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獣人傭兵物語 ーいかにしてこの無知なる傭兵は獣人〈けものびと〉の王たり得ることができたのかー  作者: べあうるふ
真実

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トガリとラザト

「そそそ、そんなにル=マルデの攻城戦って凄かったの!?」


「すげえなんてモンじゃなかったぞ。ありゃ自分で死にに行くための戦争だ。確かにあの戦いでオコニドにはかなりの打撃を与えられた……だかな、それは俺たちの方も例外じゃなかった……あ、酒追加な」


「あ……うん」


「俺の戦友もほとんど死んじまった。運良く生き残れたとしても、手足を失くしたり、二度と剣が持てないほどに身体をダメにしちまったり。だから俺も……あのバカ犬……いや、ラッシュか。あいつはすげえ運が良かったんだ。あ、いや、あいつはまた別か」


「え、ラッシュがなんで?」


「……なんであいつは生きてんだ!? 俺は確かに言ったんだ。開きかけた城門を見て、今ならいける! そうすりゃ俺らが一番乗りで討ちに行けるぞ。みんな俺に一目置いてくれる! って。もう貧乏傭兵なんて誰にも言わさせねえ! ってな。でもよ……あのバカ犬、俺に『バカ言うな』って切り返しやがったんだ。なんでだよ! アイツまだションベン臭いガキなんだぞ! そんな奴にバカって言われて……俺は……俺は」


「なんでそう思ったの?」


「わからねえか? 奴らの作戦だったのさ。そうやって敵さんはこっちを罠にはめようとしてたんだ。ヘタすりゃ相打ち覚悟でな!」


「罠に……?」


「チャンスと見せかけて無防備にさせる。おびき出したそれを狙って一網打尽よ……待ってたんだ、オコニドは。ずっと息を殺して、俺たちの仲間の死体の下にずっと隠れて。飛び出した奴らが背中を向けた時まで……な」


「そして、みんな罠にかかっちゃった……?」


「俺はアイツの背中に蹴りを入れて行かせたんだ。くそっ、だったら俺の代わりに証明してみろってな。城内にはもう戦えるオコニドなんていやしない。いたところでみんなすぐ命乞いさ。両手を上げてはい降参。そこで首を獲ればいいだけだ。アイツずっと俺に悪態ついてたな……お前がいけばいいだけだろって。でも……アイツが言った通りになっちまった。アイツは、ラッシュは常に先を読んでたんだ! バカ犬の読みが全部当たってたんだ!」


「…………」


「空が……雨降るわけでもないのに真っ黒に染まったとき、ようやく俺のバカさ加減に気がついたよ……幸いにも近くにデカい盾があったから、そこに隠れて俺は難を逃れた。だが……みんな針山みてえになっちまって……なんてバカなことを言っちまったんだ……でも……」


「ラッシュは……」


「あいつも確かに食らってた、背中一面に無数の矢が刺さるのを、俺は見てたんだ! だけど……」


「なにがあったの、ラッシュに?」


「俺が急いでアイツのもとに向かったとき、それが無かったんだ! 矢の雨のど真ん中にいたんだぞ! それがアイツのところだけきれいさっぱり矢が消えてたんだ! アイツは、あのバカ犬だけが無傷で倒れてたんだ! そりゃちょっとはケガしてたけどな。あの鼻だ、いつの間にか鼻面に傷を負ってた程度で……」


「ラッシュのあの鼻って……」


「アイツ……一体何なんだ……」

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