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71.一難去ってまた一難?

 俺はプリシアさんたちを庇う様に立つ。男たちはさっきのを見ていたので突っ込んでくる様なことはしなくなったが、剣や斧を手に取って、俺たちを囲う様に立とうとする。


「フェリス、キャロ。プリシアさんたちを連れて入り口まで行くんだ」


 囲まれたら面倒だからな。俺の意図に気付いてくれたのか2人は頷いてみんなを連れて下がってくれる。


「おいおい、俺たちの大切な商品を連れて行かれちゃあ困るな。そいつらは借金を返さねえといけねえんだぜ?」


 すると、リーダーの男がそんなことを言う。違法な利子をつけてよく言う。


「本来の金額なら返そう。シスターさんに聞いたらお金を借りたのは半年前。月々3万ずつ返していたらしいから18万は返却している。残りは12万と本来の利子の金額分払う。これで手を打とう」


 俺がそう言うと、リーダーの男は額に青筋を立てる。


「ふざけんじゃねえぞ、小僧! そいつらが借りたのは300万だ! 全額きっちり返してもらうぞ!」


「それは違法な利子を含めての金額だろう。そんなのはこの国では認めていないだろ? そうだろ、キャロ?」


「ええ、金貸しの利子は一定の額以上は違法だと決められているわ。そんな金額払う必要は無いわ。聖女の名の下に言うわ。あなたたちは違法な犯罪者よ」


 キャロがそう言うと男たちは驚いた表情を浮かべる。これはキャロが聖女って事に驚いているな。男たちの呟きに、聖女、障壁、仮面、って単語がちらほら聞こえこちらを見てくるからな。


「せ、聖女だと? くそっ、何でこんなところにいやがる」


「さあ、どうする? 本来の金額にするか、俺たちとやりあうか?」


 俺が男へ最後の確認をする。すると苦々しい顔をしているリーダーの男は1番してはいけない指示をしてしまった。


「て、てめえら! ガキどもを殺せ! 聖女もだ!」


 いくら何でも短絡過ぎるだろう。俺たちがここにいることはアレクシアたちが知っている。万が一、本当に万が一俺たちがここで死んで一時的に助かったとしても、国にはいられなくなるぞ。


 俺はそんなことを思うが、男たちはこれが最善の策と思ったのだろう。全員が迫ってくる。……全員で20人ほどか。こいつら程度ならロウガは必要無い。俺は拳を構える。


「死ねガキ!」


 真正面から男が剣を突いてくる。左手で剣を逸らし、そのまま左手で男の腹を殴る。それだけで男は飛んでいく。気配察知で後ろから斧が振り下ろされるのがわかる。俺はしゃがんでそれを避け、その男を蹴り飛ばす。


 それを見ただけで及び腰になる男たち。さっきまでの威勢は全く無くなっていた。


「て、てめえら! 何ビビってやがる! ささっと殺せ!」


「し、しかし兄貴。あいつ強過ぎて手も足も出なくて」


「く、くそぉ! てめえら下がってろ! 俺がやる!」


 そう言い、背負っていた斧を構えリーダーの男が出てくる。この男を黙らせば、大人しくなるか。


「死ねやぁ!」


 そう言いながら男は斧を横薙ぎに振ってくる。俺はそれを飛んで避け、男顔面を蹴り飛ばす。


「ぐへぇ!」


 吹き飛んでいく男を見ながら俺は右手に風魔法を付与する。そして男の元へと駆け出す。


「くっ、くそぉ! くそがきがぁ!」


 男は叫びながら立ち上がるが、もう遅い。俺は男の懐へと入り、風魔法を付与した右手で男を斧ごと殴りつける。


 男は斧で防げたのでニヤリと笑うが、次の瞬間、斧は砕け散り、俺の拳は止まることなく、男の腹へと突き進む。ミチミチと男の腹へとめり込む音がし、風魔法の衝撃は男の体を突き抜け、後ろの壁へとぶつかり、壁が砕け散る。


 男は殴られたその場で白目を剥きながら倒れ込む。死なない程度には加減はしたが、内臓の幾つかは潰れているかもしれない。骨はボロボロだろう。まあ、自業自得だ。


 リーダーの男が倒されたのを見た周りの手下たちは、もう敵わないとわかったのか逃げようとする。しかし、逃がすわけ無いだろ。


「ライトニングアロー」


 俺は逃げる手下たちに雷魔法を放つ。名前の通り雷の矢で、当たると普通に痛い。肩や背中に雷の矢が刺さった手下たちは、叫びながら気を失う。気を失ったのは刺さった後に起きる電撃のせいだ。


 周りを見て立っている男たちがいないのを確かめると、みんなの元へ向かう。……なぜかフェリスがドヤ顔で立っているのだが何故だ? 尻尾もブンブンと振っているし。


 俺がみんなの元へ辿り着くと、1人の男の子が俺の元へやってきて、


「にいちゃん! 俺を弟子にしてくれ!」


 と言い出す。……は? 俺はキャロとフェリスの方を見るが、キャロは苦笑いで、フェリスは物凄いドヤ顔だ。フェリスのドヤ顔はこれが原因か。私の婚約者すごいでしょ! って感じだ。


「いや、俺にはまだ弟子は早いかな。俺自身がまだ教えてもらっている身だし」


 「えぇ〜、そんなぁ!」


 そう言いながら俺の周りをピョンピョンと跳ねる男の子。そしてそれを見て何を思ったのか、他の子供たちも混ざり出す。それを見たフェリスが、何故かウズウズとしている。ま、混ざるなよ?


 そこに


「こ、こら! ロイくん、そんな無理言っちゃダメでしょ! みんなも止めなさい!」


 とプリシアさんが怒ってくれる。ロイくんと呼ばれた男の子や子供たちは、渋々といった感じだったが、止めてくれた。ついでにフェリスのウズウズも止まった。


「レイさん、助けてくださり本当にありがとうございます。本当に……」


 プリシアさんはお礼を言ってくれたのだが、そのまま泣き出してしまう。やっぱり怖かったのだろう。体が震えている。


 すると、それを見ていた子供たちがプリシアさんの背中を押す。急だったのでプリシアさんは驚きながら止まることができず、倒れこんでくる。目の前にいるのは当然、さっきまでお礼を言われていた俺な訳で


 ボフッ!


 なんとか支える。そしておずおずとプリシアさんは顔を上げ俺と目が合うと、一気に顔を真っ赤にして俯いてしまった。


 それを見た子供たちはヒューヒューと吹けない口笛を吹く。誰が教えたんだよそんなこと……。フェリスとキャロは呆れた顔で見てくるし。


「ま、まあ、無事だったから良かった」


 俺は誤魔化すようにプリシアさんへと話しかける。プリシアさんはまだ顔が赤いが顔を上げてくれて、微笑んでくれる。本当に良かった。


 そして、子供たちの怪我の有無も確かめて、ここを立ち去ろうとした時に、


「待ちたまえ、君たち」


 と入り口から騎士たちが入ってきた。肩には龍の紋章。一体なんだよ。

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