私、幸せになります!
その後、計画どおり私と兄は、村に帰った。
まあ、その前にひと騒動あったのだけど。
なによりの誤算は、星型要塞に両親――――女王陛下と王配殿下が待っていたこと。
「――――なんで?」
「娘に母が会いに来るのは、当然でしょう! ……無事でよかった。もう、何度護衛を振り切って、魔国へ侵入しようと思ったことか!」
涙ながらに私を抱き締め、そう叫ぶ女王陛下。
それは、護衛が泣くと思うので、思いとどまってもらってよかったです。
女王陛下の腕の中は……とても温かかった。
痛いほどの力をこめて抱き締められたのも、胸が詰まるほどに幸せで――――。
でも、あまりに美人すぎて『母さん』とは呼べなかった。
まあ『陛下』と呼びかけたら、この世の終わりみたいな顔をされたので、言い合いの末『お母さま』呼びになったんだけど。
「私のことは『父さま』と呼んでほしいな」
私とお母さまを二人まとめて抱き締める王配殿下からは、そうお願いされた。
いや……そんな、キラキラの顔と目で見つめられても――――。
「……くっ……お父さま」
圧に負けて、結局そう呼んだ。
「ああ! ヴィクトリア、会いたかったよ!」
なんと、私の本名はヴィクトリアなのだそうだ。
……ものすごく似合わないと思うので、シロナでお願いします。
――――ともかく、この二人を説得するのが、本当にたいへんだったのだ。
三日三晩かけて説得し、アレンやバルバラの後押しもあって、なんとかこうとか説き伏せたのだけど。
終わったときには、魂が抜けるほど脱力した。
「――――これ以上シロナに無理強いするなら、僕はシロナを連れて国を出ます!」
説得の際、一番効果のあったのは、兄のこの発言だっただろう。
兄にこう言われた女王陛下は、不承不承であったが、私を手元に置くことを諦めてくれた。
魔王を倒すほどの力を持つ勇者に出奔されては、国としてもまずいのかなと思ったけど、本当の理由は違うみたい。
「勇者に本気で逃げられたら、せっかく会えた娘に、また会えなくなってしまうもの」
なにより、私と会えなくなるのが辛いと言って、涙を呑む両親に、絆されそうになったのは、内緒にしとかなきゃね。
その代わり、アレンを訪ねる名目で彼らが村に来たときには、一緒にすごすと約束した。
「親子四人、水入らずですごそうね」
「……しれっと僕を除け者にしようとするな!」
アレンと兄が喧嘩をしたけれど……ちょっと楽しみかな。
「あなたを育ててくださった勇者さまのご両親にも、ぜひお礼が言いたいわ。必ず伺うから待っていてね!」
……うわぁ~。
急に女王夫妻が我が家にきたら、父さんも母さんも気絶するんじゃないのかな?
今から精神を鍛えてもらわないと。
「君が生きていてくれたんだ。……今はそれだけでいい。いずれゆっくり心を通わせよう」
「愛しているわ……私の子」
二人の私への愛は、本物だった。
それが嬉しくて、幸せだ。
◇◇◇
そんなひと騒動を乗り越えて、私と兄は無事故郷の村へ帰還した。
テディベアの魔王も一緒だけど。
「ただいまぁ~!」
「シロナ!」
「クリス!」
「お帰り~!!」
そこには、私を育ててくれた父と母と、村人たちが待っていてくれた。
みんなと抱き合い、笑い合い、感動の再会をする。
「元気そうだな、二人とも!」
「まあ、心配なんてしていなかったけどね」
「うわぁ! なに、この可愛いクマさん!」
「きゃあ、私にも抱かせてよ!」
なぜか、兄と私より魔王が人気者になっていた。
……解せぬ。
「うおっ! なんだ、この村人は? 私をこうも易々と振り回すとは――――ああ、お前が十五年間育った村の人間なのだな」
魔王は、なにかを悟ったような顔をして途中で大人しくなった。
……人間諦めが肝心よね。
まあ、人間じゃなく魔王だけど。
――――大騒ぎのみんなを見ながら、兄と二人寄り添って立つ。
「シロナ、ずっと一緒だよ」
「ええ、兄さん――――ううん、クリス」
きっと私は、この上なく幸せに生きていく。
小さな村の温かな人たちに囲まれて、そう思った。
~完~
蛇足ですが――――。
後日、小さな村に、王子やら公爵令嬢やら、魔族の混血を引き連れた魔法使いやら、冒険者やら(こっそり魔族も)が集い、しまいに退位した元女王とその夫、おまけに兄まで移り住み、小さな村が大きな都市となり、国――――いや、世界の中心になるのだが、それはまた別のお話。
お読みいただき、ありがとうございました!
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