ホーン・ボアを真っ二つにした。
真っ二つだ、真っ二つ。角の先から尻尾の先まで斬撃が届いたのか、イノシシの身体は右と左に見事にぱかりと割れていた。
……うわぁ、すっげぇ威力。ちょっと引くレベルだぞ? やっぱり、これを使えないのは惜しいよねぇ。
そのためにも、ローザネーラとの関係は何とかせねばならんのだが……と、彼女の方を振り返った俺は、そこで自分の盛大な失敗を悟った。
「ひ、ひぅ……ひゃ、ひゃあぁ……」
深紅を見開き、白い肌をさらに真っ白にして、小刻みに震えるローザネーラ。口から洩れる声は、すでに言葉になっていない。
その視線が見るのは……俺の手の中で、今まさに獲物の血を吸ったばかりの首切り君。
あっ、と思い、慌ててインベントリに首切り君を放り込んだけど……遅かった。
「ひゃ、ひぃやぁあああああああああああああああああああああああああ~~~~~~~~~~~~ッ!!!????」
「ロ、ローザネーラぁ!」
脱兎。
そんな言葉のお手本のように、ローザネーラは草原の向こうに駆けていく。
って、はっや!? 一瞬で豆粒みたいな大きさになったぞ!?
と、兎に角追いかけないと……。
「ま、待って! ローザネーラ!」
・いや草
・まってめっちゃ面白い
・すごい勢いで逃げてってるww
・今のはしょうがない
・……まって、ローザネーラちゃんが逃げてった方向って……
・……あ
・ヤバくない?
・ヴェンデッタちゃん、急いで!!
読んでくれてありがとうございます。
感想、評価、ブックマ、などなど、非常に嬉しく思っています。
あと、総合ポイントが一万超えました。わぁい。
また今日中にお会いしましょう。
ではまた。




