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86.ハウテンブルク領

 クリスティーナ様から指輪を貰ってから2日後、俺は今、ハウテンブルク領へ来ている。


 ハウテンブルク領とはどこかというと、首都から5キロほど離れた場所にある、クリスティーナ様の父親、キャロの祖父にあたるガリアン・ハウテンブルク枢機卿が治める領地だ。


 古竜が、襲来した時の避難場所になったのもここである。


 なぜこの領地へ来たかと言うと、ハウテンブルク枢機卿が俺に会いたいというのを、指輪を貰った日の夕食時にクリスティーナ様から話されたからだ。孫娘の婚約者の顔を見てみたいそうだ。


 このハウテンブルク枢機卿領には、この国の学園があるみたいで、ハウテンブルク枢機卿は学園の校長もしているらしい。


 そんな事で、俺と婚約者たちで会いに行くことになった。ダグリスたちは宮殿で訓練をするらしい。指輪も探すと言っていたな。


 ダグリスとケイトが俺たちの指輪を見て絡んで来たのはうざかったが。女性陣は女性陣でキャッキャと男たちが入れない雰囲気を出していたし。


「もう直ぐ着くわ」


 俺がそんな事を考えていたら、前に座るキャロがそう言う。確かにちらっと外を見れば、5メートルほどの壁が見える。まあ、首都からでも見えてはいたのだが。


「そういえば、キャロのおじいさん、ハウテンブルク枢機卿はどういう人なんだ?」


「お爺様は、とても優しい人だけど、格闘術の達人なの。騎士団は基本剣と盾を持つのが普通なのだけど、お爺様の私兵は全員武器がなくても戦えるように訓練しているの。何でも、武器がなくても主人を守れるのが最高の騎士だ! って言って」


 格闘術の達人か。確かに武器がなくても戦えるように俺も師匠から習っている。武器は消耗品だからな。いつ壊れても、戦闘中に壊れてもいいようにと。


 他にも色々とおじいさんとかの話を聞きながら過ごしていると、外から騎士と御者が話をしているのが聞こえる。もう門まで着いたのか。


 窓から外を見てみると、ここも結構活気があるな。道に沿うように立っている屋台は賑わっているし、公園では子供たちが楽しく遊んでいる。


 そのまま馬車に揺られていると、一際大きな屋敷が見えてくる。その隣には大きな学校がある。あれがテンプル学園か。中からは学生っぽい人たちが出てきたりしている。


「テンプル学園は夏休みじゃ無いのか?」


「テンプル学園も夏休みよ。あれはただ学園の施設を借りに来ているだけだと思うわ。図書館とかで調べ物もできるしね」


 ……たしかカルディア学園も夏休み中でも使えたな。俺たちは夏休み初日からこっちに移動してきたからすっかり忘れていた。


 馬車に揺られながら学園を見ていると、途中で馬車が止まる。屋敷に着いたようだ。前もって前触れを出していたおかげか、侍女たちが門前に集まって待機している。中央には鍛え上げられた肉体を持つ男性と、お淑やかに微笑んでいる女性がいる。


 ……本当にキャロのおじいさんとおばあさんなんだろうか? ものすごく若いのだが。見た目は30代ぐらいで、キャロと並んでも親子にしか見えない。


 キャロが馬車から降りたので、俺たちも続いて降りて2人の元まで歩く。


「お爺様、お婆様。ご無沙汰しております」


「おお、よく来たなキャロライン。近い距離にいるのに全く会いに来てくれなくて寂しかったぞ」


「本当よ。教皇も女神の加護を持っているからってキャロちゃんばかり戦わせてねぇ」


 そう言いながらキャロを抱き締める2人。話に聞くと、キャロとハウテンブルク枢機卿たちは会うのが1年ぶりになるそうだ。


 理由は、キャロが魔族領やレガリア帝国の国境での小競り合いに、聖女として呼び出されていたからだという。そして、やっと帰ってきたと思ったら、俺との婚約の話が出てドタバタとしていたら今日になったというわけだ。


 少し申し訳ない気もするが、黙っておこう。


「そうだ、お爺様、お婆様紹介するわね。この人が私の婚約者で、レイヴェルト・ランウォーカー。私の大好きな人よ! そして後ろにいる女性たちが、右から、アレクシア・ナノール、フェリス・ワーベスト、ヘレンディーネ・ラルグルス、エアリス・ランウォーカーよ。

 それでこちらが、私のお爺様でガリアン・ハウテンブルク、こちらがお婆様のメリエス・ハウテンブルクよ」


 キャロの紹介でガリアンさんは俺をじっと見てくる。値踏みされているみたいだ。メリエスさんはあらあらと嬉しそうに微笑んでいる。俺はキャロに紹介されたので、一歩出て挨拶をする。


「お初にお目にかかります。私がキャロラインの婚約者になりますレイヴェルト・ランウォーカーです」


「ああ、私はガリアン・ハウテンブルクだ。よろしく頼む」


 そう言いながら握手をすると、痛! この爺さん、思いっきり力込めて握ってきやがる! 顔は物凄い笑顔なのに。この野郎!


「ぬっ!」


 俺も力を込めると、ガリアンさんの顔色が変わる。笑顔のままなのだが、額から汗が流れ出す。


「……いつまで握手しているの?」


 俺とガリアンさんがずっと握手しているのが気になったのかキャロが聞いてくる。それを機に俺とガリアンさんは手を離す。


「……中々見所はあるようだな」


「……それはありがとうございます」


 俺とガリアンさんがフフフ、と笑いあっていると周りは不思議そうに見てくる。


 俺はそのままメリエスさんとも握手をする。流石にメリエスさんは普通に握ってくれたが。


 その後はアレクシアから順に挨拶をしていき、屋敷へと案内される。中には見るからに豪華な壺や絵画、様々なものが飾られている。そして案内された部屋に入りガリアンさんから順に座っていく。


「それでは改めて、よく参ったなキャロライン。それとレイヴェルト君やアレクシア殿たちも」


「こちらこそお招きいただきありがとうございます、ガリアン枢機卿」


 俺がみんなを代表して挨拶をする。その事に嬉しそうに頷いてくれるメリエスさん。対照的に俺を睨んでくるガリアンさん。顔は笑っているが目は笑っていない。


 まあ、さっきの感じからしてキャロのことを愛しているのだろう。俺はその愛しのキャロを取った男になるのだからな。……親は公認だったのにまさかの祖父でこの目に合うとは。


「それで私たちが君たちを呼んだのは、婚約者の顔を見たいというのもあったのだが、もう1つお願いしたいことがあってね」


 そう言い俺を見てくるガリアンさん。メリエスさんも困った様な顔をして俺を見てくる。……嫌な予感。

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