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73.参加

 竜種


 この大陸で存在する生き物の中でも上位に属する生物。


 竜種にもランクがあり、下級竜、上級竜、古竜、属性王、神竜と続く。


 下級竜はワイバーンやレッサードラゴンなど、知能は持たず、本能に動く竜たち。


 上級竜は知能は持っているが意思疎通が出来ない。その上、魔法を使う竜も存在する。昔ジークが倒して、家に飾られているのがこの上級竜だ。


 古竜は知能を持ち意思疎通が出来る竜たち。その上全ての古竜が魔法を使える。おとぎ話に出てくる様な勇者と一緒に戦っているのが、古竜と言われている。


 属性王は、各竜たちの頂点に立つ竜種になる。名前の通りその属性の頂点に立つ竜たちで、何百年と生きているらしい。こちらは古竜と違ってほとんど本にも載っていない。


 有名なのがシーリア王国にいる水竜だ。この水竜が水属性の竜たちの頂点である水竜王らしい。誰もあったことが無いためこれも憶測なのだが。


 属性王は意思疎通はもちろん、人化が出来るとか出来ないとか。これも確証が無いためわかっていない。この属性王と人族から生まれたのが、亜人族の竜人族と言われている。


 そしてほとんど空想上の生物だと言ってもいいのが神竜だ。全てが謎に包まれている。


 俺はぼんやりと、昔見た魔物図鑑の説明を思い出していた。


 教皇の話では、古竜1体で街など容易く滅せる程の力を持っているらしい。その代わり古竜はほとんど自分の住処から出てこない上、数自体がそんなに多く無いため、あまり問題視されていなかったが、この様に現れれば、大問題へと発展する。


 今首都に残っているのは教皇が率いる騎士団と、教皇にキャロ、そして俺とアレクシアにエアリス、フェリスだ。


 首都にいた住民たちは、首都から5キロほど離れた枢機卿領へと向かった。あの変態枢機卿では無く、クリスティーナ様の父親が治める領地らしい。


 みんなで集まって教皇の話を聞いた後、俺たちは直ぐに避難させられそうになった。理由は各国の来賓を巻き込むわけにはいかないからだ。


 教皇やキャロはどうするのか聞くと、宮殿に残るとの事。教皇は指揮官として、キャロは防御役として。魔族との戦争や、帝国との戦争の時はいつもそうしていたらしい。


 そして、別れ際に教皇とクリスティーナ様が力強く抱きしめ合っている姿がとても印象に残った。だから俺も


「キャロ」


「……レイ。ごめんなさいね。せっかくの訪問がこんな事になってしまって」


 そう言い、少し悲しそうな顔をするキャロ。キャロは全く関係無いのに。俺はそんなキャロの両手を取る。キャロは驚きで顔を上げるがそんなの気にしない。


「ナノール王がさ。そろそろアレクシアたちとの婚約を発表するって言ってたんだよ」


「レイ?」


「その時にアレクシアやフェリスの名前があるのに、キャロの名前が無いのは絶対に嫌だ」


「……」


 キャロは黙って俺を見てくれる。俺はそのまま教皇の方へと向き


「教皇台下。今回の戦い俺も参加します」


 俺がそう言うと、キャロが驚きの表情で俺を見る。


「だ、ダメよ! 相手は竜種の中でも最強に位置する古竜なのよ! それ相手に戦うだなんて!」


「でも、キャロは参加するんだろ?」


「それは当たり前よ! 私の生まれた国なんだから」


「なら、俺がその婚約者と婚約者の生まれた国の為に戦っても良いよな?」


 俺がそう言うと、キャロは口をパクパクとし唖然とした表情で見てくる。俺が無茶を言っていることはわかっている。だけどキャロが戦うのに俺だけ下がって見ているなんてことは出来ない。


 俺がキャロに向かってそう言うと、横から笑い声が聞こえる。その方を見ると教皇が大笑いしている。


「はははははは! 嬉しいこと言ってくれるね! キャロラインの為にそんなこと言ってくれるなんて、父親としては嬉しいよ。だけど、一国を治める者としては、そう簡単に良いとは言えないんだよ」


 教皇がそう言った瞬間、俺の周りに光の剣が出現する。全部で10本ほど。その光の剣全てが俺目掛けて降り注ぐ。


 キャロが驚きの声を上げるが、俺は両手に魔力を纏い、光の剣を全て弾く。この程度なら師匠に何度もされているからな。


「これで良いですか、教皇台下?」


「さすがはシルフィード殿に師事しているだけあるね。仕方ないね、これ以上いっても聞かないだろうし、レイ君ほどなら自分の身は守れるか」


 教皇は渋々といった感じで俺の参加を認めてくれた。だけど、その後にアレクシアとエアリス、フェリスまで参加すると言いだした時は驚いていたな。


 流石にアレクシアたちを参加させるわけにはいかない教皇は、なんとか止めようとしたが、みんな師匠に教えてもらっているだけあって、最終的に押し切ってしまった。


 責任は自分で取るという念書まで作って。教皇は天を仰いでいたけど、諦めてしまった。流石にこれは教皇に同情せざるを得なかった。


 そしてみんなが避難し終えて、夜になる。周りでは騎士団が慌ただしく走り回っている。俺たちは教皇の命令で、キャロの護衛という名目で参加する事になった。


「レイ。無理だけはしないでね。いざという時は私たちや騎士団を置いて逃げても良いから」


 周りを見ていたら、キャロがそんな事を言い出す。キャロを置いて逃げるわけ無いだろうが。おれは無言のまま、キャロの頭の上に手を置き、くしゃくしゃに撫でる。


 キャロは困ったような嬉しいような表情を浮かべている。アレクシアたちはそんな俺たちを微笑ましそうに見てくる。後でしてあげよう。


 そんな事を考えていたら、鐘の音が鳴り響く。これは……。


「キャロ」


「うん。来たみたい」


 初めて見るドラゴン。どんな感じなのだろうか。不謹慎にも少し楽しみになってきた。

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