403話:招待
異世界転移者の小野寺小百合と水原七瀬を元の世界に戻してから二週間が経った。
俺たちの世界では、異世界転移者が出現する頻度が落ちているようだ。
世界中を監視している訳じゃないから確実な情報じゃないけど、新たな異世界転移者が現れたという話は聞こえてこない。
これは俺が元の世界に戻す方法を見つけた影響か? 異世界転移をさせている奴が、自分がやっていることが無駄になると思って止めた可能性はある。俺が気づかない場所に異世界転移させているだけかも知れないけど。
他の異世界転移者たちを元の世界に戻すことはできるけど、こっちは慎重に事を運ぼうと思う。そもそも俺がそんなことをする義理はないし、『異世界転移者特典』でスキルや魔法に覚醒した者たちが、元の世界に戻って何をするか解らないからな。
突然強い力を得た奴らが暴走したら目も当てられないだろう。俺たちの世界にはスキルと魔法が使える奴が多いし、保護するという名目で各国が世界転移者を監視している。こっちの世界にいた方が暴走を止めるのは簡単だろう。
次にやるのは向こうの世界の公安対策だ。向こうの世界で活動を続けるなら、公安をどうにかしておいた方が良いだろう。
ということで、『異世界転移門』で向こうの世界に行くと、『認識阻害』と『透明化』を発動して高速で空を飛びながら、接触した公安覚醒者対策課の四人の居場所を探す。
俺は一度会った相手の魔力を決して忘れないから、『索敵』を使えば居場所を探るのは簡単だった。警察の建物に普通に出入りしているから、公安はともかく警察の人間なんだろう。
四人の中で一番話が通じそうなのは眼鏡の女月島だろう。俺の姿は目立つから『変化の指輪』で日本人の姿になって、一人で街を歩いている月島に声を掛ける。
「あんたは公安覚醒者対策課の月島だよな?」
振り向いた月島が訝しそうな顔をする。ネットで調べたけど、公安覚醒者対策課の情報はない。つまり非公式か秘密裏に作った組織ってことだ。
「何の話です? 人違いじゃありませんか?」
「この姿じゃ気づかないのは仕方ないけど、俺たちは一ヶ月くらい前にスパリゾートで会っている。会ったっていうより、おまえたちが襲撃して来たんだけどな」
「え……」
スパリゾートであったことはネットも含めて情報が流れていない。それ知っているってことは、俺が本人か関係者だと気づいたんだろう。魔法を使えば姿を変えるのは難しいことじゃないからな。
月島は咄嗟に身構えようとしたから、魔法で動きを止める。
「慌てるなよ、俺は話をしに来ただけだ。おまえに危害を加えるつもりはない。俺がその気なら、とっくにやっている。そっちも情報が欲しいんだろう? 少し話をしないか」
魔法を解除すると、月島は警戒しながら頷く。
「俺としてはファミレスやカフェでも構わないが、他の奴に話を聞かれたら、そっちが困るんじゃないか?」
「そうですね……カラオケボックスで構いませんか?」
カラオケボックスを選択したのは俺を警戒させないためだろう。月島がスマホで検索して近くのカラオケボックスに入る。街を歩いているときも、ドリンクバーで飲み物を入れているときも、月島は警戒心全開だった。
部屋に入って『変化の指輪』を外すと、月島の警戒レベルがさらに上がる。
「改めて自己紹介します。私は公安覚醒者対策課の月島花蓮です」
「俺はアリウス・ジルベルト。北欧の某国出身ってことになっているけど、このパスポートは偽造だ。だけど勘違いするなよ。俺はおまえが疑っているような海外の組織の人間じゃない」
「そんなこと言われても……貴方の言葉だけで信じられると思いますか?」
「無理だな。だから実際に見て貰おうと思ってね」
俺は月島ごと『転移魔法』して『異世界転移門』に向かう。『認識阻害』と『透明化』で隠しているから俺以外は認識できないけど。
「え……何が起こって……キャー!」
戸惑う月島を無視して、『異世界転移門』を抜けて俺たちの世界に向かう。再び『転移魔法』すると、そこは『自由の国』の街の中だ。
「あ、アリウス陛下じゃないですか!」
俺に気づいた街の住人たちが声を掛けて来る。
「最近見掛けませんでしたが、どこに行っていたんですか?」
「俺も色々やることがあるんだよ」
月島が呆然としているのは、俺が話している相手が魔族だからだ。
「月島、俺はおまえたちとは違う世界の人間だ。おまえが体験したように他の世界に行く手段を持っているから、そっちの世界にそれなりの頻度で行っている。目的は観光とか色々だけど、おまえたちの世界に害を与えるつもりはないよ」
情報が多過ぎて、月島が混乱しているのは仕方ないだろう。
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『竜の姿になれない竜人は、強さよりも彼女が欲しい。出来損ないだと家を追い出されたけど関係ない、俺は自由に生きる!』
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