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第十六話 カイエンブルク攻城戦 城塞攻略前編

敵を城へと追い込み、いよいよ城塞攻略です。





テーマパークにしたら人気が出るだろうなぁ。なんて馬鹿な事を考えながら、私は目の前のファンタジーな城塞を見上げる。


勿論、これはテーマパークの城じゃない。

VR世界で構築された御伽話の城でもない。


目の前に現実にある城塞なのだ。


今はあちこちに戦火の跡が目立ち、みすぼらしくなってしまっているが、元々は綺麗な城だったのかもしれない。



それは兎も角、今は敵が籠る城だ。



私はコマンドメックに命令を出す。


「ブラスターカノン発射準備」


『了解しました、コマンダー』


私はブラスターカノンをぶち込む場所をターゲッティングすると、ブラスターカノンを発射する。


ちなみに、ターゲッティングは撃ち込みたい場所を見てマークするだけでいい。それにコマンドメックと繋がっている私は、この場所から自分でトリガーを引くことも出来るのだ。


程なくして灼熱に光輝く火球が飛来してきて、私がターゲッティングした城門へと向かって行く。


しかし火球は途中で見えない壁にぶち当たって四散してしまい、城門が破壊されることは無かった。



「ん?」


『コマンダー、シールドが展開されている様です』


「また厄介な…。

 もしかして、敵が攻撃してこないのもこのシールドがあるから?」

 

『その可能性はあります』



という事は、外からの火力で敵の防御を粉砕する事は無理…と。


結局は突入するしかないじゃないか。


今展開している汎用ボットは、距離を取る射撃戦闘はそれなりにこなすけれど、白兵戦など近接戦闘には正直向いてない。


勿論、損害度外視で突入させることは出来るし、ビームソードもあるから役に立たないという訳では無いのだけど。


新たにTier2バトルボットをファウンドリーメックで生産するか、それとも私が一人で突入すべきか。


私が一人で突入する場合、怖いのは敵の司令官クラスを取り逃がす事。


敵側の総司令部に私の詳細が伝わると、大規模な増援を差し向けられかねないからね。

そうなった場合、なにがやって来るのか予想もつかない。


それを考えると、今からバトルボットを生産という選択肢はあり得ない。



作戦を考えていると、敵側に動きがあった。


城の楼閣に、例の豪華なローブを来た男が黒ローブ達を従えてやってくる。


そして彼等が何やら呪文を唱えると、城のどす黒い堀がゴボゴボと泡立ちだし、そこから泥まみれの大きな手が突き出て来た。


そしてその手が堀の縁を掴むと、堀から泥まみれの巨大な腐乱死体が起き上がった。


「…デカい…」


『20mはありそうです、コマンダー。

 生体反応はありません』

 

「だろうね…」


私は思わず見上げてしまう。


遙か昔の子供の頃に見たテレビアニメに出て来たロボット並みの大きさ…。

汎用ボットが足首の高さでしかない。


「というか、ナニこの臭い…」


このデカい腐乱死体がまき散らす強烈な臭いが、私が陣取っている所にまで漂ってくる。


思わずえづきそうになる程の悪臭。


ナノマシーンの身体なので吐くことは無いのだけど、私が生身の身体なら間違い無くその日食べたごはんを全て戻してしまい、一緒に胃液も残らず吐いてしまいそうになる程の見た目と臭い。


匂いセンサーが振り切れそう。


こんなのを相手に王国の兵士達は戦ってきたのかと想像すると、もう気の毒としか…。


デカく臭い死体に圧倒されて居ると、豪華なローブ男が杖を振るとその巨大な見かけによらずその大きな歩幅そのままにあっという間にボット部隊の目の前に迫る。


そして前の方に展開していたボット部隊は大足の蹴りを受けて、あっと言う間に蹴散らされてしまった。


「くっ、全部隊全力射撃。

 タレットからも火力支援」


私が命令を下すや、ボット部隊のブラスターが巨大な死体の全身に突き刺さる。

そして、橋頭堡のタレットのロケットランチャーから発射された誘導ミサイルも直ぐに着弾した。


ボット部隊のブラスターは正直気休め程度の効果しかなかったけれど、デカい死体はシールドを持っている訳ではないのでタレットからの誘導ミサイルの直撃は有効で、吹き飛んだ腐肉と強烈な臭いを放つ体液を周囲にまき散らしていた。


