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気がつけば森の中にいたので試しにスカイツリーを建てたら世界樹になりました  作者: 海水
第3章

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唐揚げをあげる

 中華鍋に油を投入。ガスコンロをファイア。油の温度が上がる間に片栗粉の海にナマズの肉を転がす。肉については大きさが同じくなるように鬼教官からの檄が飛んできたのでその通りにしておいた。

『片栗粉はうっすらと、うっすらとでお願いするのですわ』

 女紙様からの要望が飛ぶ。

『あげているときに肉汁が逃げないギリギリの薄さが極上のおいしさにつながるのですわ。妥協はゴミ箱にぽいするのですわ! おいしさのための労力は惜しんではいけない、オイシサイズジャスティス! ですわ』

「……細かい」

 こだわりのためなのか、ペラペラと早口になるあたりがとてもオタクっぽくていい感じだ。いつもは猫かぶっていて、こっちが地なんだろうな。

『口の中にあふれるジュースィーな肉汁を、凍る寸前まで冷やしこんだビールでゴッキュンと喉奥に流し込むのが、仕事後のご褒美なのですわ! クーーーーーッ、生きているって実感するのですわ!』

「気があうな女紙様。その意見に異論はない」

 紙なのにのど越しを語るとか、よくわからないけど。

 油がパチパチと音を立て始めた。油の温度は160℃ほど。

『そろそろお肉をゴーですわ! 一度にたくさんあげると油の温度が下がってしまうので慎重に慎重を期して、ボーナスが出たからといって年末セールで衝動買いをするような心持は封じて、わたくしをベッドにいざなうようにやさしく肉を入れるのですわ』

「肉は慎重にあげるけど女紙様をお誘いするような度胸はないのでご安心を」

 あと衝動買いはしたことがないんだ。そんな時間はなかったし。

 ゆっくり肉を油につければジュワワワっとおいしい音が聞こえてくる。ひとつ入れては少し待ち、次を入れたらあがった肉を一度トレーに戻す。

 一度目で熱を入れて、二度目でこんがりがおいしさの秘訣なんだとか。

「なるほど、料理ってのは、面倒だけど楽しいな」

 唐揚げの香ばしい匂いが周囲に広がり始めた。俺のおなかもその匂いに負けたらしく、盛大に泣き言をいっていた。

 ふとアキホちゃんに目を向ければ、口をポケッーっと開けて、中華鍋を凝視していた。



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