表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

15/27

第十五話 カイエンブルク攻城戦 市街戦

カイエンブルクへ突入し市街戦の開始です





恐怖を知らないボット部隊が続々とカイエンブルク市街地へと突入して行く。

私はその光景をコマンドメックのシートで観戦する。


生身の兵士達の突入ならば、喊声と共に勇敢に突入という映画のクライマックスシーンなのだろうけれど、ボット部隊は全てデータリンクされているので戦闘中であっても喋るという事は無い。


でも、喋れないのかというと勿論そんな事は無くて、話しかければ答えるし疑似的ではあるけれど感情だってある。とはいえ、戦闘用のボットAIは恐怖を感じる感情は停止されている。

だけど、味方がやられれば奮起するし、敵を倒せばテンションが上がる。

無意味な破壊は避けるし、無抵抗な相手を基本的には攻撃しないなどの分別もある。


更に、そのAIの記憶は失われる訳では無い為、戦えば戦う程経験を積むし、やられた時のデータもしっかり残り次に活かされる。


ボットのAIは、ボットという入れ物にインストールされて居るけれど、それの本体はセントラルAIの外郭システムに存在するから、入れ物が破壊されたところで一番大事なAIが失われる訳では無い。


私の所持している汎用ボットの戦闘用AIは、そういう意味では私と共に長きに渡り転戦してきた歴戦の兵士のため、かなりの経験値を積んでいるのだ。


勿論、これらの経験データは財産でもある為、本社に帰還した時にはフィードバックされ、今後開発されるAIに反映されるし、また私が仕事をしたと証明するデータの一つになる。



ボット部隊がカイエンブルク市街地へと突入すると、迎え撃とうと駆け付けた敵との交戦となった。

黒ローブがどこからか掻き集めて来た動く死体の群れが、幾つも接近してきているのが見える。


「中尉、橋頭堡を建設するよ。

 タレットを送るからビーコンを設置して」


「了解しました、コマンダー」


中尉との会話の背後から生々しい戦闘音が聞こえて来る。


ビーコンとは通信シグナルを発し続ける金属製の棒のような物で、地面に突き立てると自立してシグナルを発信し続ける。


私は中尉の視点を借りると、途端に目の前には迫りくる動く死体が見え、ボットの一体が中尉に命令されてビーコンを設置しているのが見えた。


私はいつでも特定のボットの目の前の映像を見ることが出来るし、全てのボットの映像をサムネイルの様に視界に並べて同時に見る事も出来る。


当然、最前線で戦っている最中のボットの目を通して見る映像は少々刺激が強い。


私はビーコンから発せられたシグナルが届いたのを確認すると、コマンドメックのロケットランチャーからタレットを射出する。


ロケットポッドは弾頭を射出する以外にこういう用途にも使えるのだ。


射出された六基のタレットがビーコン付近に着地すると、即座に展開される。


展開されたタレットをボットが適所に運んで設置し、動作を開始させる。


このタレットには強力なチェインガンとロケットランチャーが搭載されていて、接近する敵を自動的に攻撃して拠点を防御する機能の他に、リンクされたボットが標的を指定する事で直接支援火器として使用することも出来る優れモノなのだ。



前衛のボットが敵を寄せ付けない様に防御戦闘を続ける中で、更にロケットランチャーから射出した防御陣地用の資材を使って後方で簡易陣地が構築される。


そして、簡易陣地が完成しタレットが完全に機能し始めると、橋頭堡に防御の為のボットを百体程残して他のボットは隊を分けて前進を開始した。


ナパームスローワーとタレットの圧倒的な火力の前に、駆け付けたかなりの数の動く死体は炭化し、黒ローブも逃げたのか共に燃えたのか既に姿が見えなくなっていた。


「よし、私も行く。

 コマンドメックはオートモード」


「了解しました、コマンダー。

 ご武運を」

 

コマンドメックはオートモードになると、部隊に対する支援を自動的に行う他、私が直接リモートで操縦する事も出来るのだ。勿論、敵が近づいてきたら搭載火器で自衛戦闘を行う。



