配信二回目
TSロリっていいよね
TSロリっていいよね
TSロリっていいよね
どうもです。本日二回目のどうもです。
日刊ジャンル別ランキング1位、ありがとうございます。めっちゃ嬉しい。
そんな感じで、15話目です。どうぞ!
メニューを操作し、配信用のインターフェースを開く。
配信開始の準備を済ませ、タイトルを入力。【あくまさもなーヴぇんでった ごあいさつ】としといた。この全部ひらがなのタイトル、やけに評判が良かったからな……。
全ての設定が終われば、後は配信開始のボタンを押すだけ。
告知とかはしてないけど、見に来てくれる人はいるのだろうか? ……なんかこう、事前に配信情報を知らせることが出来るようなツールを導入しようか。つべったーとかでいいかな?
すっと配信開始ボタンに指を伸ばす。けれど、触れる直前になってぴたりと動きが止まってしまう。
昨日はアレだけ簡単に押せたはずのボタン。それがなぜか、酷く遠かった。
ごくり、とつばを飲み込む。そんな些細な仕草すら再現しているこのゲームのリアルさに関心しつつ、そこまでやるか? と呆れが浮かんで……違うだろ、現実逃避はその辺にしとけよ、俺。
「あー……ヤバい。滅茶苦茶緊張するぅ……」
配信ボタンに伸ばしていた手を引っ込め、顔を覆ってへたり込む。
うん、まぁ、そういうことなんだ。端的に言って、だいぶビビっている。
今までは考えないようにしていたけど、五万人ってなんだよ? 生まれてこの方、そんな人数に認識された経験なんてない。今もどこかから見られている錯覚があるくらいだ。
基本的にアンダーグラウンドの住人だったからなぁ。注目とは無縁の生活を送ってきた俺には……いやぁ、正直、だいぶキツイ。
こう、もっとコツコツやっていく予定だったんだぞ? それが、どうしてこうなった……。
うぎぎ……と頭を抱えたり、意味もなくブンブンと腕を振り回したりして、ぐにゃぐにゃになった心をどうにかしようとするが、あんまり効果はない。
うぅう……い、いや、ぐちぐち言ってても仕方がない!
一度やると決めたことを途中で投げ出すなんてかっこ悪いことしたくないし、何よりこの道を示してくれた大家さんに顔向けできない。
ええい、男は度胸! 今は女だけど! と顔を上げ、意を決して配信開始ボタンに手を伸ばそうとし……おや? 何故か配信インターフェースが開いて、カメラくんがふよふよと浮いてますね?
・一こめ
・わこつ
・おーい
・ヴェンデッタちゃーん?
・百面相かわいい
・表情ころころ変わるの控えめにいってかわいい
・いえーい、ヴェンデッタちゃんみってるー?
コメントもすでに流れて……いや、なんで? まだ配信開始ボタン押してな……あ゛ッ?
もしかして……さっき腕ブンブンしたときに、間違えて押しちゃった……とか??
・かっちかちで草
・ヴェンデッタちゃん緊張してるー?
・いや、これは想定外のアクシデントに固まっている顔だ
・もしかして→誤操作
・配信初心者あるある
・うーん、これはドジっ子
・まーた属性増やしてるよこのメスガキ
だ、誰がドジっ子じゃい! ……いやまぁ、否定はしづらいけどさぁ……!!
わっ、す、すでに視聴者数が三桁越え? すぐに四桁に届きそ……あっ、えっ、ど、どうしよう……!
というか、この人数に、さっきの奇行を見られた……って、こと?
………………。
「う、うにゃぁあああああああああああああああああああああああああああああああああああ!!!???」
・顔真っ赤
・おめめぐるぐる
・ひめいたすかる
・こまくないなった……
・開幕からもう面白い
・ヴェンデッタちゃんはポンコツ、覚えた
だ、誰がポンコツじゃい!!
◆ ◆ ◆ ◆ ◆
……はい、落ち着きました。
緊張はもう俺の中から消えていた。それどころじゃなかったともいう。
ともあれ、本格的に配信を始めるとしようか。
こほん、と咳ばらいを一つし、カメラくんに向かってニコリと微笑む。
「皆さん、こんにちは。初めましての方は初めまして。昨日から見てくれている人は、今日も来てくれてありがとうございます。ヴェンデッタチャンネルへようこそ! 新米配信者にしてあくまさもなーのヴェンデッタです。どうぞよろしくお願いします!」
よしっ、噛まなかった! 内心で喜びつつ、ぺこり、とお辞儀を一つ。
挨拶、大事。古事記にも書いてある世界の真理だ。
・丁寧なあいさつ+1919点
・あくまさもなーの発音が全部ひらがななの草
・相変わらず礼儀正しいなこのメスガキ……
・ヴェンデッタちゃん可愛いやったー!
・なお、配信時間
・これは清楚、きっと誤操作で意図しない配信開始とかしないんやろなぁ
はい? なんのことやら。
すでに配信開始から十五分経っているとか、そんな現実は存在しません。
……しないからなぁ?(にっこり)
・ひえっ
・うーん清々しいごり押し
・笑顔で脅すな
・清楚スマイル(脅迫)
・目の笑っていない笑みにドMワイ、大歓喜
・初回配信で登録者五万人越えの大型新人の配信はここですか?
・初回配信でネームドボス討伐したトンチキの配信はここですか?
「一部の視聴者様が何を言っているのか俺には分かりませんけど、配信を始めていきたいと思います。……って、誰がトンチキですか。俺は普通の新米配信者ですよ?」
・普通……?
