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89.闇夜の誘い

 〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜ガルレイクside〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜


「……ここは。……俺の部屋か」


 俺は目が覚めると自分の部屋のベッドで寝ていた。窓から覗く風景はすでに暗く、あれから時間が経っているのがわかる。気を失っていたのか。


 体中包帯を巻かれているがあまり痛みを感じない。治療されたか。そして包帯を巻くことになった原因の、昼の風景を思い出すと怒りが湧き出してくる。


「くそっ、くそっ、くそぉっ! なんだよあいつは! この俺様が手も足も出なかったなんて……」


 目を閉じればあいつの顔が思い出す。銀髪のあの男の顔が。そして


『これで、終わりだ』


「ひっ!」


 くそっ! あいつの顔と、最後の言葉を思い出すだけで、体が震えてくる。だけど許せねえ。俺を侮辱したあのキャロラインの婚約者を許せねえ!


「殺してやりてえけど、今の俺じゃあ絶対に勝てねえ。くそっ! 一体どうすれば!」


「力が欲しいか?」


「な! な、なんだてめえは!」


 気が付けば窓の近くにマントを被った男が立っていた。


「てめえ! 一体どこから入って来やがった! ぶっころされてえのか!」


「まあ、落ち着けよ。俺はお前の願いを叶えるために来てやったんだぜ?」


 俺の願いだと? こいつに俺の何が叶えられるっていうんだよ。


「まったく、アゼル様も人使いが荒いぜ。レガリア帝国から久しぶりに帰ってきたら、今度はアルカディア教皇国に行けなんて。まあ、ギルガス様がやられたなんて聞けば、様子を見たくもなるか」


「一体なんの話をしてるんだてめえは?」


「おっと、悪かったな。それで話を戻すが、お前は力が欲しいんだろ?」


 そうだ。俺はあいつを殺せる力が欲しい。俺を見下したあの男をひねりつぶせるほどの力が!


「くっくっく、良いぜその顔。憎しみに歪む顔は中々のものだ。そんなお前に良いものをやろう」


 そう言いマントの男は懐から何かを取り出し、俺に差し出してくる。手のひらには黒い丸薬みたいなものを持っていた。なんだこれは?


「これを飲むと、飲んだ人間の力を10倍にしてくれる代物さ。ただ、副作用に効果が切れると、全身とんでもない痛みが走ってしまうのが難点だ。それさえ我慢すれば誰でも殺せるだろう」


 これを飲めばあいつを殺せるのか? 俺が手も足も出ずに完膚無きまでに叩きのめされたあの男を。気が付けばゆっくりと俺は、男の持つものへと手を伸ばしていた。そして


「後はそれを飲めば効果が発動する。その後はお前の思うがままだ」


 俺は手渡された丸薬を見る。ただの黒い丸薬だが、なんだこの禍々しい雰囲気は。少し飲むのを躊躇ってしまう。だが、これを飲めばあいつを! 俺は手にした丸薬を飲み込む。すると


「がっ! か、体が熱い! 熱い熱い熱い熱い熱い熱い熱い熱いあついあついあついあついあついあついアツイアツイアツイアツイアツイアツイアツイアツイ!」


 オレハアイツヲコロス。アイツッテダレダ。ワカラナイ。ナラ、スベテコロス。メニウツルモノヲスベテコロス!


「コロス!」


「おっと、俺は困るんで避難させて貰うよ。じゃあな」


 キエタ! ナラベツノヤツヲコロス。コロスコロスコロスコロス。スベテコロシテヤル!


 〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜???side〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜


 くっくっく。なんとか上手くいったな。あいつが飲んだ薬、魔丸薬はある程度肉体が強くないと耐えきれないんだよな。しかも、飲んで成功すると必ず殺人衝動に駆られ、周りの目に入ったやつを殺そうとする。


 おっ! 屋敷の壁を壊して出てきやがった。体は2メートル強までに大きくなり、頭からはツノが生え、濁った目で獲物を探してやがる。皮膚は紫色で確実に魔族だと思われるだろう。周りの兵士どもも驚いてやがる。


 ここにいる人間だと太刀打ちはできないだろう。魔剣を作っている過程で出来た魔丸薬だ。早々やられないぜ。


 そしてここにいるやつじゃあ勝てないとわかれば、首都に救援を出すだろう。そして暴れているのが、枢機卿領だとわかれば、銀髪の少年も出てくるだろう。


 アゼル様にギルガス様が死んだ事を聞いた時は驚いたが、あの少年ならやりかねない。4年前の魔剣の時もあの少年に止められたからな。


 アゼル様の命令でアルカディア教皇国に来たは良いが、前から関わりがあった団長さんはギルガス様が攻めた時に巻き込まれて死んでいたし、その上の枢機卿は捕まっていたしと、途方に暮れていたが、良い実験台が見つかって良かったぜ。頼むから簡単に殺られてくれるなよ?

もう1話投稿出来たらします。


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― 新着の感想 ―
あれま、更生する暇もなく噛ませ犬にw
[一言] 「副作用に効果が切れると、全身とんでもない痛みが」 →「効果が切れると、副作用で全身とんでもない痛みが」
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