表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
獣人傭兵物語 ーいかにしてこの無知なる傭兵は獣人〈けものびと〉の王たり得ることができたのかー  作者: べあうるふ
つかの間の平和

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

90/620

ルースの想い

 そうそう、デュノ様で思い出した。

 今回のマシューネ国への遠征で、姫さんのお付きとしてルースも同伴することになったんだとか。

「いやいやいや、遠征っていったってたかだか半月程度ですって」ルースはそんなこと言ってたけど、要は旅行みたいなモンなんだろうな。


 それとは別に、ルースがチビと俺にこんなことを言ってきた。

「お二人とも、今度からは学校に行って勉強してもらおうと思うんです」

 がっこう⁉

 その言葉に俺は呆気にとられ、逆にチビは喜んでいた。

 学校……か。確かに俺はこういった読み書きもそうだけど、学校自体一度も行ったことなかったな。なんて。

 でもなんでいきなり学校なんだ? ルースがこのままここで教えてくれたっていいじゃねえか。

「ごめんなさい。お二人にまだまだ教えたい気持ちはやまやまなんですけど……」

 そう。こいつにだって仕事はあるんだよな。遠征でしばらくの間いなくなっちまうし。

「それに僕には、まだまだ残された仕事がいっぱい残ってるんですよ…」

 なにか言おうとして、ルースは慌てて口をつぐんだ。あえて俺も聞かなかったが、あいつ、ちょっと照れてたな。


 で、学校て言っても俺はそういうとこ一度も行ったことないし。どうすりゃいいんだ?

 そこをルースに尋ねると「それに関してはご心配なく」だと。

 ここから東にまっすぐ。ちょっと町はずれにある教会。そこが週末の休みの時は学校になるんだとか。

 教会……ここはディナレとは違う、エナルドって神さんを祀っている大きな教会だ。

 ルースがエナルド神ってこの前ちょっと言ってたっけか。世の中にはいろんな神さんがいるんだな。

 あ、よくよく考えてみたら、そこ以前チビを連れてったとこだったっけか。孤児院もあったっけな。

「ええ、孤児院併設されてます」ってなワケで、すでにルースは俺たちの入学の許可をお願いしてたってワケだ。

 まあ入学許可とはいっても、教会そのものに関しては来る者は拒まずだけどな。いろいろ下準備はあるけれども。

「教養や一般常識にしたってそうですけど、ラッシュさんもチビちゃんも、もう少し社交性を備えていただければな、なんて思いまして」


 うん。言ってる意味が全然分からん。


 とりあえずそういう意味がすぐに理解できる頭も持ってもらいたい……これからどこへ行っても恥をかかないようにと。

 ああ、そっか。以前ルースが「親方を恨みますよ」ってつぶやいた意味が何となくそれで分かった。俺に戦うことしか教えてくれなかった親方を。

 文字が読めるようになったことで、街に出てもいろいろと目に入るものの意味が分かってきた。

 なにを売っているのか、リンゴとかジャガイモの値段とか……いや、食うモノばっかだけど、チビはそのおかげで一人で買い物もできるようになるまで成長したし。

 そして……親方が遺した、たくさんの日記とか。まだまだ読めないとこもいっぱいあるけど、もうちょっと勉強すれば、さらに読めるようになるに違いない。


 そうだ、これはこれで楽しいのかもしれないな。


「で、それとなんですが……ラッシュさん」ふと、ルースが照れた顔で俺に話しかけてきた。ここの一部屋をしばらく貸してくれって。

 

 それは全然かまわねえけど、いったいなんでだ?


「遠征から帰る時ですが、マティエって女性が来ます……で、彼女とここでしばらく住みたいんです」


「女……? 知り合いか?」


軽く咳払いをして、ルースは続けた。


「僕の……えっと、その……許嫁です」


許嫁……って?

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
小説家になろう 勝手にランキング ランキング参加中です。気に入って頂けたら是非ぽちっと応援お願いします!
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