・ははっ、抜かしおる
・ちょっと普通の意味辞書で調べてきますね
・普通の新米配信者はネームドボスを倒さない
・ワイの知ってる普通と違う
・自分のことを普通と思い込んでいる一般メスガキ
「流石に酷くないですか!!?」
コメントの容赦のなさに頬が引きつる。いやまぁ、自分でも無理があったかな? とは思うけどさぁ……もう少し優しくしてくれてもよくない?
「皆さん……新人イジメは楽しいですかー?」
・あっ、そのジト目いいね
・気の毒に思うけど楽しいからしょうがないね
・ヴェンデッタちゃんがその反応をしてくれるから楽しい
・非常に愉快でございます
・いじられてるヴェンデッタちゃんは可愛いなぁ
・情け容赦なくて草
こ、こいつら……!
……こほん。いやいや、この程度で苛立ってどうする。クールになれ。
他の人の配信とか見てたけど、容赦ないところはもっとアレな感じだったし、この程度でひるんでいられない。
気を取り直して、まず最初に言うべきことは……。
「まず、皆さんには謝罪とお礼を。昨日は、いろいろとお騒がせしてしまい、申し訳ございませんでした。配信も中途半端な形で終えてしまい、ロクな挨拶もしなかったことを謝罪させてください」
これだけは言わなければ、と思っていたことを口にし、ぺこり。
昨日の配信、本当に逃げるように辞めちゃったからなぁ。
アレはさすがに、見てくれてた人に失礼過ぎた。視聴者もその辺は気になってるだろうし……。
・お、おう
・律儀か?
・結構なガチ謝罪に困惑してる
・もっと軽いノリでええんやで?
・めっちゃテンパって配信終了したのクソ面白かったので気にしてないです
・おめめぐるぐる可愛かったゾ
「あ、あれ?」
あんまし、気にしてないの……?
肩透かしを食らった気分で目を丸くしていると、コメントがすらすらと流れてく。
・他の配信者が自由過ぎるからなぁ
・配信開始と同時に目の前にボスモンスターとか
・作業に熱中しすぎて三時間無言とか
・気が向かないっていって五分で配信終わったり
・ずっと腐肉を見せられたり
・ヴェンデッタちゃんがいい子過ぎて天使に思えてきた
「皆さん感覚麻痺しすぎてません???」
えぇ……、と思わず絶句してしまう。
いや、他の配信者の方々、どうなってるの? 俺が見た配信は普通のゲーム配信って感じだったんだが……。
まぁ、他のところがどれだけ傍若無人にやっていようと、俺の配信もそうする必要はない。
俺は俺らしく、このヴェンデッタチャンネルで配信をしていけばいい。
「えっと、次に行かせてもらいますね? 現在……わっ、六万人超えてる……こほん。チャンネル登録をしてくださった方々、そして昨日の初配信動画を視聴してくれた方々、本当にありがとうございます。数字が大きすぎてちょっと気圧されていますが、この結果に恥じないように頑張っていきますので、これからもどうぞ応援よろしくお願いいたします」
・はぇ~すっごい謙虚……
・なんだこの天使!?
・メスガキ衣装が似合ってるけど似合ってないんだよなぁ
・登録者数にビビってたの可愛い
・素直に好感が持てる
・好きなように頑張ればええで
うーん、みんな妙に優しい……これが美少女効果というヤツか? いや、視聴者がいい人なだけか。
暖かいコメントに、自然と笑みがこぼれた。
「あはは……そう言っていただけると、ありがたいです。優しい視聴者様に恵まれたみたいで、俺は幸せ者ですね」
・あっ
・すっごい綺麗な笑顔
・浄化される……
・種族間違ってるよやっぱり
・これはえんじぇるさもなー
・これで明日からも生きていける……
「ちょっ、恥ずかしいからあんまり褒めないでくださいっ」
・かわいい
・きれい
・清楚(真)
・女神様ァ!!
・もっと褒めてもっと照れさせるんだよぉ!!
・恥じらい顔……プライスレス……!
くっ……! こ、このぉ……!
別に暴言吐かれたりしてるわけじゃないから、強くヤメロと言えないのがまたなんとも……。
後、可愛いって言われるのは、まだちょっとなぁ……元の性別の感覚を捨てきるには、時間が足りなさすぎる。
ええい、これ以上うだうだやってても仕方ないし、次に行くぞ次ぃ!!
「こほんっ! えー、今日配信でやることですが、まずは……ゲストを呼びたいと思います」
・ゲスト?
・配信初心者にそんな伝手があるのか?
・男か?
・やめろ、脳が破壊される
「ゲスト、と言ってもプレイヤーの方ではなく……これです」
インベントリから、一つのアイテムを取り出し、カメラくんに翳して見せた。
それは、手のひらサイズの一枚のカード。
・これは……
・触媒札?
・ゲストって……ああ、なるほど
・召喚獣を呼ぶってことか!
・そういえばヴェンデッタちゃん、まだ一匹も持ってなかったもんね
・なんの触媒札?
「これはですね……なんと、昨日俺が討伐……えっと、出来ちゃった? っていうのが正しいのだろうか……まぁ、戦って勝利したネームドボス、ローザネーラの触媒札ですっ!」
・は??
・は???
・は????
・は?????
・は??????
・ちょっと何言ってるかわかんないです
読んでくださりありがとうございます。
感想、評価、ブックマなどとてもありがたいです。してくださると作者のモチベがぎゅいぎゅいあがります。
明日も6時に更新されると思いますので、そちらでまたお会いしましょう。
ではでは。