私は橋頭堡に入ると、一先ずボット部隊の戦況を見ながら待機する事にした。


ボット部隊では歯が立たない敵が出てきたり、対処できない事が起きた時の為に目を光らせておかないと。


そしてボット部隊をカイエンブルク市街地の通りごとに分けた結果、最終的に五つの部隊に分かれ、それぞれが中央の城塞へと進軍を始めた。


カイエンブルクの通りはそれなりに広いのだけど、メックを入れるにはちょっと窮屈なので、出来ればボット部隊だけで攻略を済ませたいところ。


敵を掃討しながら前進するボット部隊の中の一体のボットの目を借りて、最前線の状況を見てみる事にした。


流石に市街戦になると敵との距離を取るのも難しく、今は敵がそれ程の数で無いことが幸いしてある程度の距離を取れているけれど、それでも既に敵に何度か突入されてしまい、白兵戦闘に至った部隊もあるのだ。



ボットの目からは両手を振り上げて突進してくる死体の群れが見える。

昔の私なら気を失ってトラウマになりそうな光景だ。


「屍どもよ行け!

 ゼンマイ仕掛けの兵士を破壊せよ!」


「ガァァァァ!」


ボットの発する電子音や動作音と共に、黒ローブが動く死体に命じている怒号や、動く死体があげる獣の様な唸り声がその場に居るように聞こえて来る。


ボットにリンクすると、まるでVR空間に居る様な感覚でその場の状況を見ることが出来る。

ボット部隊は敵にあまりに近寄られると、ナパームの炎がボット自身にとっても危険な為、攻撃兵器をブラスターに切り替える。すると途端に、完全に動けなくなるまで破壊しない限り動き続ける動く死体に対するストッピングパワーがガタ落ちするのだ。


そうなると、群れで襲ってくる動く死体には分が悪く、たちまち白兵戦が発生する。


ボット達はビームソードで動く死体との白兵戦に突入、という訳だ。


幸い、平原で大量の動く死体に突入された時と異なり、今回の市街戦では彼我の戦力差はそこまでの開きはなく、損害は出しつつも何とか敵を制圧出来ている状況。


流石の動く死体も、ビームソードで四肢を切断されて首を飛ばされては何もできないからね。


私が目を借りていたボットから見る最前線の光景は、動く死体をバラバラ死体に変え、更に部隊を進めていく優勢なる戦闘風景を見ることが出来た。


黒ローブ達は薄情なもので、ブラスターの流れ弾に貫かれて死ななければ、動く死体が不利になるとすぐに逃げだし、誰一人踏みとどまって戦おうとするものは居なかった。



途中からボット部隊の歩調を合わせて全部隊を同じ速度で進軍させ、とうとう敵を城塞がある中央部分へと押し込んだ。


ここ迄は順調だが、例の豪華なローブを来た奴をあれ以来見ておらず、恐らくこの城の中に居ると思われるので、この先はここ迄のように順調にはいかないだろうね。



一先ずボット部隊を城の周りに展開させて、ドローンで城を上空から調べてみる。


城の戸や窓は全て閉められており、見えるところに人の気配はないけれど、サーモセンサーで城内を走査すると、それなりの数の熱源が確認された。


さらに、彼らの主力兵力が死体の類という事を考えれば、サーモセンサーでは見えないだけでかなりの兵力が残っている可能性もある。



城を囲む城壁は高く、更にその内側にどす黒い水を湛えた深く広い堀があり、その堀から突き出るように城が建っている。


城壁には鎧窓が無数に見えているところから、恐らくあそこには城兵が詰めることが出来、敵が射程に入り込めば一斉に開いて矢の雨が降るという事もあり得るし、城壁に幾つも設けられた鐘楼の中には大型の飛び道具が収められているのかもしれない。


とはいえ、それらはあくまでこの城に正規の城兵が正規の人数詰めていて初めて機能する事なのだけど、あの骸骨兵士が城兵の代わりに詰めている可能性はあると思う。


さて、どう攻めようかしら。




カイエンブルクの大半は制圧し、後は中央の城を落とすところまで来ました。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
[一言] 魔法には色々苦労したけど、どうやらなんとかなりそうですね。
[一言] 科学無双はやっぱり最高です主人公の直接戦闘も期待します‼️
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