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85.クロナへの手紙

 1ヶ月後

 ランウォーカー辺境伯領


「クロナ〜! いる〜?」


「はい、何でしょうか?」


 侍女のマミさんが私を呼びます。この方は一昨年に、ランウォーカー辺境伯領にやって来ました。元々別の領地で侍女をしていたらしいのですが、そこが没落して、ここにやって来たそうです。物凄く明るい方で色々と教えてくれます。年齢は20手前で誰か良い男はいないかと毎日泣いています。


「さっき、領主様がクロナを探していたわよ。でも、本当に一途ねクロナは。クロナが好きなそのレイ様はもう4年も帰って来ていないんでしょ? マルコ様やウォント様はたまに帰ってくるけど。向こうで彼女でも作ってたりして」


 確かにアレクシア様やフェリス様と婚約なさっているので合っていると言えば合っています。


「それでも私はレイ様のために頑張るだけです。それでどちらに行けばよろしいですか?」


「もう、可愛いわねクロナは。領主様の執務室に来て欲しいって言っていたわよ」


 そう言いながら頭を撫でてくるマミさん。私はマミさんにお礼を言い、ジーク様の元へ向かいます。


 確かにこの4年間領地に帰ってこず不安に思う事は何度かありました。私は他の方と違ってただの侍女。なのでいつの間にか忘れられているのでは無いかと思うこともあります。


 でも、たまに送ってくるレイ様の手紙をみると、ちゃんと私の分も送ってくれて、大好きだよという言葉が書かれているのを見ると、あまりの嬉しさに叫びたくなることもあります。えへへ〜。それを思い出すだけで顔が緩みます。


 そんなことを考えていたらジーク様の執務室に着いていました。緩んでいた顔をキリッとして、扉の前に立っていた父様に話しかけます。隣には父様の部下さんもいます。


「父様。ジーク様に呼ばれて来ました」


「ああ、待っていたよ。中へ入ろうか。後は頼む」


 父様がそう言うと部下さんは敬礼をします。父様も呼ばれているのですね。何があるのでしょうか?


 そう思いながらも父様について行きます。部屋の中へ入ると、中にはジーク様にエリス様、フィーリア様にエリス様に抱かれるクリシア様。エイリーン様と母様もいらっしゃいました。


「おお、来たなギルバート、クロナ。2人とも座ってくれ」


 ジーク様に促されて私たちも座ります。皆さんが集められるなんて珍しいですね。その上、ジーク様たちから何か温かい目で見られているのは何故でしょうか?


「みんなを集めたのは、レイから手紙が来たからだ」


 その瞬間私の耳と尻尾はピンっ! 立ってしまいました。だってレイ様の手紙ですよ! 私の分が無くてもレイ様の話が聞けるだけでも嬉しいです!


「うふふ、そう興奮しないでクロナ。ちゃんとクロナの分もあるから」


 あうぅ〜。私の態度が面白かったのかエリス様がクスクスと笑ってきます。うぅ、恥ずかしいです。


「まずは、レイの婚約者が増えた。相手は以前話してた通り聖女様とだ」


 さすがレイ様です! 皆様レイ様の魅力にイチコロですね!


「あと、エアリスとヘレン嬢も確定したみたいだ。エイリーン、予定通り年末に頼む。ナノール王には手紙を送っておくから」


「わかった。娘と義息子のために一肌脱ごうかね」


 そう言い笑うエイリーン様。やっぱりエアリス様たちもなったのですね。良かったです!


「そして最後にクロナ。君にもレイからの手紙が来ている」


 そう言い手紙を差し出してくるジーク様。わ、私にも手紙ですか。しかし、ジーク様たちが微笑ましそうに私を見てくるのが気になります。何でしょうか。


「クロナ! 早く開けてください!」


 すると、フィーリア様が急かしてきます。私も早く見たいのですぐに開けます。すると中からは1通の手紙と木でてきた箱が出てきます。とりあえず手紙を見ましょう。


 ーーーーーーーーーー


 クロナへ


 今回の手紙はクロナに伝えたいことと贈りたいものがあったため送った。だから手短に書く。


 まず、送った中に入っていた木箱を開けてくれ。それはここで書くのは少し恥ずかしいのだが、中には指輪が入っている。婚約指輪だ。


 クロナは1人で領地で頑張って、色々と心配かけることもあっただろう。本当に申し訳なかった。こういう言葉も直接いわないといけないんだろうが、この手紙に書いて、また会った時に伝えようと思う。


 大好きだ、クロナ。これからの人生を俺と共に歩んで欲しい。


 これ以上は恥ずかしいので今回の手紙はここまでとするよ。


 また会える日まで元気でな。


 レイヴェルトより


 ーーーーーーーーーー


 私は無言のまま一緒に入っていた木箱を開けます。そこには青色に輝く宝石のついた指輪が入っていました。


「わぁ〜! 綺麗です! それで手紙にはなんて書いて……クロナ?」


 フィーリア様が私に聞いてくるので顔を上げると心配そうな顔で見てきます。


「どうしたのです、クロナ? 涙を流して。何かあったのですか?」


 そう言われて目元を拭うと、手元が濡れていました。いつの間にか涙を流していたようです。


「いえ、あまりにも嬉しすぎて、グスッ、嬉し泣きです」


 そう言い手紙をフィーリア様に渡すと、フィーリア様が手紙を声に出して読みます。すると周りの皆様がキャー! と声を上げます。


「もう、うちの息子ったら本当にジークに似ちゃって! ほらクロナ指輪付けてみて」


 エリス様に促されて指輪を左薬指に付けます。母様から指輪を貰ったら左薬指に付けなさいと言われたのを実践します。


 少しブカブカだったのですが、付けてみるとピッタリにサイズが変わりました! これには驚きです。レイ様からの婚約指輪。……えへへ〜。見るだけで顔が緩みます。


 確かに少し心配した時もありましたが、私はこれからもレイ様のために頑張ります! 早く会える日が待ち遠しいです!

今回は1ヶ月後ですが、次回からはまたレイの視点に戻ります。


評価等よろしくお願いします!

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いや、指輪直接渡さないんかい
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