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77.街中での戦闘2

「ほぅ、てめえもレベル9の魔法を使えるのか」


 ギルガスは嬉しそうにそう話しかけてくる。本当に戦闘狂だなこいつ。そして笑いながら腕を放ってくる。さっきまでなら避けていたが、雷装天衣を使っている今なら


「ライトニングスピア」


 俺の背後に20本ほどの雷の槍が出現する。その全ての槍を迫り来る腕に向けて放つ。ズドドドドン! と槍と腕がぶつかり合う音が鳴り響く。しかしその間に


「せいやぁ!」


 ギルガスが上から跳んでくる。腕を放つと同時に動き出していたようだ。そのまま、8本のトマホークを振り下ろしてくる。


 俺は直様その場から飛び去る。ギルガスが俺のいた場所へトマホークを振り下ろすと、かなりの威力なのだろう。街全体へ轟くほどの轟音。かなりの衝撃が走る。キャロの障壁が無けれはこの辺一帯は吹き飛んでいただろう。


 ギルガスは気にした様子もなく、再び俺へ向かってくる。俺も避けてばかりいては勝てない。一歩踏み出しバチッ! と音がする。


 雷が一筋迸ると、俺の目の前にはギルガスの巨体が現れる。ギルガスは突然目の前に現れた俺に驚き、動きが鈍る。その隙を見逃すわけもなく、俺は連撃を繰り出す。


「はぁ!」


 突きを8連放ち両腕を弾き飛ばす。ギルガスは万歳する様に手を広げ、巨体をあらわにする。ロウガの穂先に魔力を集め、完全に開いている腹を目掛けて神速の突きを放つ!


「雷牙!」


 青紫に迸る一筋の閃光がギルガスの腹はと吸い込まれる様に迸る。その瞬間雷が落ちた様な轟音が轟きギルガスは吹き飛ぶ。20メートルほど吹き飛び家へとぶつかる。その衝撃で砂埃が舞うが、この感じだとまだ


「グオオオオ! やるじゃねえか!」


 砂煙から現れるギルガス。鎧は砕け散り血が流れている。しかし、その上から固める様に再び鎧が修復していく。魔法で出来ているから当然か。しかし本当に頑丈だなこいつ。仕留めるには鎧を剥ぎ取った上での肉体を貫く様な攻撃。


 ギルガスはさっきの衝撃で無くなったトマホークを再び8本の腕に出現させ、背後には……多過ぎるだろおい。数えるのも億劫になる程の数の腕を出現させる。


「はっはっは! これが俺の全力だ! 全て俺の魔力探知にかかるものへと向かう。いくら貴様が速くてもこの数はどうだ!? いけぇ!」


 そう言いギルガスは全ての腕を俺目掛けて放つ。避け切れるかもしれないが、追い込まれたら終わりだな。だから俺は


「っ! 貴様、諦めたのか!」


 俺の行動にギルガスは怒り出す。戦闘狂の奴からしたら俺のしている事はおかしな事だからな。ギルガスが怒り出したのは俺がロウガをアイテムリングへしまったからだ。


 ギルガスの怒りに反応する様に腕たちは速度を上げ迫り来る。だけど、俺が諦めるわけ


「ないだろ!」


 俺が魔力を高めた瞬間俺の周りに雷が迸る。そして、迸る雷たちが様々な形へと変えていく。剣、槍、斧、棍、戦鎚、矛など様々な武器へと。これは俺が考えた技


雷帝の武器庫(グロムアームズ)


 俺が手をかざすと、俺の元へ作られた武器が飛んでくる。次々と降り注ぐ腕たちを、俺は様々な武器で迎え撃つ。


 両手に剣を持てば腕たちを切り裂き、槍を持てば突き刺す。斧を持てば腕たちを叩き割り、戦鎚を持てば叩き潰す。


 俺は荒れ狂う嵐の様に、迫り来る腕たちを破壊していく。当たりそうになるものは盾を作成し防御をし、まだ遠くにあるものは弓に矢をつがえ放ち撃ち落とす。


 俺自身使った事ある武器は槍と剣しかないため、かなりの付け焼き刃となっているが、腕を破壊するだけならこれでも十分だ。基本的な動きは体が覚えている。ただ無心に武器を振るう。まるで体の一部の様に。俺自身今は雷で、武器も雷で作っているのであながち間違いではないが。


