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72.やっぱり一難去ってまた一難

 倉庫に入ってきたのは、龍の紋章を肩につけた鎧を着ている騎士たちだった。


 この世界の竜、ドラゴンは前世でいう西洋風のドラゴンになる。基本4足歩行のドラゴンのことだ。そしてこの騎士の鎧についている紋章は東洋の龍になる。。このような胴体が長い龍は存在しないので、空想上の生物になる。


 そして話しかけてきたのは、騎士たちの中でも豪華な鎧で着飾っている男だった。なんか神経質そうな顔でこちらを見てくる。なんていうか蛇みたいな感じだ。


「何の用かしら。セルパン騎士団長?」


 そんな事を考えていたら、キャロが男へ話しかける。この人が騎士団長だったのか。俺が騎士団長とやらを見ていたら、袖が引っ張られる。何だろうと思い引っ張られた方を見ると、プリシアさんが俺の陰に隠れる様にそばに寄っていた。少し震えている様だ。何かあったのか?


「おや、キャロライン様ではないですか。どうしてこの様な場所に?」


「別にいいでしょ、私がどこにいようが。それより何故あなたが来ているの? 青龍騎士団の団長が来る様な案件では無いはずよ?」


「偶々ですよ、偶々。それより犯罪者を捕まえてもよろしいでしょうか?」


「……わかったわ」


 キャロがそう言うと、セルパンとかいう騎士団長が指示をして騎士たちが入ってくる。そして倒れている男たちを捕らえていく。そんな風景を見ていると、ゾクッと背筋が震える様な視線が感じる。


 感じる視線の方を見るとそこには、セルパン騎士団長がじっと俺を見ていた。ゾクゾクッ! この視線どこかで味わったぞ!? しかも最近。思い出したく無い記憶を思い出して……昨日だ。あの男色家の枢機卿に見られた時と同じ視線を感じる……。


 そして俺が見過ぎたのか、セルパン騎士団長が物凄く見てきたのかわからないが、目が合ってしまった。そしてその瞬間、ニヤって微笑まれる。ゾクゾクゾクゾクッ! や、やばい! 完璧に狙われている! この国の上層部は男色家しかいないのか!?


 そんな事を思いながらも、俺は直様反対方向を見る。というよりフェリスやキャロの方を見る。ふぅ〜、危なかった。あのまま目を合わせていたらどうなった事やら。鳥肌が物凄いことになっている。


 それからは、目を合わせない様にしていたのだが、ずっと視線を感じるので何とか耐える。5分ほど耐えた時1人の騎士が捕縛完了の報告をする。や、やっと視線が外れた……。


「それでは失礼しますねキャロライン様」


「ええ」


 そして騎士団は立ち去っていった。騎士団長は最後に俺を見ながら。あの人にも絶対に近寄らない様にしなければ!


 そのあと倉庫を出た俺たちはアレクシアたちが待つ教会へと戻ってきた。シスターさんと再会できたプリシアさんたちは、泣きながらシスターさんへと抱きついていた。シスターさんも泣きながらプリシアさんたちを力一杯抱き締める。


 こういうのを見ると心が暖まるよな。無事が確かめられたシスターたちは俺たちの元へとやってくる。


「プリシアたちを助けていただき本当にありがとうございました。何とお礼をしたらいいか」


「いや、良いですよ。俺たちがやりたい様にやっただけですから」


 元々は俺が勝手に始めて、みんなを巻き込んでしまっただけなんだけど。


「それより、これからどうするのです? 今まで住んでいた教会はこの通り……」


 アレクシアが崩れた教会を見ながらそう言う。確かに今まで住んでいた教会は焼け崩れしまっている。これを片付けてまた建てるのに、何ヶ月もかかるだろう。


「それは、これから考えます。プリシアたちが無事だったのでそれだけで今は十分なので」


 そう言いながら微笑むシスターさん。そうは言うが、子供たちはにきついだろう。どうするか。俺たちに何かできることがあれば良いんだが。


「とりあえず宮殿へ行きましょ。シスターたちには事情を聞くという名目で来てもらいましょう」


 そう言い微笑むキャロ。一時的なものだが、その間に何か対策を考えれるか。シスターはキャロが聖女だと気付いていたのか、物凄く恐縮そうに頷く。子供たちはここからでも見える宮殿へ行けるとわかって大はしゃぎだ。


 俺は子供たちと手を繋ぎながら街を歩いていた。右手はメイちゃんで左手が子供たちが入れ替わりで繋いでいく。メイちゃんは譲らないらしい。


 そしてメイちゃんの反対側の手を繋いでいるのはプリシアさんだ。メイちゃんが絶対にプリシアさんじゃ無いとダメと言うのでこうなった。


 アレクシアたちは微笑ましそうな目で俺たちを見てくる。しかし、そこにメイちゃんがとんでも無い事を言ってくる。


「ねえねえ、お兄ちゃん、プリシアお姉ちゃん!」


「ん、なぁに?」


 プリシアさんは返事をし俺はメイちゃんの方を向くと、メイちゃんは物凄く嬉しそうな顔で、


「こうしてると何だか親子みたいだね!」


 と言い出した。プリシアさんはその言葉に固まってしまい、機械が錆びた時のようにギギギと顔を上げる。そして俺を見ると、ボンッ! と音がする程に顔を真っ赤にしてしまった。


 周りの子供たちは面白いと思ったのか、「ママ〜」「パパ〜」と周りを囲んでくる。止めさせたいところだが、孤児の子供たちは親が恋しいのだろうと思うと言い辛い。


 シスターさんはウフフと笑って見ているだけだし、アレクシアたちは「レイとの子供かぁ〜」と妄想にふけっている。ま、まだお父さんになるのは早いかなぁ〜。


 そんな事を思いながら宮殿へ着くと、宮殿が何だか騒がしい。一体なんだろうか。すると中から赤い鎧で肩に鳥の紋章がある騎士団と、白い鎧で肩に虎の紋章がある騎士団が隊列を組みながら出て行く。


「あれは朱雀騎士団と白虎騎士団じゃない。隊列を組んで何かあったのかしら」


 キャロも不思議そうに呟く。俺たちはシスターさんたちを近くにいた侍女にお願いして教皇のところへ行くことにした。俺だけなら普通は無理だろうが、キャロにアレクシアとフェリスもいる。多分会えるだろう。


 そして教皇との謁見をお願いすると、すぐに許可が出た。但し集まるところは朝も使った食堂だった。みんなで食堂に入ると、中には既に戻っていたダグリスたちと、クリスティーナ様とクリフォード君が座っていた。そして、同じ様なタイミングで教皇も入ってくる。


「キャロもレイ君たちも戻ってきたか。みんな座って」


 俺たちは教皇に促されたので座る。昨日の様な優しい雰囲気は無く、ピリピリとした感じだ。そしてみんなが座ったのを確認すると教皇は話し出す。


「時間が無いから、まず起こった事を話すけど、魔国テンペストとの国境の砦が壊滅した。昨日の事だ。やったのは古竜と思われるドラゴンが一頭だと聞く。そのドラゴンが真っ直ぐここに向かっているため、騎士団に出兵して貰った。以上だよ」


 教皇が話し出した内容に俺たちは驚きに固まってしまった。

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