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69.誘拐

「ほら、レイ。次はあそこへ行きましょ」


「……ああ」


 俺は今キャロに連れられて街へ出ている。後ろでは物凄く睨んでくるアレクシア、フェリス、ヘレンさん、エアリスに、その睨まれている俺を見て嬉しそうに笑ってくるダグリスにケイト。呆れた表情を浮かべダグリスたちを見るレーネたちがいる。


 なぜこうなったかというと昨日の夕食の時になる。


 ◇◇◇


 キャロとの対面が終わり自分の部屋へと戻った俺は、夕食まで自由にしても良いとメリーさんに言われたので、みんなの元へ向かう事にした。メリーさんはキャロについていかないといけないのでそう言って行ってしまったが。


 俺は、隣のダグリスの部屋やケイトの部屋に行ったのだが、どこかへ行っているのかわからないがいなかったため、近くにいた侍女に聞くと2階のアレクシアの部屋に集まっているとのことなので、俺も向かうことにした。


 この国の滞在は一月ぐらいあるからな。どうするか相談でもしているのだろう。俺はそう思いながら侍女に案内されながら2階へと上がる。


「ここがアレクシア様の部屋でございます」


 そしてアレクシアの部屋に着いたので、ノックをしようと思ったのだが、中からダグリスたちの声が聞こえたので、みんなだからまあ良いかと思いノックをせずに扉を開けてしまった。そして開けて中を見るとそこには


「そこでレイは私を助けるために自分の右腕を犠牲にしてくれたの。何のためらいもなく思いっきり! でも、その後、敵が私を殺そうとした時には、痛みを我慢して助けてくれたわ!」


「そ、それなら私はオークジェネラルに殺されそうになったところを助けられたわ! もうダメだと思ったらオークジェネラルが吹き飛んで、私の目の前にはレイが立っていた時には、え? って思ったけど、レイの小さいけど大きな背中を見て、ああ助かったんだって思ったのよ」


 ……何をやっているんでしょうかあなたたちは?


 俺が部屋に入ったのも気付かずに、みんなに向かって一生懸命話すフェリスとエアリス。ダグリスたちはニヤニヤとしていて、アレクシアとヘレンさんはうんうんと頷いている。


 そして俺が入ってきたのをようやく気付いたのかエマが、みんなを止めようとするがもう遅いよ。


 みんなが俺の方へ向くと、ダグリスとケイトはニヤニヤしながら俺の元へやって来て、話をしていたフェリスとエアリスは気まずそうに顔を逸らす。レーネたちは隠そうとしているがニヤニヤしているのがわかるぞ。アレクシアのヘレンさんは今だにうんうんと頷いている。


 そして俺の元へもやって来たダグリスとケイトはいつも通り俺の肩へ腕を回して、


「いやいや〜、レイ君もなかなかやりますなぁ〜」


「そうっスよ。そんな小さい時から暴れていたんっスねぇ〜」


 こいつら、ニヤニヤニヤニヤとうぜぇ。時折脇腹を小突いてくるのが更にうぜぇ。


「しかも、実家には結婚を約束した侍女がいるんだろう? 良いよなーモテる男は悩むところが違うんだから」


「本当っスよー」


 とニヤニヤするダグリスとケイト。こいつらしばいてやろうか? そんな思いが過るが、俺はぐっと我慢をしてみんなの元へと向かう。そして


「そういえば、ダグリスとケイトはお土産どうするんだ? ある女の子用に探すって言っていたよなぁ〜?」


 とみんなに聞こえるように言う。それに驚くダグリスとケイトに反応する女子2人。


「ちょっ! レイ! お前何て事を!」


「そ、そ、そうっスよ! みんなの前で!」


 この2人は旅行に行く話が出た時に相談されていたのだが、この国に来た目的の一つにプレゼントを買うというのがあったのだ。渡す相手はもちろんダグリスはレーネ。ケイトはエマなのだが。


 そして買うつもりなのがペアリングらしい。女神の加護付きペアリングというのがこの国では流行っているらしく、好きな相手に片方を渡してもう片方は自分が持っていると良いことが起きると、かなり曖昧な物なのだが、ナノールに聞こえるぐらい有名な物みたい。もちろん俺も買う予定だ。


 そんな事を考えていると、ダグリスとケイトは女子2人に責められていた。その2人はもちろんレーネとエマだ。レーネは「へぇ〜、そんな相手がいたんだぁ〜?」とダグリスに言い、エマは無言でケイトを見ている。


 ダグリスとケイトは物凄くあたふたしているのを周りのみんなは暖かい目で見ている。面白いのはここまで周りにラブラブなところを見せているのに、本人たちは互いに気付いて無いことだ。誰がどう見ても相思相愛なのに。


 そんな騒動もありながらも今後の予定を話し合っていたところに侍女がやってきた。どうやら夕食の用意ができたから食堂へ来て欲しいとのこと。もうそんな時間になってしまったのか。


 みんなで食堂へ移動すると、なんと教皇が既に座っているでは無いか。それどころかクリスティーナ様とキャロに知らない男の子も既に座っている。キャロは顔の上半分だけ隠す仮面を着けている。侍女には見られないようにか。


