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4-70話:思惑


「仕掛け人は教会勢力ではない。教会勢力を利用して利益を得ようとした奴ら(・・)じゃ」


 シンはどこまで話すつもりなのか? 『奈落(ならく)』とシンの背後にいる奴。そいつがグランブレイド帝国元皇太子のドミニクの件や、勇者同盟軍に関わたことは解っているけど、その正体は今も闇の中だ。


「儂が仕掛け人の正体を喋ると期待しても無駄じゃ。儂も直接会った訳じゃなく、詮索するなと厳重に口止めされておるからな」


「シンさんが簡単に他人の言いなりになるとは思わねえぜ。何か理由があるんだろう?」


「そこまで口止めされているなら仕方ないけど、私たちも冒険者ギルドのやり方には頭に来ているの。中立である筈の冒険者ギルドが、勇者アベルや勇者同盟軍の元にシンさんを行かせた時点で本来ならあり得ないことよ。シンさん自身が参戦しないから勇者同盟軍に加勢していないだなんて完全に言い訳だわ」


 グレイとセレナが真顔で問い掛ける。そもそもSSS級序列一位のシンが他人の思惑で動いていることが不自然だ。シンが望んで従っているなら話は別だけど、グレイとセレナはそう思っていないみたいだな。


「グレイ、セレナ、お主らは私を買い被り過ぎじゃ。儂は偽善者の片棒を担ぐ悪党だと言ったじゃろう? あぶく銭を稼ぐために動いているだけじゃ」


 シンの答えにグレイとセレナが納得する筈がない。だけどシンはこれ以上話すつもりはないみたいだな。


「アリウス、もう一度だけ言う。儂らと共に魔王を倒そうとは思わぬか? 今回の魔王討伐には儂とエイジに、SSS級冒険者序列二位のオルテガ、他にも何人かSSS級冒険者が参戦する。

奈落(ならく)』から参戦する『処刑人(エクスキューショナー)』もガルドだけじゃない。ここにお主が加われば、魔王アラニスを仕留めることができるじゃろう。儂にお主の力を貸してくれんか?」


 序列二位のオルテガまで参戦するのか? 確かに凄い戦力だけど。


「シンさん、何度も言わせないでくれ。俺はアラニスと戦うつもりはないよ。戦う理由がないからな」


「アリウス、シン師匠がここまで言っているんだぞ!」


「エイジ、お主は黙っておれ!」


 激昂するエイジをシンが止めるとエイジは黙り込む。


「それにシンさんが言っていることは矛盾しているじゃないか。多くの権力者たちが魔族と人間の争いを終わらせることを望んでいないんだろう? シンさんは本気でアラニスを倒すつもりなのか?」


「確かに矛盾しているが……これは儂の我がままじゃ。どうせ戦うなら負け戦などするつもりはない。誰がどんな思惑を持っていようと、戦う以上は儂の全てを賭けて魔王を仕留めるつもりじゃ」


 シンの目が鋭くなる。アラニスを倒すつもりなのは本当のようだな。アラニスと戦うことをシンが望んでいないとしても、戦うしかないなら勝つ。俺にはシンのレベルもアラニスのレベルも解らないから、戦えばどちらが勝つか解るとは言えないけど――


「リヒテンベルガー閣下、発言しても構いませんか?」


「何じゃ、エリク王子。ここは公の場じゃないから、もっと砕けた喋り方で構わん。儂のことはシンでも爺さんでも好きに呼ぶが良い」


「それではシンさん、貴方の考えは理解しました。それでもアリウスが望まない以上、魔王アラニス討伐にアリウスが参戦するを諦めて貰えますか?」


「うむ、無理矢理連れて行く訳にもいかんだろう。グレイとセレナも参戦せん。そういうことだな?」


 グレイとセレナが頷く。


「ここからは僕の憶測に過ぎませんが、シンさんが魔王アラニスと戦う理由についてです。もしシンさんが魔王討伐に参戦しなかったらどうなるか……シンさんが止めればエイジ殿も参戦しないのでは? 他のSSS級冒険者もシンさんがいるから参戦するとしたら?」


「エリク王子、何が言いたい?」


「仮にSSS級冒険者が誰も参戦しないとしても、今回の仕掛け人たちが魔王討伐を諦めることはないでしょう。シンさんの話では、彼らの目的は魔王を倒すことじゃなくて、魔王討伐という名目で金を集めることだから。

 ならばSSS級冒険者の代わりに魔王討伐に参戦するのは、力関係から冒険者ギルドの依頼を請けざるを得ないSS級以下の冒険者ということになる」


 その可能性は俺も考えていた。冒険者ギルドの上層部には冒険者を道具としか考えていない奴も多い。


 SS級以下の冒険者たちが魔王討伐に参戦したら、どれだけの犠牲が出るか解らない。だけど犠牲が出たことで、やることはやったと冒険者ギルドは金を出した奴に言い訳できる。


「だから儂が参戦すると? それこそ買い被り過ぎじゃ。冒険者は基本自己責任じゃし、魔王討伐に参戦したくないなら依頼を断れば良いだけの話じゃ。冒険者ギルドが気に食わないなら、冒険者を止めれば良い」


 そんなことができる冒険者が一部に過ぎないことはシンも解っているだろう。他の冒険者を犠牲にしないために参戦することを認めたくないんだな。認めてしまえばグレイとセレナがどう動くか――シンがそこまで考えているかは解らないけど。


 ここまで蚊帳の外に置かれていたガルドが、テーブルを叩いて立ち上がる。


「おい、ジジイ。いつもで俺をこんな茶番につき合わせるつもりだ? 魔王討伐に参戦しねえなら殺しても構わねえだろう。アリウス、てめえは俺がぶっ殺す!」


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