アスティ奪還 その2
つまり、先日の仕事が発端だったんだ。
ゲイルの……そして人ともケモノともつかない奴らに襲われ、俺らのいた部隊は奇襲によって壊滅状態にさせられたこと。
それしか考えられない……しかし誰が、いったい何のために?
「俺も人づてに聞いた話なんでな……リオネング城の中にいるお偉いさん、かなりの数がオコニド……いや、マシャンヴァルに乗っ取られちまってるみてえなんだ」
しかもそれは、つい最近の話でもないらしい。まだオコニドとの和平が締結する前のことだとか。
「俺たちが思っている以上に、マシャンヴァルってえのはヤバい国だってことだ」
外に俺たちの姿が見えないように、親方は窓の厚いカーテンを閉めた。
しかも、この前俺らが行った仕事……オコニドの掃討。あれはほかの場所でもあったらしく、親方が知る限りじゃリオネングの方が苦戦するくらいの被害だったとか。
そう、それもほとんど聞かされていない。
「軍部がマシャンヴァルにとって代わられている……おそらくアス坊とバカ犬もこれで潰される危険性があったんだが、運良く残ったのはお前たちだけ……さらには出会ったライオン野郎から秘密を聞き出せた。これはマシャンヴァルにとっては誤算だったってことだ」
「そして僕も消されようと……そんな、そんな……!」アスティが悔し涙を流した。そうだろうな、今まで信じていた自分の居場所が、実は敵国に乗っ取られていただなんて、正直あり得ないことだし。
「とりあえず俺の知り合いが何人か軍や城に出入りしている、そこから中身がはっきりするまで、アス坊、お前はここでしばらくいろ」
そうだな、いずれにせよまたアスティが治って外に出て戻っても、もしかしたらコイツ自体の籍が亡くなったことで消えているかもしれないし。
「こいつぁ、アス坊やバカ犬が考えてた以上に深刻かもしれねえな……」
あ、そうそう。アスティのこの大ケガのことなんだが……
「いえ、僕が先輩と飲んでた時にはこんなケガしてなかったです、そこからは全然記憶になくって」
「だよな……俺もアスティ起こすときには一切ケガしてなかったし、いったい誰が……」
「つーかおいバカ犬。アス坊をどうやって蘇生させた?」
俺はアスティを川で発見したことを事細かに説明した。
もちろん、親方に教えてもらった例の胸を押す方法をだ。
「お前、どれくらいのバカ力でコイツの胸を押した?」
「そりゃもう全力でやったさ、昔親方に教えてもらった通り、胸の鼓動が元通りになるまでとにかく押し続けろって」
その言葉に、アスティの顔がだんだん青ざめてきた。
「……起こすとき、顔を叩いたか?」
「ああ、気つけに何度かパンパンと」
「ラッシュさん……じゃあ、つまり、このケガは……」
え、なんか俺悪いことしたのか?