 俺たちが食堂へ入ると教皇が、


「やあ、よく来たね。さあ席に座ってくれ」


 俺たちは侍女に案内され席に着く。俺はキャロの隣に座り、男の子の隣にアレクシアが座る。俺の反対側にフェリスとなり後は順番に座って行く。


「みんな席に着いたかな。それでは歓迎会を始める前に自己紹介をしておこう。まず私はこの国の教皇になるギルフォード・アルカディアだ。よろしくね。

 そして知ってると思うけど妻のクリスティーナ。レイ君の隣に座るのが聖女で有名なキャロラインだ。仮面は事故で怪我をしてしまって隠しているんだ。だから気にしないで。

 そしてクリスティーナの隣が息子のクリフォードだ。キャロラインはレイ君たちと同い年で、クリフォードが3つ下になるんだ。よろしくね」


 慣れているアレクシアやフェリス、ヘレンさんにエアリスは普通だが、他のみんなは教皇に初めて会ったので少し緊張している。


 そんな調子で始まった歓迎会だが、いざ始まってみるといつも通りな感じになってしまった。教皇も身内だけだから気にせず騒いでくれと言うし、というか教皇が物凄く話しかけてくる。みんなに対して。まあ、そのおかげもあってダグリスたちは緊張せず済んでいるのだろうけど。


 ただ、聞くことが俺関係のことが多いのはやめて欲しい。嬉々として話そうとするダグリスとケイトを殴りたくなるから。


 そんな風に楽しみながらも歓迎会は進んでいき、もう直ぐで終わりというところで教皇が


「そういえばレイ君。明日の予定って決まっている?」


 と聞いてきたので、決まってないと答えると


「なら、明日のキャロラインとデートして来なよ」


 と言い出した。俺はキャロの方を向くと、キャロも乗り気な雰囲気だ。そして物凄い視線が来るのてそっちを見ると、クリスティーナ様が物凄い見ている。まるで「まさか、断らないわよね?」と言われているような。こうなったら俺の答えは1つしか無い。


「……わかりました」


 としか答えられないだろう。


「そう! なら良かった! 明日楽しみだねキャロライン」


「ええ、お父様」


 そんな会話をしながらも、歓迎会は終わってみんな自分の部屋に戻ったのだ。


 ◇◇◇


 そして今に至る。今は俺とキャロにアレクシア、フェリス、ヘレンさんにエアリスというメンバーで街を見ている。ダグリス、レーネ、エレア、ケイト、エマ、バードン、シズクのメンバーは別れて違うところを見に行っている。


 街は結構広いため、色々な店があり、見て回るだけでも楽しい。キャロも滅多に街には出ないらしいのでとても楽しそうだ。アレクシアたちの視線が偶に背中に突き刺さるが。今日は許してくれ。


 そんな風にぶらぶらとみんなで過ごしていると



「た、大変だ! 火事だ! 誰か水魔法を使える人はいないか!」


 と叫ぶ男性がいる。俺はみんなを見るとみんな頷いてくれる。そして男性の元へ向かい


「俺が使えます! その場所へ案内して下さい!」


「お、おお! 助かる! こっちだ!」


 そして男性に案内され連れてこられたのは、道の裏側にある教会だった。どっかで聞いたなと思いながらも俺と水魔法の使えるアレクシアは水魔法を使い消火していく。ただ勢いが強くてなかなか消えない。この事で呼ばれた騎士も来て、ようやく火が消えた。


 20分ぐらいかかってしまったため教会は全焼してしまったが、死人はいないらしい。それは不幸中の幸いか。俺もみんなの元へ戻りどうしようか考えていたら、騎士に怒鳴る女性がいた。修道服を着ているのでここのシスターなのだろうか。


「どうして助けに行ってくださらないのですか! どこにいるかもわかっているのに! それにこの火事はその人たちがつけたのですよ!」


「ええい、うるさい! そんなこと知らぬわ!」


 と騎士は女性を振り払う。女性は耐え切れず倒れ込む。周りには子供たちがいて女性の元へ集まるが。


「そ、そんな……。そ、それじゃあ、誘拐された子供たちは、プリシアたちはどうなるのですか!」


 ……あっ! 思い出した。昨日出会ったシスターの子だ。そういえば道の裏にある教会で生活していると言っていたな。じゃあ、ここがそうなのか。


「そんな証拠も無いことを言われても知らんもんは知らん!」


 そう言い去っていく騎士たち。それを見て泣き崩れる女性に子供たち。俺は騎士たちに憤りを感じながらも、女性の元へ向かう。


「私が行きましょう」


「え?」


 俺がそう言うと女性は顔を上げて俺を見る。


「プリシアさんは俺が助けに行きます。絶対に連れ戻してきますから。アレクシアこの人たちの治療をお願いしていいか?」


「ふふ、もちろんよ」


 女性は困惑した表情浮かべるが、もう縋るところが無いのだろう。誰に連れて行かれたか話し出してくれる。誘拐したのは金貸しの男たちだそうだ。あいつら昨日の事では懲りなかったな。もう許さないからな。プリシアさん無事でいてくれ。

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