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獣人傭兵物語 ーいかにしてこの無知なる傭兵は獣人〈けものびと〉の王たり得ることができたのかー  作者: べあうるふ
つかの間の平和

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はじめてのおおげんか

相手はガキだから力はセーブしたつもりだったんだが、ゴン! といい音がした。

「……えっ⁉ ぶ、ぶったな!」

「当たり前だ、初対面でいきなり呼び捨てにした罰だ」

「えっ……ぶった……痛ぇ……うわぁぁぁああん!」

慌てて牧師の兄ちゃんは止めに入るわ、周りはざわつくわで教室の中は一気に混とんとした世界になった。

とどめに「お前がメシくれるから悪いんだ!」とチビの頭を叩いたもんだからまた頭にきたし。

結局ガキとチビの大喧嘩になってその日はお開きになってしまった。


さて……と。

チビの方は結構頑丈だからか引っかき傷ができてたくらいだが、あっちのガキはというと顔面ボコボコにされて結構ひどいことになっていた。

そっか、チビはこういうケンカするの初めてだしな、力加減がどうもまだできてないらしい。

それにガキの方がやめてって言ってるのにもかかわらず顔面にストレート入れる始末……

俺がトガリやルースを殴ったり、俺がラザトに殴られているのを毎日のように見ていたからだろうか、結構平然としているんだよな。

こういうところも含めてきっちり教えておかないと……チビが大きくなった時、逆にそれが仇になるかも知れねえし。

俺に似たのかな……まあいいか、とりあえずあのガキに一言説教と謝りを入れておかねえと。


「なんであやまらないといけないの?」

「おまえ手加減入れずにボコボコにしただろうが。無抵抗の相手にそこまでやっちゃダメだ」

「おとうたんだってやってるし」

……ああ、ダメだ、言い返せねえ。こういう場合どう説明すりゃいいんだか。


そして当の本人だが……そういえばあいつ、俺のこと知ってたような口ぶりだったな。傭兵のラッシュって。

「あの子身寄りがないみたいで……とりあえず私たちが預かっているんですが」

ここの教会にいる別の女がそう話してた。いわゆる戦災孤児ってやつか。

前にいた子供らは別の家族が引き取ったり、自分で働き口を見つけてここを出ていったりしたそうなのだが、どうもあのガキだけはケンカっ早くて誰にも心を開かないんだそうだ。確かに引き取りたい気分もちょっとはあるけど、チビがいるしな。


案内された部屋に入る。狭く薄暗い場所にテーブルと二段ベッドがポツンとあるだけ。でも奴はいない。

「おや、さっきまでここにいたんですけど……若いシスターがおろおろとほかの部屋を探し始めたが、俺には一目でわかった。

「そこにいるんだろ、出てこい」気配でわかる。屋根裏だ。

「ど、どうしてわかったんだよ!」

「俺を誰だと思ってるんだ?」

「……」その言葉に何も言い返せず、ガキはごそごそと這い出てきた。


「さっきは悪かったな。いきなり殴って。けどお前にも結構いけないところがあるのは分かるよな?」

ガキは黙って頭を下げた。ほらチビも謝れ、と半ば無理やり頭を下げさせる。チビにもこういう道徳をきっちり教えないと、大きくなった時に困っちまうな……まあそれを学ぶためにここに来させられたようなもんだが。

「一つ聞くが、なんで俺のことを知ってたんだ?」大丈夫、もう殴らねえからと一言念を押しておいて……と。

「ラッシュって傭兵はとても強いって聞いてて……だから」うつむきながらゆっくり口を開いた。

「だから、なんなんだ?」

俺の問いかけにガキは突然、ベッドの下からボロボロの布袋を取り出した。

その袋を俺に突き出すと、ガキは俺に話した。


「この金で俺を強くしてくれ!」

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