404話:脅威
「貴方が月島花蓮さんね。『自由の国』へようこそ」
エリス、ミリア、ソフィア、ノエル、ジェシカと子供たちが集まって、花蓮を城塞での食事に招いた。
「あの……お招き頂きまして、ありがとうございます。貴女たちは……本当にみなさんは、アリウスさんの奥さん何ですか?」
「そうよ。私たち全員がアリウスと結婚しているし、この子たちがアリウスと私たちの子供。日本人の貴方には違和感があるかも知れないけど、こっちの世界では重婚が認められているし、私たちは自分で選んでアリウスと結婚したの」
ミリアが説明する。ミリアは向こうの世界で花蓮と一悶着あったけど、特に警戒している様子はない。
「ここがゲームが元になった世界だなんて、いまだに信じられませんが……皆さんは普通に日本語を話していますし、そういうモノだと納得するしかないですね」
俺は花蓮を連れて『転移魔法』と高速移動を繰り返して、この世界の色々なところを見せた。最初、花蓮は撮影用に作った巨大なセットの可能性もあると考えていたみたいだけど、花蓮が知らない幾つもの街を見て、ここが異世界だと理解したようだ。
「ゲーム云々の部分はあまり気にしなくて良いだろう。この世界が実在することさえ理解してくれれば問題ない」
俺とミリアが転生者であること、誠たち異世界転移者がこっちの世界にたくさんいることも花蓮に話した。転生については半信半疑って感じだったけど、誠たちに実際に会わせたから、花蓮も納得するしかなかった。
「これからも俺たちは、おまえたちの世界に度々行くつもりだ。さっきも説明したけど目的は観光とか買物で、何か害を加えようとか、そんなことは一切考えていない。だからおまえたち公安は、俺たちの邪魔をしないで貰えないか」
「安全保障上の観点から、貴方たちのような強力な魔力を持つ存在を放置する訳にいきませんが……アリウスさんがその気になれば、私たちが何をしたところで無駄ってことですよね?」
『異世界転移門』で異世界に移動して、『転移魔法』と高速移動で世界中を飛び回った俺の力を花蓮は理解している。
その上で、俺のことを完全に信用した訳じゃないけど、少なくとも力ずくで納得させるつもりがないことは解っているみたいだな。
「俺はおまえたちと上手くやりたいと思っている。今日ここに連れて来たのは、その方が手っ取り早いと思ったからだ。公安の上の人間やもっと上の奴を連れてくれば話が早いと思うけど、俺としてはあまり話を大きくしたくないんだ。異世界外交みたいな話になると正直面倒臭いからな」
魔法や魔導具の技術はこっちの世界の方が明らかに進んでいる。金や魔石など向こうの世界でも価値があるモノもたくさんあるから、それらを手に入れたいと思う奴はたくさんいる筈だ。だけどそういう奴らと関わりたくない。
「都合が良い話なのは解っているが、おまえたち覚醒者対策課のような魔力を使える連中が、俺たちのことを嗅ぎ周らないように手を打ちたいんだ。何だったら日本で活動している海外の組織の奴らを捕えるのに協力しても構わない。花蓮の上にいる人間で、話が通じそうな奴はいるか?」
「海外の組織の人間を捕えるって……アリウスさんならできそうですね。覚醒者対策課の課長なら貴方の話を理解すると思います。ですがどう判断するかまでは解りません」
「交渉はこっちでするから、会う機会を作ってくれるだけで構わない。そいつがどんな判断をしても敵対的な行為は一切しないって約束するよ」
「解りました……向こうの世界に戻り次第、課長に話をします」
食事の後、俺は花蓮を『自由の国』の街中に案内した。今『自由の国』の住人の一割が魔族で、獣人も同じくらいいる。誠たち異世界転移者の数はそこまで多くないけど、みんな普通に暮らしている。
「アリウスはん、その人が向こうの世界から連れて来た月島はんやな?」
俺たちのことを目ざとく見つけたアリサが近づいて来る。
「月島はん、初めましてやな。うちはアリサ・クスノキ、アリウスはんから『自由の国』の運営全般を任されとる者や」
アリサが右手を差し出す。
「月島花蓮です。クスノキさんとお呼びして構いませんか?」
「アリサでええわ。うちもアリウスはんと同じ転生者や。だから月島はんたちの世界のことは理解しとるで……」
アリサは意味深な笑みを浮かべる。
「アリウスはんが向こうの世界から人を連れて来たのは初めてやが、アリウスはんを利用しようとか、下手なことは考えん方がええで」
「私は別にそんなつもりは……」
「あんたが考えんでも、公安という組織には傲慢な人間が多いで……あんたも少しは理解しとるようやが、アリウスはんの実力は次元が違うんや。その気になれば世界くらい簡単に滅ぼせる……まあ、うち一人でも公安くらい潰せると思うで」
アリサはあえて隠さずに自分の魔力を見せつける。アリサは前世で公安と何かあったのか?
一○○○レベルを余裕で超えるアリサの膨大な魔力に、花蓮が息を呑む。
「アリサ、花蓮を脅すなよ。少なくとも俺は公安と事を構えるつもりはないからな」
「脅すなんて大袈裟やな、ちょっと釘を刺しただけやで……ほな月島はん、せいぜい上手く立ち回ることやな」
アリサが立ち去って行く。
「花蓮、アリサが言ったことは気にするなよ」
「はい。ですがミリアさんの魔力も凄いと思いましたが、アリサさんの魔力は……」
花蓮はアリサの魔力に脅威を抱いているけど、向こうの世界にもアリサに匹敵する魔力を持つ奴が存在することを俺は知っている。
こっちらも読んで貰えると嬉しいです。
『竜の姿になれない竜人は、強さよりも彼女が欲しい。出来損ないだと家を追い出されたけど関係ない、俺は自由に生きる!』
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