しかし、流石にまだノックアウトまでは行かない。


デカい死体は攻撃を受けながらも、辺りのボットを散々に蹴散らしその大きな手で薙ぎ払い続けた為、ボット部隊は半壊状態だ。


敵の指揮官だろう豪華なローブ男を見れば、ニヤニヤと満足げにデカい死体の戦いぶりを高みの見物で観戦していた。


「ブラスターカノン発射準備」


『了解しました、コマンダー』


私はデカい死体の胸にターゲッティングするとブラスターカノンを発射した。


程なく輝く火球が飛んできて狙った所にぶち当たる。


超高熱のエネルギー弾にただの腐乱死体が耐えきれるわけも無く、胸に大穴が空き炭化する。


私は続けて複数箇所をターゲッティングし、連続射撃する。


次は肩、そして頭と次々と飛んでくる火球が狙いの位置に着弾する。肩が吹き飛んでその巨大な腕が降ってきて半壊状態のボット達を下敷きにしてしまったが、頭への着弾はデカい死体の首から上を消し炭に変えた。


ブラスターカノンの連続射撃の上限である五発目を残し四発を撃ち込むと、流石のデカい死体も立っては居られず、大きな音と共に地面を揺らし仰向けに倒れた。


巨体が倒れた辺りは腐った死体がまき散らした大量の腐肉や体液でドロドロになっていて、ウンザリな有様だ。


敵の指揮官であろう豪華ローブ男はというと顔面蒼白という感じで、黒ローブ達を引き連れて城の奥へと走り去った。


相変わらず逃げ足の早い事だ。


「中尉、無事?」


「はい、コマンダー。こちらに」


中尉が近くに駆け寄ってくる。


「中尉、部隊を再編制して包囲を継続。

 可能であればこの不衛生な状態を改善して」

 

「了解しました。

 我が隊の損耗率は54%ですが、増援は受けられるのでしょうか」

 

「ファウンドリーメックを稼働して増援を用意する。

 ボットキャリアーに搭載してドロップシップで運ぶから、受け入れと指揮をお願い。

 それと増援部隊にはボルトガンを装備させるから活用して」

 

「了解しました、コマンダー」


ちなみに、ボットキャリアーというのは主に汎用ボットをコンパクトに折り畳み状態にして搭載し輸送するための籠の様な物。

搭載する機体によって搭載量が変わるけれど、ドロップシップであれば百機搭載のボットキャリアーを吊り下げることが出来る。


これを輸送地点に投下すると自動的に姿勢制御装置によって機体制御され、目標地点へボットを展開することが出来るというわけ。


そして、ボルトガンというはボルト弾と呼ばれるロケット推進炸裂弾を発射し、命中した目標の内部で炸裂するという代物。


これであれば動く死体にも十分な火力を発揮出来る筈。



『ファウンドリーメックでボット部隊の補充をお願い。

 装備にボルトガンとロケットランチャーを追加。

 ボットキャリアーに搭載してドロップシップで運んで』


『了解しました、コマンダー』



『中尉、新たな任務を与える。ボット部隊は兵の補充後、夜を待って敵城塞の城門を破壊して内部へ突入し、陽動作戦を行って。

 別命があるまで、可能な限り敵を誘引し拘束し続ける事。

 多数の損害を受ける可能性がある為、ボットキャリアーにて継続的に増援を投下する』

 

『了解しました、コマンダー』



『私は一度コマンドメックに引き上げるが、陽動作戦が始まり次第再出撃する』


『了解しました、コマンダー』



私はコマンドメックまで後退すると、コマンドメックに乗り込み意識をバーチャルスペースへと飛ばす。


カイエンブルク城の内部構造までは把握できていないが、外部からのスキャニングデータにより構築した城塞の立体映像を表示する。


全景を俯瞰すると目についたのが、用途は分からないけれど城塞の屋上に有る小型のヘリポートの様な施設。


他の屋根は尖塔が連なっている形ばかりなのにも拘らず、この部分だけが特異な形状をしているので余計に目立つ。


しかもこの部分には出入り口も存在しているので、もしこの世界にヘリがあるのならヘリポートとして機能していそうな、そんな施設なのだ。


そこで私が考えた作戦は、地上のボット部隊が城門より突入し敵を誘引している間に、私はドロップシップよりHALO降下してこのヘリポートの様な施設から城内に潜入。


ガジェットを使って城内の構造や様子を把握しつつ敵の指揮中枢を目指し、到達したら敵指揮官を殲滅もしくは拘束する。


この作戦によりカイエンブルクを陥落させられるはずだ。



装備はハーモニックブレードとM79無音バレットカービンといったステルスミッション向けの装備の他、念のために私もボルトガンを持っていこう。


 

さて。


作戦も決まり準備の手配も済んだところで、作戦開始時間まで束の間の休憩をとるとしましょう。



城に結界が張られて居たりと一筋縄ではいかない様子。

主人公は突入する事にしました。


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― 新着の感想 ―
[一言] 魔法があると見えないバリアだの転移だの時間停止だのできるから結構厄介ですよね。
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