 そして


「これで、全部だ!」


 俺は最後の腕を破壊する。全部で100近くあった腕は全て壊れ去った。その勢いのまま俺は走り出す。向かう先は、本気の技を潰されたにもかかわらず笑っているギルガスの元へ。


 ギルガスはトマホークを振りかざす。俺は両手に雷の剣を発現させ、8本のトマホークと打ち合う。避けては弾き返し、攻撃すればトマホークで防がれる。永遠に続く様な一瞬を感じる。打ち合った末に消える2本の剣と8本のトマホーク。


 俺は瞬時に雷の大槌を作る。まずは厄介な鎧だ。俺は大槌で鎧を叩きつける。ギルガスが腕で攻撃してくるが、全て大槌をぶつけ合う。……ぐぅ、なんで力だ。腕にビリビリと振動がくる。


 だけどギルガスの腕も魔法で付与された腕はひび割れていき、元々あった腕は鎧が剥がれ血が流れている。


「ぐうぅ、おおお!」


 それでも殴りかかってくるギルガス。俺は大槌を消して、1番得意な武器を作成する。作成するのはもちろん槍だ。片手に1本ずつ作成し2本の槍で迎え討つ。


 殴りかかってくる腕を避けては腕に槍を突き刺す。そして新たに槍を作成する。片方で防いでは、もう片方で突き、刺して手元から離れれば新たに作り出す。


 腕に刺さった後には消え去るためそこから出血やひび割れが広がっていく。ギルガスの力も弱まってきた。ここを押し通す! 腕を槍で払い、作られた腕は槍を突き刺し破壊する。迫り来る腕は避け、新たに突き立てる。そして


「これで終わりだ!」


 俺はギルガスの喉へと槍を突き刺す。ギルガスの動きは止まり、血を吐く。槍を抜くとそこからも血が流れる。しかしギルガスは笑いながら話しかけてくる。


「ガハッ! はぁ、はぁ、まさか負けるとは思わなかったぜ。この傷だと俺は死ぬだろう。だが俺たちは復活する。何時になるかはわからねえが、復活したらまたやろうぜ! ハッハッハ!」


 ギルガスの体は少しずつ灰へと変わっていき、そのまま消えていった。もうやりたくない……。俺はそんなことを思いながら後ろへ倒れる。あ〜怠い。


 ◇◇◇


 私はレイと魔族の戦っている姿を見ていることしか出来なかった。レイと一緒に戦うために修行したのに。何も出来なかった。ドラゴンも魔族も想像以上の強さだった。


「……、……シア、アレクシア!」


 私がそんな事を考えていたらキャロラインを抱えるエアリスに呼ばれる。


「……どうしたの?」


「どうしたの、じゃないわよ! レイが魔族に勝ったんだから行かないと!」


「……うん」


 私はレイに会わせる顔がない。師匠と一緒に修行をしてきたはずなのに、ここまで差が開くなんて。すると誰かに手を握られる。


「……エアリス?」


「握りすぎよ。血が出ているわよ」


 私は思いっきり手を握りしめていた様だ。手の平から血が流れている。私はヒールで治す。


「アレクシアの気持ちはわかるわよ。今の私たちじゃあ、レイを助けることも一緒に戦うことも許されない」


 私は顔を上げるとそこには悔しそうに顔を歪めるエアリスの姿だった。


「だけど、それでも私は諦めないわ。いつかレイと一緒に戦うために。横に並んで戦える様に私は頑張る」


 真剣な表情で私を見てくるエアリス。そうだ。こんな程度で諦めるわけにはいかないわ。私も助けられてばかりでなく、レイを助けたいのだもの。私の表情が変わったのがわかったのかエアリスは微笑む。フェリスも握りこぶしを作って頷く。


 師匠にお願いしてもっと強くなろう。レイの隣に並べるまで。レイとこれからを過ごしていくために。私たちは魔族に勝ったレイの元へと駆け出す。この時私たちの体が微かに光っているのには気付かなかった……。

技は某聖杯戦争を参考に(笑)


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